初の大学共通テスト。世界史Bに歴史記録の改ざんをテーマにした小説「1984年」が登場。

センター試験から大学共通テストに変わった2021年。世界史Bでは、文書改ざんや歴史改ざん、パンデミックも扱われ、歴史の大局を見据える構成になっていた。
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大学入学共通テストの世界史B
Miyuki Inoue / HuffPost Japan

初めての大学入学共通テストが1月16日にあり、どのような試験内容になるのか注目された。世界史Bでは、複数の設問にわたって、歴史を知るためには資料が重要であること、そしてその資料が組織的に改ざんされてきた過去があることを強く示唆する内容だった。

歴史修正などを題材とした小説「1984年」が登場。18世紀に中国が行った大規模な図書の改ざんが歴史に影響を与えたことについての説明文も示された。

 
第1問は、歴史上の出来事との関係をテーマとした問題だった。冒頭は、「歴史研究には様々な資料を用いるが、資料もまた歴史の中で生み出されたものであり、それ自身が研究の対象である」と、歴史を学ぶにあたっての資料の価値について述べる文章から始まる。第1問Aで「史記」、第1問Bで歴史家マルク=ブロックの著書が引用された。

Aでは、司馬遷個人が記した書物の「史記」と国家が作る「正史」との関係が語られた。また、マルク=ブロックの著書「歴史のための弁明」では、「資料がより良い状態で、まとまって長く保管されている」ことが最善とし、公文書保管所に保存されるメリットに言及したり、体制が意図的に破壊する危惧にも触れたりした。

第3問Cでは、ジョージ=オーウェルの小説「1984年」が引用され、主人公が「歴史記録を改ざんする仕事」をするあらすじが紹介され、「歴史資料の改ざんは実際に行われたのか」との生徒役の質問が続く。さらに、18世紀の中国で、大規模な図書資料の改ざんが組織的に行われたことも書かれている。

設問には「改ざん前の文章」「改ざん後の文章」が示され、改ざんを強く意識するものだった。

「歴史記録の改ざん」について、歴史上の事実や、組織がなぜ改ざんしようとするのかが汲み取れる内容だ。現代社会でも問題になっている組織的文書改ざんの意図まで思いが到る。

続く第4問は、国家と官僚が残した文章がテーマにされた。

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大学入学共通テストの世界史Bで出題されたジョージ=オーウェルの「1984年」
大学入学共通テストより参照

SNSでは「意味深だ」「文書の保存・改ざんといったテーマが複数の大問に渡って散見され面白い」といった声が見られる。

世界の歴史の流れを理解することを目的とされる世界史B。世界史を受け付ける大学では、多くがBを試験教科にしており、Bを選択する学生は多い。

歴史学を俯瞰し、現代から歴史の大局を見据える構成になっていた今回の試験。河合塾は、「資料を多く読む必要があり、形式が複雑であることから、難度はやや上がった」。東進ハイスクールは、「資料を読解しつつ世界史的な知識を連動させないと解答にたどり着けない「思考力」を問う問題が多かった」としている。
【ハフポスト日本版・井上未雪】