ナイジェリア「女子高生拉致事件」の行方 4ヶ月で幕引き?

事件は発生直後から奇妙な点が見受けられましたが、州知事が裏で糸を引いているのではないかと政府が疑っていると新聞でも示唆されるようになりました。
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ナイジェリアのイスラム過激派ボコ・ハラムによる女子高生の拉致事件は、アメリカ軍の捜索でも進展がなく、パキスタンの少女マララさんがナイジェリアを訪れて大統領に解決を訴えたり、世界的にまだ注目される中、日本政府は地元のコミュニティーに心理的・物理的なケアを支援するため、8300万円の無償援助を行いました。

その半月後、事件が未解決なまま、ナイジェリア政府はボコ・ハラムによって悪化した国のイメージを改善するため、米国のPR会社と120万ドルで契約したのです。

事件は発生直後から奇妙な点が見受けられましたが、州知事が裏で糸を引いているのではないかと政府が疑っていると新聞でも示唆されるようになりました(Vanguard紙)。脱走してきた「生徒」についてもボコ・ハラムが隠れている森から130キロも徒歩で、誰にも見られずに州知事のオフィスに到着したとは奇妙だという指摘もあります(SaharaReporters)。

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ボコ・ハラムが公開したビデオで携帯をいじる「被害者」(ニュースサイトHope for Nigeriaより)

寄宿舎から夜中に拉致されたはずなのに、なぜ携帯を持っているのでしょうか。

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「脱走してきた被害者」(http://africanspotlight.comより)

身代金目的に誘拐された事件では被害者が解放後も引きつった顔をしていましたが、この屈託のない顔はどうでしょう。本当に戦士の妻にされたり、一日に何度もレイプされた被害者なのでしょうか。

かねて、ボコ・ハラムのスポンサーとして元軍人大統領や上院議員に加え、イスラム圏の州政府が出資していると何度か報じられてきましたが、スポンサーだとして逮捕された上院議員の捜査では、ドイツ車のゴルフを400台購入して自爆テロに提供したとされています。確かに、首都アブジャなどの自爆テロでは犯人がフォルクスワーゲンのゴルフで突入したとありました。資金力のある政治家がバックにいるのです。

さらに、拉致事件のあったボルノ州の知事は、ボコ・ハラムに依頼して政敵を暗殺してきたと拘留中のボコ・ハラムのメンバーが自白したということです。

ちなみに、同州の副知事は10年以上前に夫が渡した通関費用を持ち逃げした通関士で、逮捕・釈放後、税関と共謀して10億円ほどの資金を作り、「知事になる」と言っていた男です。こういった人物が政治家になれる国なのです。

海外ではボコ・ハラムが貧しい若者による組織であり、大量拉致事件が実際に起きたことを前提に報道されていますが、州知事がボコ・ハラムのスポンサーだとすると、そもそも大量の女子高生は存在しないのではないかという疑惑がまた強まります。米軍の特殊部隊がいくら探しても居場所が見つからないはずです。

旧宗主国イギリスでは、ナイジェリアのイスラム政党(APC)とボコ・ハラムのつながりが議会の質疑に出て、やはり背後関係を疑っていることが伺えます。そのAPCの政治家は、女子高生が見つからなければ大統領(クリスチャン)は来年の選挙に出るななどと、駆け引きに使っていました。

ところが、8月下旬にイギリスが女子高生の捜索に戦闘機3機を送ることが明らかになった2日後、被害家族が「拉致から4ヶ月以上経ち、娘たちは死んだものとして心の中で葬式をした。この件は終わりにしたい」と述べたというのです

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当初、「娘たちを助けて」と政府にアピールしていた人達(BellaNaija.comより)

ナイジェリアで女性が産む子供の数は平均7人以上だそうですが、十数年育て、ちゃんと学校へも行かせていた親にしては諦めるのが早すぎないでしょうか。

これ以上事件を引き延ばしても自らの立場が苦しくなると悟ったイスラム系の政治家らが落とし所を探っているように見えてしまうのです。