今国会で"原発40年規制"の改正を議論せよ!

今回の法律改正には”原発40年規制”に関する見直しが全く抜け落ちている。

今国会では、原子炉等規制法の改正案が提出されている。だが、"原発40年規制"の改正は盛り込まれていない。

今月12日付け産経新聞社説でも、「運転開始から40年で原発を原則廃炉とする現行法のままでは2030年以降の電力安定供給が危うくなる。

パリ協定で日本が世界に約束した二酸化炭素の排出削減もおぼつかない。国会審議で40年運転制限を見直し、法改正に反映すべきである」などとして、この問題を指摘している。

法律改正の条文案は、原子力規制委員会のホームページ(http://www.nsr.go.jp/data/000177155.pdf)に掲載されている。

主な改正内容は、国際原子力機関(IAEA)による総合規制評価サービス(IRRS)報告において指摘された状況を踏まえ、「検査制度の見直し」と「放射性同位元素使用施設等の規制の見直し」を行うものとある。

しかし、今回の法律改正には"原発40年規制"に関する見直しが全く抜け落ちている。

私は数年前から、数多の拙稿でこの問題の解決に向けた提言をしてきた。

この"原発40年規制"は、2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の後、当時の民主党政権が突如打ち出したもの。

"40年"という数値には科学的根拠はない。政治的な空気の中で導入された不見識で悪しき規制の典型だ。

この規制は、米国の「40年ルール」を参考にしたものとされている。

しかし、米国では約100基の原子炉が稼働中で、このうち約8割は「60年」の運転期間が認められている。更に、幾つかの原子炉については「80年」までの運転延長が検討され始めている。

2012年6月に成立した原子力規制委員会設置法の附則には、「法律の施行後3年以内の見直し」が規定されていたが、この"原発40年規制"は見直されなかった。

多くのマスコミは、運転開始から40年を超えた原子力発電所を"老朽原発"と揶揄するような言い方をしているが、これは間違った表現だ。一部のマスコミが"古くて危ない"と思わるための雰囲気を作り上げたいだけではないのか。

どこの発電所も、長期運転に備えた高経年化対策として、大規模な設備の取替工事を行うとともに、原子炉圧力容器など取替えが難しい設備には詳細な調査を行うなど、原子力事業者は「60年」運転しても問題ないことを確認している。

震災後、日本原子力発電敦賀1号機、関西電力美浜1・2号機、中国電力島根1号機、九州電力玄海1号機、四国電力・伊方1号機の計6基が廃炉を決めた。

これらの廃炉を決めた理由は"高経年化"ではない。いずれも出力が低いため、新規制基準に適合させる大規模工事を行ったとしても、十分な経済性が発揮できないからだ。

他方で、出力が比較的大きい関西電力高浜1・2号機、関西電力美浜3号機の計3基が"原発40年規制"を通過し、「60年」までの運転延長が認められた。

この審査の過程で、人手が足りない原子力規制庁は、関西電力大飯3・4号機その他の再稼働申請の審査を後回しにするなど、新たな問題を発生させている。

加えて、これら"原発40年規制"を通過したこれらの発電所でも、新規制基準に関する許認可手続きや対策工事のために、今後も長期間停止することになる。

その停止期間も延長運転期間に算入されるので、残存運転可能期間が大幅に減少してしまう。

原子力事業者が安全対策やリフレッシュ工事を大規模に行えば行うほど、残存運転可能期間が短くなり、経済的優位性が低くなるという大きな矛盾を生じさせることになるわけだ。

そこで、"原発40年規制"の運用については、少なくとも次のような改善を行うべきである。

(1)現在の運用ルールは、延長認可の申請ができる時期を運転開始から40年になる時点の「1年3ヶ月前~1年前までの間」に限定しているが、この申請を数年以上前からでもできるようにすること。

(2)運転延長の審査中に認可を取得できないまま運転開始から40年を迎えた場合であっても、審査中は運転許可が失効しないものとすること。

(3)運転停止中は設備の劣化が進まないため、「20年」の延長を算出する起点を、運転延長認可などに係る工事が終了し、最初の運転を開始した時点とすること。

このうち(1)と(2)は、私が数年前から訴えてきたものであり、今回は(3)を含めて再度提案したい。

今年1月21日付け産経新聞社説によれば、原子力発電所の再稼働の遅れにより「火力発電の燃料輸入増による国富流出が累計15兆5千億円に上っている」とある。

これだけあれば、膨れ上がっている東京電力福島第一原発の事故処理費用21兆5千億円の半分以上を賄えたはずだ。

"原発40年規制"は政治的な空気の中で導入された以上、今国会の政治的な議論を通じてより良いものへと改正し、原子力平和利用を適切に進めるためのルールに昇華させていくべきだ。