黒人への人種差別や警察の暴力に対する抗議活動が続くアメリカではプロバスケットボール選手や野球選手、テニス選手など多くのスポーツ選手たちも声をあげている。
9月10日に開幕したアメリカのプロアメリカンフットボールリーグ・NFLのカンザスシティ・チーフスとヒューストン・テキサンズの試合でも、選手たちが団結して人種差別に抗議した。
この日チーフスの本拠地カンザスシティで開かれた開幕戦では、両チームの選手たちが試合前に腕を組んで団結を示す、「モーメント・オブ・ユニティ(団結の瞬間)」が行われた。
しかしそれに対して、観客席からブーイングが起きた。
選手たちが腕を組んでいる間、スコアボードには「平等を支持する」「人種差別を必ず終わらせなければいけない」「全ての人のための正義を信じる」「警察の暴力を必ず終わらせる」「無条件の愛を選ぶ」「Black lives matterを信じる」「皆でやる」といった団結を示す7つのメッセージが掲げられていた。
チームの垣根を超えて選手たちが見せた団結に対して浴びせられたブーイング。SNSでは、多くの人たちがブーイングを非難し選手たちを支持した。
「片膝をつくな、腕を組むな、お互いを愛するな、兄弟を大切にするな、国を大切にするな、弱い人のために声をあげるな、正義や正しいことを追い求めるな、ただプレーしろというのか。なんて悲しいんだ」
「こんなこと言いたくないけれど、チーフスのファンは、恥ずかしく思うべきだ。一体どうしたらパトリック・マホームズを応援しながら、彼とチームにブーイングができるのか。彼らがヒューストン・テキサンズと美しい団結を示し、人種差別や社会の不正義と闘っているのに。彼はあなたたちを楽しませるために生きているわけじゃない!」
「“団結を見せる”時にブーイングした人がいることこそ、そもそもなぜ選手たちが団結しないといけないと強く感じているのかを示す良い例だ」
「我がふるさとは、愛や団結がないのか?彼らは団結にブーイングしているのか?」
「団結にブーイングしているの?一体なぜ団結にブーイングなどできるのだろう?」
カンザスシティのクイントン・ルーカス市長も、「ブーイングを耳にした」としつつ「カンザスシティは良い街であり、多く人たちは選手を支持し、社会を良くしようとしている」と多くの市民が選手を支持しているとツイートで綴った。
モーメント・オブ・ユニティの前には、アメリカ国家と黒人の国歌と言われている「Lift Every Voice and Sing」が演奏され、そこでも抗議の意思表示が行われた。
スポーツ・イラストレイテッドによると、両曲の演奏中、テキサンズの選手はロッカールームにとどまった。そしてフィールドにいたチーフスの選手の多くは腕を組み、ラインバッカーのアレックス・オカファー選手はひざまずいた。
テキサンズの選手たちがロッカーに止まった理由を、同チームのフットボールオペレーション、エグゼクティブ・バイス・プレジデントのジャック・イースターリー氏は「変化を求めるためだ」とはNBCに語っている。
NFLでは、サンフランシスコ49ersの選手だったコリン・キャパニック氏が2016年に人種差別と黒人に対する警察官の暴力に抗議を示すために、国歌演奏中にひざまずいた。
キャパニック氏に続く選手もいたがNFLは抗議活動を支持せず、2018年には国歌斉唱の際にひざまずくことを禁止。違反した場合には処罰を課すとした。