PRESENTED BY 日本総合研究所

生活者参加による脱炭素社会の実現を目指して、いま企業が取り組むべきこととは?

生活者の約8割が「カーボンニュートラルに対応した商品を購入したい」という意向を持ちながらも、実際には商品購入に至っていないという実態が。そこで、生活者を巻き込んで、身近な生活の中で脱炭素行動を実現するために立ち上がった共創型コンソーシアムの参画企業に話を聞いてみる。
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■みんな知っている。でも身近な話題にならないSDGsと地球環境問題

 皆さんは「エシカル消費」という言葉を知っていますか?「エシカル」とは「倫理的」「道徳的」という意味があり、エシカル消費は「社会や地球環境にとって良い商品を選ぼう」という消費行動を指します。生活者自身が行動を変えることによって地球環境に貢献しようという考え方で、SDGs(持続可能な社会のための開発目標)の達成にとっても大きな役割を果たすものです。

しかし、日々の生活の中で社会や地球環境にとって良い行動を意識し実践している人は、残念ながらあまり多くないかもしれません。これは、日本全体に言える課題のひとつであり、日本では欧米などと比較して環境問題やSDGsについて「認知はされているが、話題にはならない」という傾向があります。例えば、米国イェール大学の調査によると、メディアやSNS、家族や友人との会話などで気候変動に関する話題に週1回以上触れる機会がある人は、ドイツで66%、米国で41%なのに対し、日本では21%。そもそも日本では気候変動が日常的な話題になっていない実態があります。

また、日本総合研究所の調査によると、Googleの検索トレンドでは「SDGs」という言葉について日本では関心が急速に縮小しているのがわかります。対して欧米では、日本と同じようにSDGsという言葉への関心は縮小していますが、それに代わり「ESG」という言葉への関心が急速に高まっています。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、企業がこれらに配慮した経営を行なっているかを評価する指標。日本の生活者の中ではほとんど話題になっていません。

そして、「カーボンニュートラル(脱炭素)」についても、日本では関心が縮小しているのに対して、世界的には新たに「グリーンウォッシュ」への関心が高まっています。グリーンウォッシュとは、環境配慮をミッションに掲げていながら実態が伴っていない企業を指す造語で、世界ではすでに「企業が環境配慮を適切に行なっているか生活者がチェックしよう」というステージに至っているのです。

このように検索トレンドひとつを見ても、日常的に環境問題の話題に触れる機会が少なく、メディアが取り上げた時にだけ環境問題に関心を持つもののすぐに冷めてしまう、そして世界的な環境問題への意識の高まりから遅れをとってしまっているという日本の課題があるのではないかと考えられます。

 ■「関心はある。でも何をすればいいかわからない」その課題を解決するために

では日本の生活者が脱炭素に無関心なのかというと、それは違います。もちろん、生活者は脱炭素社会の実現がみんなで取り組むべき重要な課題であることを知っています。生活者の脱炭素行動変容に向けてグリーン・マーケティングの活動を展開する日本総合研究所の佐々木努さんによると、「カーボンニュートラルに対応した商品を購入したい」という意向の生活者は76%、「カーボンニュートラルに取り組む企業を応援したい」という意向も49%にのぼるアンケート調査結果になっているというのです。生活者の関心は決して低くないことがわかります。

しかし一方、脱炭素に対応した商品がどこに売っているかわからないというのが現状もあるそうです。「カーボンニュートラルに対応した商品に出会ったことがない」という人は、75%にもなります。「関心はある。でも身近なところで脱炭素に触れる機会がない」というのが、日本の生活者の実情なのです。

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スギ薬局江戸川瑞江店

そこで、日本総合研究所では脱炭素をより身近に感じ、実践してもらう環境づくりを推進するため、「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(CCNC)」を立ち上げ、協創型実証実験「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」をスタートしました。このコンソーシアムには、Daigasエナジー、アサヒグループジャパン、アスエネ、サラヤ、三幸製菓、スギ薬局、日本ハム、万代、ユーグレナが参加。メーカーから小売店まで、サプライチェーンの各所を担う企業が参画することで、流通全体における脱炭素推進、そして生活者の脱炭素への参加を進めていきます。

また、“デザイン・表現の見地から世の中の行動変容を促していく”という考えのもと、大阪大学の松村真宏教授、京都精華大学の辻田幸広教授、京都芸術大学の石鍋大輔准教授、川向正明非常勤講師がCCNCのサポーターとして参画。そして、兵庫県神戸市との協定締結を皮切りに、自治体との連携も推進することで“自治体による啓発活動と民間企業の実践”という両輪での行動変容を推進していきます。

