「 今年のラマダンは特別になっています。言葉にするのも辛いけれど、なんとかポジティブに捉えようとしています」噛み締めるようにヨルダンの首都アンマンに住むリアン・アイ・ジャビさん(32)は話す。4月24日に始まったラマダンに寄せる思いは格別だ。
ラマダンは、イスラム教徒にとって特別な月だ。宗教上の意味だけではなく、経済的にもだ。経済が最も活発になる時期だからだ。新型コロナウイルスの感染拡大で、異例のラマダンになっている様子を語ってくれた。
感染者は限定的でも、厳格な外出禁止令
ヨルダンでは、感染者数の人口に対する割合はかなり低いものの、外出禁止を徹底している。996万人中、感染者数累計は453人。日本の感染率の半分以下だ。4月30日、国境付近でアラブ諸国国籍者2人の感染が確認されているが、ヨルダン国内で感染者は確認されなかった。
それでも、5月1日は包括的外出禁止とされた。2日は、午前8時から午後6時までの間に限り、車のナンバープレートの末尾が偶数の車だけ運転できる。運転手のほか同乗者は1人だけ許される。この車による外出も4月29日に許されたばかりだ。
食料品や薬などの必需品の買い物も、午前8時から午後6時までに限られており、16歳から60歳までの年齢に限られている。外出時は、手袋とマスクをしなければならないという。
現地報道によると、外出禁止令が適用された3月21日には、少なくとも155人が外出したことで警察に逮捕され、翌日には693人が逮捕されたという。
最も活気づくはずのラマダン。しかし今年は...
新型コロナウイルス禍の中、4月24日に始まったラマダン。ラマダン期間では、約1ヶ月の間、日の出から日没まで食べ物と飲み物を断ち信仰を深める。特別なこの月は、一年の中で最も経済活動が活発化する時期だ。服を新調したり、家族や親族、友人らが一堂に集まり、豪華な食事を囲む。外食産業も日没後、多くの人で賑わうのが一般的だ。市場やショッピングセンターなど商業施設も客が増える。しかし、今年は家族だけでひっそりと過ごすラマダンになりそうだ。
ジャビさんは、4歳と10ヶ月の娘たちと夫の4人家族だ。デザイナーとしての仕事は在宅勤務でこなしながら、子供たちの面倒を夫と共にみる。
新規感染者が少なくても外出禁止が厳格に適用されることに安心感があるという。「政府が完全に感染ルートを追跡し把握している。軍と政府が一体になって対応しており安心だ」と話す。
ただ、子供たちを完全に家の中に居させるのは、どの国でも大変な様子だ。「4歳の子は、お外にコロナという悪い人が出歩いていると彼女なりに理解しているようです。テレビの教育番組も充実しており、なんとかやっています」とジャビさん。
営業再開の兆しもで始めている。政府は4月30日、ショッピングモールや大型スーパーの営業再開を発表。1度に入店は2人までで、マスクをしない客の入店禁止を義務付けている。
ジャビさんは、今年のラマダン中の食事は4人の家族だけでひっそりと楽しんでいるという。中東の家庭料理マクルベをラマダンの初日に作った。「今は親戚や友達にも会えないし、モスクにも行けない。けれども耐える時ですね」と取材時のパソコンの画面越しに笑顔を見せていた。
(ハフポスト日本版・井上未雪)