「金融相場の宴」がたけなわだ。リスクオンの材料が特段出なかったにもかかわらず、欧米株高に円安も加わり、日経平均は約5年4カ月ぶりに1万5000円の大台に乗せた。
世界的な金融緩和によって膨張したグローバルマネーの流入が止まらないという。一方、日米金利が急上昇するなど資金流出の動きも激しい。足取りの重い世界経済を横目に、マネーの移動スピードは一段と速くなっている。
<材料なき世界株高>
海外市場で特にリスクオンの材料が出たわけではない。予想を上回る欧州企業の決算発表などはあったが、マクロ指標では5月の独ZEW景気期待指数が市場予想を下回るなどネガティブ材料も目立った。しかし、マーケットはリスク選好の度合いを高め、欧州の主要株価指数の終値は5年ぶりの高値を更新。米ダウ
世界的な株高加速の原動力は、金融緩和によって生み出された過剰流動性だ。景気回復が鈍いことはネガティブ要因でもあるが、金融緩和環境がしばらく継続するという安心感にもつながる。物価が落ち着いていることも緩和継続予想を補強しており、グローバルマネーの勢いを加速させている。
特に日本株には海外投資家のマネー流入がけん著だ。前日は米系証券の先物買いが話題になっていたが、15日前場の市場でも海外勢が好む主力大型株が相場をけん引。円安の後押しもあって、トヨタ自動車
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチが14日発表した5月のファンドマネジャー調査では、中国の景気見通しへの不安から、株式全体のオーバーウエート比率はネットで41%と、4月の47%から低下した一方、日本株への配分は7カ月連続で増加。ネットで31%のオーバーウエートと、7年ぶりの高水準となった。
「日本株は上昇率が高く、組み入れなければパフォーマンス競争で負けてしまうため、ゴールデンウィーク明けから再び海外勢の買いが強まっている」と三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏は指摘する。過熱感は日増しに強くなっているが、日経225オプション市場では1万6000円のコールに大口買いが断続的に入るなど、一段の株価上昇を視野に入れた取引も増え始めている。
<マネーの「暴走」に警戒も>
ただ、この流動性相場も金融緩和の「総本山」たる米FRB(連邦準備理事会)が金融緩和策の転換、いわゆる「出口」を本格的に視野に入れ始めたと市場が感じれば、ムードが変わる可能性がある。米経済は給与税減税の廃止など緊縮財政の影響が出ているが、一方で株価や不動産の価格上昇で資産効果が出始めている。「出口」はまだ見えないまでも少しずつ近づいているのは確かだ。
FRBが「出口」に向かう時は失業率が低下し、米経済の足腰も強固になっていると予想されるため、マーケットが一気にリスクオフに向かう可能性は大きいわけではない。ただ、グローバルマネーが野放図に膨張し、それが縮小することになれば、一時的な混乱が生じる可能性もある。米FRBのバランスシートは約3.5兆ドル(約350兆円)とリーマンショック前の3倍以上に増加しており、生み出された過剰流動性も大きく膨らんでいる。
みずほ証券シニアマーケットアナリストの青山昌氏は「為替市場のテーマは、これまでは日銀の金融緩和だったが、最近は米国の金融引き締め・景気動向に移ってきている」と指摘する。FXプライム取締役の上田眞理人氏は「ドル高相場が定着するか否かは、米国の景気回復の盤石性、特に雇用情勢にかかっている」と話す。
このまま世界経済が回復するかはまだ不透明感が強く、金融緩和環境を背景とした「金融相場」はしばらく続く可能性もある。しかし逆に言えば、金融緩和緩和が続くのは世界経済が弱いからだ。グローバルマネーが暴走し、ファンダメンタルズを超えてまで株価を押し上げれば、その後の反動は大きくなる。
[東京 15日 ロイター] (ロイターニュース 伊賀大記;編集 宮崎亜巳)