中国産のアニメ映画が空前のヒットを記録している。
その映画は「哪吒之魔童降世(なたのまどうこうせい)」。公開5日目に興行収入10億元(160億円余り)を突破するなど、「大ヒット」と報じられた「千と千尋の神隠し」をはるかに上回る勢いだ。
■封神演義でお馴染み
「哪吒(なた)」は中国の神話に登場する人物。「西遊記」や「封神演義」などの古典文学作品にも登場し、作品によってはハスの花の化身などとされる。
日本では、1996年から週刊少年ジャンプに連載された藤崎竜さんの漫画「封神演義」に登場し、寡黙で好戦的なキャラクターとして描かれた(作品内では「なたく」と読み仮名をふられている)。
今回中国で公開された映画は、悪ガキとして知られる哪吒が、ヒーローとして成長していく物語。60あまりの制作会社から1600人を動員して制作にあたり、「中国産」の本格アニメーション映画として注目を集めていた。
■「千と千尋」を悠々と超える
「哪吒」が公開されたのは7月26日。5日目の30日には、興行収入が10億元を突破したと公式ウェイボーが発表した。
中国ではスタジオジブリの「千と千尋の神隠し」が2019年に正式に上映された。上映前から現地のネットでトレンドランキング入りするなど話題を呼び、「大ヒット」と報じられたが、興行収入は2週間で4億元(約70億円)。「哪吒」は5日で倍以上の数字を叩き出したのだから、それを遥かに上回るペースだ。
上海のメディアは「ディズニーやピクサーをも打ち破り、中国国内でもっとも売れたアニメ映画になるのは時間の問題だ」としている。
■国産アニメ映画への期待
なぜ「哪吒」にここまで人気が出たのか。現地メディアには、ストーリーや演出を絶賛する記事もある。
一方で、中国の映画評価サイト「豆瓣(どうばん)」に寄せられたコメントからは、中国産アニメへの質の向上に言及するコメントが多い。
中国には国内で制作されたアニメもあるが、日本のアニメやディズニー映画など海外作品の存在感も大きい。映画でも、国内産業を保護するために海外映画の上映に制限をかけてきた。
こうした状況で登場した「哪吒」は、アニメや映画ファンを満足させるクオリティだったようだ。
「これこそ正真正銘の中国アニメ映画の希望だ」「国産アニメの進化を象徴している」「“中国産”の描写がこのレベルに達しているとは思わなかった」などと技術面の進歩を喜ぶ声が多く寄せられている。