ノーベル賞を受賞するような社員を特別扱いするべきだろうか?

あるテクノロジー企業の経営者が、スター・プレーヤーを厚遇することをやめた理由。
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あるテクノロジー企業に訪問した際、経営者の方と「技術者の待遇」についてお話をさせていただいた。

その経営者は「ほとんどの技術者は、経営に興味がない」と言った。

そこで私は質問した。

「とすると、技術者から経営に関する意見はあがってこないのですか?」

「あがってこないわけじゃないです。でも、所詮は技術者なんて、会社のこと全体を考えているわけじゃないですよ。」

「社員の方は、自分の意見を聞いてくれない事を不満に思わないですか?」

「どうですかね。まあ大きな不満はないでしょう。彼らは技術のプロではあるが、経営のことはド素人だ。ごく稀に 「ちょっと意見があります」 と言ってくる社員はいるが、たいていは大したことじゃない。やれ、給料が安い、休みが少ないといった、どうでもいいことばかりだ。ほとんどの技術者は、今の待遇に満足している。」

その経営者は話し続ける。

「彼らに経営には口を出させない。そのかわり私は、現場の技術的なことには口を出さないですよ。自由にやらせます。私は経営のプロ、彼らは技術のプロ、それでいいじゃないですか。」

私は聞いてみた。

「給料が安い、と言ってくる社員にたいして、給料を高くすることはあるのですか?」

社長は即答した。

「嫌なら他所へ行け、でオシマイでしょ。ウチは業界の中でも給料は安いほうじゃない。それどころか、他社よりかなり高い方です。それで不満があるならば、もっと高い給料を出してくれるところに行けばいい。」

「技術者の引き抜きなどにあったことはありますか?」

「あるかもしれない。社員が辞めていく理由をいちいち聞いたりはしていない。そんなことを気にしていては、経営はできない。」

「スター・プレーヤ―のような社員が引きぬかれたら痛くないですか?」

「痛くない、と言えば強がりに聞こえるかもしれないが、本当に痛くない。経営者にとって、自己主張の強いスター・プレーヤーは邪魔だ。誰かを特別待遇にすることは、他の社員の不満を招く。」

「会社にとって、大きなメリットを生む発明をしたとしてもですか?」

「当たり前です。発明の多くの部分は、その人が有能だったからではなく運が良かったからです。人の能力というものは、言われているほど大きな差はない。

発明者に大きなインセンティブを与えたこともありましたが、他の技術者からは「なぜヤツを特別扱いするのか、あの発明のためにまわりの人も貢献している」と非難轟々でした。」

「そうだったんですか。」

「結局彼は会社をやめて、自分で会社を作りました。それ以来、私はスター・プレーヤーを厚遇することをやめました。特別待遇が欲しければ、自分で会社を作ればいい。私はそう思います。」


どの経営者にとってもスター・プレーヤーを抱えて上手く経営をするのはとてつもなく難しいチャレンジであることは間違いない。

日本企業はスター・プレーヤーを上手く扱うことができるようになるのだろうか。それとも、「スター・プレーヤーに頼らない経営」を極めていくのだろうか。

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