アルバイト、派遣社員などを考える

私は非正規雇用者の雇用を禁止すべきだと考えている。つまり、社会人は「正社員」と「ニート」だけの世の中にするということだ。ニートについて思うのは、"平和バカ"だということで、己を愚かな人間だと思っていないはずだ。
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「サラリーバイト」

世の中にはこんな生活をしている人がいる。

意味は長期間、同じ企業でアルバイトをしていること。本意か不本意かは個人の判断に任せるとして、その企業で勤務する社員に「長いですね」なんて言われたら、「お前のほうが長いだろ!!」とツッコミたくなる心境ではないだろうか。

■非正規雇用者に人の命を預けるな

2006年7月31日、埼玉県ふじみ野市にある、ふじみ野市大井プールで、小学2年生の女子児童(当時7歳)が流水プールの吸水口に吸い込まれ、死亡する事故が発生した。

事故直後のニュースでは、吸水口のフタが外れているにもかかわらず、利用客の遊泳中止を案内しなかったことに、私は疑問と怒りを感じた。その後、監視員はなんとアルバイトであることを知った。人命を守らなければならない監視員にアルバイトを起用するのが理解できない。

プールの監視員のほかに、病院の医師や看護師、鉄道やバスの運転士などといった、"人の命を守る商売"というものは、常に1人前でなくてはならない。アルバイトというものは、年齢が低いほど、そういう意識がないのが明白で、夏休み期間中などは学生が"出稼ぎ"をする時期でもある。

プールの監視員は、人工呼吸といった応急処置ができ、元警察官や元警備員(現役でもよい)といったプロがやるべきことで、アルバイトの出る幕ではない。募集して雇うこと自体が間違っている。アルバイトの監視員はただ椅子に坐って、ボケーッと見ているだけで、炎天下に気がめいっていたと思う。そういう判断力のなさが事故につながってしまったのだ。

同年8月2日の讀賣新聞朝刊によると、アルバイトの男子高校生はプールのマニュアルをもらっていないことが判明した。プールの運営を委託されていた会社の体質は甘く、ズサンであることは明白だ。"人材を提供すれば、それでよし"というようでは、会社の信用問題にかかわる。

■2013年夏に多発した悪ふざけアルバイト

2013年夏、アルバイトで勤務している者が店内で悪ふざけ写真を撮影し、インターネット上で公開すると、店が特定されてしまった。店側は休業、閉店、廃業する事態となってしまう。当然、悪ふざけをしたアルバイトは、解雇するしかない。一部のお店では、損害賠償を検討する報道もあった。

この問題で明らかになったのは、ひとつだけある。悪ふざけをしたアルバイトは、"商品の重み"をわかっていないことで、「商品=お金」という意識がないことだ。商品というのは、どんなものでも不良品が許されない。いつも万全なものを消費者に提供するのが企業の「勤め」である(「努め」ではない)。

■増加する派遣社員

派遣社員は冷遇のひとことに尽きる。大半の仕事については交通費を支払わない、産休も認めない(アルバイトと同様で、長期間働けないため、派遣会社を辞めさせられる)。少子化が深刻な問題となっているなか、"産みたくても、産めない"というのが実情である。

近年、派遣社員の数が増えており、若者だけではなく、中高年の失業者、定年退職をした人など、様々な世代が「労働」を求めている。転職先を探しつつ、派遣社員で生活費を確保する人も少なくない。しかし、1日に働ける人数が限られているので、希望通りにいかない人も多く、サバイバルゲーム化している。

派遣企業の問題点は、おもに3つある。

(1)派遣企業及び派遣先企業によっては、残業を強制させることがある。普通、残業というのは、事前に可否を確認するもの。長時間に及ぶ場合は、30分程度の食事休憩が認められている。ところが派遣社員の世界は、確認しない、食事休憩も一切させない。本人の申告がない限り、終電ギリギリまで働かせる"ブラック企業"が存在する。

(2)「派遣社員をまったく信用していない」と言うかの如く、派遣社員に出発連絡などをさせる。

(3)勤務希望日でないにもかかわらず、人手不足を理由に電話やメールをして打診すること。派遣企業は取引先の顔色をうかがっているのが明白だ。

今後、派遣会社は"民間の職業安定所"として、取引先企業に正社員で雇ってもらうよう呼びかけるべきだ。

■契約社員は非正規雇用者に近い立場

契約社員は"将来、社員として雇用する"という約束をするような企業が多いように思えるが、いつまでたっても昇格させないところもある。これでは社会保険に加入している非正規雇用者と同じではないか。ほかに「正社員に昇格すると、給料が安くなった」という話も聞く。普通は逆ではないか。正社員は責任が重い分だけ、非正規雇用者や契約社員よりも給料が高いのだから。

■非正規雇用者対策をするのは、政府ではなく企業のほうだ

さて、アルバイトや派遣社員などといった非正規雇用者の数が増えていくと共に、未婚も増え、子供の数も減る傾向にある。政府は世に言う「フリーター」や「ニート」などを激減させる対策をして、同年4月に改正労働契約法が施行され、「非正規雇用者の勤続年数が5年を超えた場合、正社員としての勤務を認める」とした。

ところが政府は、その上限を「10年」に変更する方針だという。改正労働契約法が施行されても大きな効果はなかった、「非正規雇用=若者」と考えている政治家が多いことが考えられる。

非正規雇用者やニートの対策は、政府ではなく企業がやることだ。冒頭で述べた「サラリーバイト」は、とっくの昔に社員になってもおかしくないはずだ。しかし、学歴、職歴、ダブルワーク禁止などに左右されているようでは、いつまでたってもこの状態が続く。また、非正規雇用者によっては、社会保険に加入させているところがある(通常は国民保険)。これは"弊社の社員"であることを認めているようなものだ。今すぐ企業側は雇用の見直しを行なうべきだ。

今後は学生、別の仕事を本業にしている人なども正社員として雇用させ、本人の希望(就業日、就業時間、保険、年金など)を最大限尊重するべきだ。

■非正規雇用者のいない社会が理想

私は非正規雇用者の雇用を禁止すべきだと考えている。つまり、社会人は「正社員」と「ニート」だけの世の中にするということだ。

ニートについて思うのは、"平和バカ"だということで、己を愚かな人間だと思っていないはずだ。

私が言いたいのは、どんな人間でも常に明日はない。世の中には働きたくても、働けない人間、身体障害者でも社会に参加する意欲がある人だっているのだ。どんな人間でも、決して満足する生活を送っているわけではない。ニートは誇りではなく、自分や人に甘く、自分にうぬぼれているだけだ。

ニートは高度経済成長期が招いた副作用なのかもしれない。世の中が便利になり過ぎていることの表れと言える。ニートでない面々は、便利な道具などに甘んじることなく、自分に厳しく、他人にも厳しくあって欲しいと願っている。

★備考

・ハフィントンポスト「非正規雇用から正社員になる上限、5年から10年に延長へ」

・ハフィントンポスト「派遣法改正案で非正社員化が進むのか 『自民党はブラック』との声も【争点:雇用】」

・碓井真史の心理学でお散歩-心理学で、人の不思議と心の仕組みを考える。-「悪ふざけバイト店員はなぜ続出するのか?:若者の心理とネットコミュニケーションの罠」

・ブラック企業被害対策弁護団ホームページ