「生理」は恥ずかしいもの、隠さなくてはいけないもの、ではない。生理や生理用品について、もっと気兼ねなく話せる社会へ。ユニ・チャーム株式会社の生理用品ブランド「ソフィ」が推進する「#NoBagForMe」プロジェクトのイベントが12月7、8日に原宿で開催された。
8日のイベントでは、LiLiCoさんをゲストに迎えて、#NoBagForMeプロジェクトメンバーであるハヤカワ五味さんとのトークショーが繰り広げられた。スウェーデンで生まれ育ち、8歳から性教育を受けてきたLiLiCoさん。彼女の目から見た生理をめぐる日本のアンバランスな“常識”とは?
「日本の生理用品はアカデミー賞級」なのに...?
LiLiCoさん(以下、LiLiCo) 最初に「#NoBagForMe」のロゴを見たとき、「何だろう?」って思ったんですよ。なぜならスウェーデンは生理用品を紙袋に入れる文化がなかったから。みんな買ったらそのまま小脇に抱えて持って帰る。ジュースと生理用品だけ、とかね。袋も有料なので。
私は18歳のときに日本に来たのですが、驚いたのは日本の生理用品の優秀さ。これはもうアカデミー賞クラスですよ? ナプキンは主演女優賞ね(笑)。ズレない、漏れない、吸収力がすごい。タンポンのアプリケーターも、初めて見たときは「天才なの!?」と思いました。
でもそれと同じくらい驚いたのが、日本の社会では生理がまったくオープンにされていないこと。
ハヤカワ五味さん(以下、ハヤカワ) 紙袋に入れて見えなくする、という行為が象徴的ですよね。生理用品、コンドーム、育毛剤は、ドラッグストアで紙袋に入れられるのが普通。人に見られたくないものとされているから。
LiLiCo 世界的に見てもこんなに優れている生理用品が開発されているのに、買うところや存在は隠すものとされるでしょう。そうかと思えば、初潮が来たらお祝いに赤飯を炊く家庭もある。そこが日本のアンバランスなところ。「隠したいの出したいの、一体どっちなの?」って混乱しちゃう(笑)。
なぜこういう矛盾した現状になっているかというと、やっぱり遅れているからだと思うんですよ。日本は先進国だけど、生理やカラダに起こることを気兼ねなく話せるという視点では、人の意識が遅れている。
ハヤカワ 遅れているというのは、カルチャーや価値観という意味で?
LiLiCo そう。だって小学生のときから、初潮教育を受けるのは女子だけでしょう? 男子はその授業に入っちゃいけない。でも本来なら、みんながオープンな場で理解したり、話し合ったりすべきなんですよ。そしたら生理用品の存在だって、もっとオープンにできるはずでしょう? 女性同士がオープンに話すことができていれば、男だって「そうか」と受け止めることができるはずなんですよ。学校、家庭、職場、どこでもそう。
ハヤカワ 普段の生活で生理用品を見る機会がまったくない、という男性が大勢いますからね。#NoBagForMeを通じて、そのあたりの価値観を変えていきたいな、という思いがあります。
LiLiCo 英語を早く学ぶことも大事だけど、カラダについて知ることはもっと大事でしょう。
もちろん「生理は恥ずかしいもの」という印象を持ったまま、今もそう思っている大人の女性が日本にはまだたくさんいるでしょう。でも生理があるってことは子宮がちゃんと働いているっていうことだからね。だからこそ私たちは生まれてこられたし、子どもを産むことができる。そのことを女性も男性も、みんなで理解していかなきゃ。元号も令和になったんだし、急ピッチでやっていかないと!
