「昭和」で“元号消滅”の危機もあった? 現憲法で制度は一時廃止、それでも元号が続いた理由とは

元号存続に一役買ったのが、日本会議だった
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4月1日、新しい元号が公表される。

元号は、明治から大正、昭和、平成、そして新元号と、歴代天皇とともに脈々と受け継がれてきた。

公文書などの年号表記に使われているが、今では西暦の使用が浸透しており、元号も天皇と同様に象徴的な存在になりつつある。

過去には元号制度が廃止され、慣習として存続した時期や、「昭和」で元号が打ち切られる可能性もあった。

元号存続に一役買ったのが、日本最大の保守系団体と言われる日本会議だった。 

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日本会議と日本会議国会議員懇談会の設立20周年記念大会で気勢を上げる参加者=2017年11月27日、東京都港区のホテル
時事通信社

「昭和25年」で元号が終わりかけた

元号はもともと、天皇の即位だけでなく、めでたいことや災害などの不吉なことがある度に改められていた。(朝日新聞:1976年6月22日夕刊)

現在のように、天皇が代替わりする時だけ改元するようになったのは、明治時代からだ。ひとりの天皇でひとつの元号とする「一世一元」が法制度化され、元号は天皇統治の象徴となった。(朝日新聞:2018年7月30日朝刊)

第2次世界大戦後、現在の新憲法の施行にともなって、旧元号制度は廃止。元号はどこにも明文化されず、法的根拠を失った。

だが、当時の元号「昭和」は広く浸透していたため、政府は「事実たる慣習」として、元号を存続させた。(週刊アエラ:1989年1月20日) 

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在位50年のご感想を語られる天皇陛下(東京・皇居・吹上御苑林鳥亭前)1976年11月6日
時事通信社

 一方で、廃止論も上がった。

1950年の参議院文部委員会で元号廃止が正式に検討され、「昭和」の元号は「昭和25年」で打ち切られる可能性があった。「昭和26年1月1日」はなく、その日から西暦に変え「1951年1月1日」とする。そんな法案がまとめられた。

ところが、この「元号廃止法案」は、別の法案成立を優先したため国会に提出されず、元号廃止法制定の動きはたち消えた。

しかしその後、「慣習としての元号」は別の問題に直面する。「昭和」が終わった後、元号がどうなるのかということだ。

1975年3月18日の衆院内閣委員会で、内閣法制局は「陛下に万一のことがあれば、昭和という元号がその瞬間に消え、空白の時代が始まる」と答弁。元号は法的根拠がないために、天皇崩御で消滅するという見解を示していた。

また保守派の中には、元号が存続できなくなれば、天皇制自体を揺るがす動きも出てくるという危機感が広がっていた。(週刊アエラ:1989年1月20日)

このような事情などから元号法制化の動きが加速し、皇室との結びつきなどを重視する人たちが1978年、「元号法制化実現国民会議」を結成。全国的な運動を展開し、1979年の元号法の成立を後押しした。

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元号法制化を求め、全国から各界代表が参加した元号法制化実現総決起国民大会(東京・千代田区の日本武道館)1978年10月3日
時事通信社

この「元号法制化実現国民会議」は、「日本を守る国民会議」に姿を変え、「日本を守る会」と合流して後に日本会議を結成する。(朝日新聞:2016年12月7日夕刊)

元号法で、1人の天皇でひとつの元号とする「一世一元」が復活し、旧制度では天皇が行っていた元号の選定は、内閣が政令で定めると明記した。

元号法の下、「昭和」の元号は廃止や“消滅の危機”を免れ、天皇崩御にともなって「平成」に改元された。そして今度は、生前退位という形で、新しい元号へと移ろうとしている。

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新年の一般参賀で手を振られる天皇陛下と皇太子さま=2019年1月2日、皇居
時事通信社

 日本会議、政府の事前公表に「遺憾の意」

元号の存続・法制化に大きな影響を与えてきた日本会議。国会議員懇談会には多数の議員が所属し、安倍政権の強力な支持基盤とされている

だが新元号をめぐっては、政府の方針に異論を唱えている。日本会議国会議員懇談会は、「新天皇即位時に公表されることが原則だ」として、事前公表に反対し、5月1日の公表と新天皇による公布を求めていた

一方安倍晋三首相は、5月1日当日の新元号公表は混乱を招くとして、国民生活への配慮から事前公表を方針を決定。4月1日に前倒しすることを決めた。

これに対して、日本会議は機関紙「日本の息吹」の2019年2月号に、4月1日公表とした政府の方針に対して「遺憾の意を表明する」見解を掲載した。

皇位継承前の元号決定・公表は、「歴史上なかったことであり、今回の元号制定方式が、将来の先例にならぬよう求める」と要望していた。