 ■脱炭素アクションの第一歩は、身近にあるお店の売り場から

そして実証実験の第1弾は、“身近にあるお店の売り場から変えていこう”という試みです。「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト~触れて、学んで、取り組んで!誰でもできる減CO2行動で脱炭素!」と題した実証実験では、ドラッグストア「スギ薬局」の3店舗(東京・名古屋・神戸)とスーパーマーケット「万代」の1店舗(大阪)に特設コーナーを設置。CCNCに参画するメーカーの脱炭素に対応した商品を陳列するほか、店舗での施策とクイズなどが楽しめるスマホアプリを通じて、脱炭素に「触れる」「学ぶ」「取り組む」という3つのステップを来店客に促していきます。

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スギホールディングス ESG推進課 杉山憲司さん

実施店舗のひとつであるドラッグストア「スギ薬局」を運営するスギホールディングス ESG推進課の杉山憲司さんによると、スギ薬局の温室効果ガス排出量の大部分は購入された商品のサプライチェーンによるものにあたり、これをどのように削減できるかが課題だったといいます。「小売店によるサプライチェーン排出量の削減は自社のプライベートブランド商品だけで解決できるものではなく、メーカーの協力は必須だ」と杉山さんは語ります。

そして杉山さんは今回の実証実験について、特設コーナーを脱炭素に取り組むメーカーと関心のある生活者をつなげる場と捉え、脱炭素に取り組む仲間を増やしながらサプライチェーン全体で脱炭素を実現したいと考えています。「環境に配慮した消費行動を浸透させていくことは、小売店の使命。今回の実証実験を通じて、商品と情報をセットにしたときに生活者の行動にどのような変化が生まれるのかを検証していきたい」(杉山さん)。

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ユーグレナ サステナビリティ推進部 髙橋宏明さん

一方、今回の実証実験に参加するメーカー企業も、この取り組みに大きな期待を寄せています。ユーグレナ サステナビリティ推進部の髙橋宏明さんは、「サステナビリティはユーグレナにとって企業活動の根幹。しかし、1社だけで世の中を変えるのは難しい」と課題を挙げた上で「今回の実証実験は、大きなインパクトを生み出すための一歩。この取り組みが新たな仕組みを作り仲間を増やすきっかけになれば」と語ります。今回の取り組みを通じて脱炭素をより身近に捉えてもらい“自分ごと化”することが、生活者が商品を選ぶ際の変化にもつながると髙橋さんは考えています。

また、サラヤ 取締役コンシューマー事業本部本部長の山田哲さんも、「持続可能な地球環境の実現は、サラヤだけの問題ではなく社会全体で考える必要がある。今回の取り組みを通じて1社だけでは届かないメッセージを生活者に届けたい」と、1社だけでは実現できない生活者への新たなアプローチに期待を寄せています。「生活者の環境配慮への意識は高いが、実際に店頭で環境に配慮した商品を選べていないという課題がある。商品に出会える場が生まれることで、生活者の意識が行動になっていくのではないか」(山田さん)。

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サラヤ 取締役コンシューマー事業本部本部長 山田哲さん

今回の実証実験を通じて、生活者の行動にどのような変化や特徴が見えてくるのか。脱炭素に取り組みたいという生活者の輪が生まれるきっかけとなるのか。また一方でどのような課題が生まれるのか。この実証実験を、生活者を巻き込んだ脱炭素の取り組み拡大のための大きな一歩にしたいと考えています。

 ■日本のCO2排出量の60%、生活者の意識変化・行動変容で減らしていく

日本では、排出される二酸化炭素のうち約6割が、衣食住を中心とする「ライフスタイル」に起因するとされています。つまりこれは、日常生活の中で環境に配慮した商品を選択することが、持続可能な地球環境の実現につながることを意味しており、生活者の行動変容こそが本質的な脱炭素の実現に不可欠なのです。

この点について、スギ薬局の杉山さんは「生活者がすぐにできることは、“日常の買い物から変えていく”こと」と提言。店舗での様々な施策を通じて「買い物での意識変化が環境負荷の軽減につながる」というメッセージを発信していきたいとしています。またユーグレナの髙橋さんは今回の取り組みをきっかけに「本質的に環境配慮に取り組んだ商品が売れる社会を目指したい」と意気込みを語ったほか、サラヤの山田さんも「脱炭素の目標である2050年に購買層になる青少年にも環境配慮への意識づけができれば」と未来の世代をも見据えたビジョンを示しています。

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スギ薬局須磨北店

ついに始まる「みんなで減CO2(ゲンコツ)プロジェクト」。脱炭素に取り組む様々な企業がタッグを組むことで、世の中にどのような変化が生み出せるのか、今後の展開にぜひご期待ください。