選択の自由を増やしていきたい
ハヤカワ そういう社会の認識を変えていくために始めたのが、#NoBagForMeのプロジェクト。第一弾として着手したのが、タンポンのパッケージデザインの開発なんです。バッグからぽろっと出ても恥ずかしくない、化粧ポーチに入っていても違和感がないデザインを目指しました。
LiLiCo この猫のデザイン、すっごくおしゃれ。
ハヤカワ 生理用品だからこそシンプルでジェンダーレスなデザインにする、という選択にももちろん意味がある。でもタンポンという商品に限っていえば、若年層の利用率がとりわけ低いんですね。だからこそ、小中学生でも「かわいいから使ってみたい」と思ってくれるようなデザインに価値があるんじゃないかなって。ただ、そのあたりのバランスはすごく難しかったですね。
LiLiCo でもこのプロジェクトって、別にタンポンを推奨するためではないんですよね?
ハヤカワ はい。「生理ケアの選択肢を増やしたい」というのが目的であって、タンポンを推奨したいというわけでは決してないです。
例えば、プールや温泉旅行のタイミングで生理が来てしまった場合、「行かない」という選択をする女性もいるんですね。そういうときに、タンポンを使えば乗り切れる場面もきっとあるはず。
日本ではタンポンの使用率が低くて、一回も使ったことがないという人も少なくないんです。選択肢を増やすことでそういった価値観を変えていきたいし、生理について学校や会社でも気兼ねなく日常的に話せる環境を作っていけたら。
生理の知識、男女でシェアしていこう
LiLiCo スウェーデンでは8歳、小学2年生から男女一緒に性教育を受けるんですよ。男女がいわゆる正常位で性行為している写真が教科書に載っていて、赤ちゃんがどうやってできるかということもそこで学びます。
ハヤカワ イラストではなく、リアルな写真で?
LiLiCo そう。コンドームの使い方も学校で教わりますよ。先生が指にはめて「こう使うんだよ」って。生理についても床にぽとぽと血が落ちて、みたいな物語で説明されて、女子も男子も一緒に学ぶ。だから水泳の授業で休む女子がいても、男子がからかったりするようなことはまったくなかったですね。
家庭でも生理については自然なこととして家族で話していました。母親自身も教えてくれたし、母親と一緒にお風呂に入ったらわかることだってたくさんあるでしょ? 母と娘だけでコソコソやっちゃうと、なんていうかもったいない気がする。知識がシェアできないからね。
それに男性には「生理はみんな違う」ということを知ってほしい。恋人に「前の彼女は生理でも全然痛がらなかったよ?」とか言われると、「知らねぇよ」って腹立つでしょ(笑)。出血の量も期間も痛みの有無も、人によって全然違うからね。
ハヤカワ 私は「女性は生理が月1ある」ということを、「月に1日だけある」という意味で誤解している男性がいることを最近知りました。月に1回って、1日で終わるってことじゃないですからね。
そう考えるとやっぱり性教育が大事なんだな、と改めて思いますね。私のように大人になってから学ぼうとする人もいてもいいけど、これから大人になる世代が生理の知識をちゃんと学ぶことができれば、その層が段々と上にスライドしてマスになったときに、社会の価値観も今とは大きく変わっていくはずですから。
LiLiCo そういうムーブメントをつなげていくためにも、こんな風にオープンに話し合える環境をつくっていくこともすごく大事。#NoBagForMeの活動も、ユニ・チャームさんだけじゃなくて、社会全体が一緒になって進めていくといいと思う。そういうときに一番ダメなのは、よく使われがちな「検討します」っていう言葉。検討しなくてもいいことっていっぱいあるからね。
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生理用品を隠す紙袋から、生理や性教育のあれこれを考える#NoBagForMeプロジェクト。ユニ・チャーム株式会社(東京都港区)の生理用品ブランド「ソフィ」を通して、ひとりでも多くの女性が自分に合った生理ケアを知り、選択し、より自分らしく過ごすことができる社会の実現を目指した活動を行なっています。
カラダや生理のことを、気兼ねなく話せる社会に向け、プロジェクトは今後も走り続けます。公式noteアカウント、公式Twitterから配信される情報を、ぜひチェックしてみてください。
(取材・文:阿部花恵 編集:福原珠理)