安倍首相が4月6日夕、特別措置法にもとづく緊急事態宣言を7日にすることを明らかにした。東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県対象に約1ヶ月間程度となる。
安倍首相は記者団に「日本では緊急事態宣言を出しても海外のような都市の封鎖を行うことはない。公共交通機関も動き、スーパーも引き続き営業する。密閉、密集、密接を防ぎ感染拡大を防止する。これまでの日本のやり方には変わりない」と説明した。
政府が7都府県に行う緊急事態宣言による行動制限は、買い物も許されなかった中国・武漢や、罰則が伴う欧米のロックダウン(都市封鎖)とは異なる。
フランスでは外出に許可証が必要だが、日本では許可証もなく、外出できる。フランスやイギリスなどとも異なり罰則もない。この宣言に基づく要請は、「在宅」して「人との接触を避ける」ことを徹底するための施策だ。
内閣官房新型インフルエンザ等対策室は、以下のように説明している。
欧米におけるロックダウンのように強制的に罰則を伴う都市の閉鎖は生じません。特措法に基づき、都道府県知事により外出自粛要請、施設の使用制限に係る要請・指示・公表等ができるようになります。
特措法は、多くの人が利用する施設の使用制限や停止を知事が要請できると定める。学校や百貨店、映画館、劇場、体育館、ホテルなどが対象だ。スーパーマーケット、食品、医薬品、衛生用品、燃料など厚生労働相が定める生活必需品の販売はできる。公共交通機関も基本的に動いている。
現状の取材で、考えられる行動制限をまとめた。(あくまで現段階の想定です。正式な行動制限は、7日に宣言が出た後の各知事の発言内容などを参考にしてください)
【要請される行動】
・在宅勤務
・家族(同居する人)で在宅する
・都心部から地方への移動は避ける(地方の医療機関をパンクさせないため)
【制限】
・学校や福祉施設、保育所の制限
・百貨店、映画館、劇場、ナイトクラブ、パチンコの営業制限
・居酒屋、ネットカフェ、麻雀店(東京都の場合)
・ボウリング場、体育館、プールの営業制限
・音楽やスポーツイベントなどの開催休止
【生活必需品の購入やサービスは基本的に利用できる】
・スーパーマーケット コンビニ
・銀行 (原則通常通り、ネットバンキングも)
・薬局、医療機関
・ガソリンスタンド
・電気、水道、ガス
・公共交通機関
大手三銀行は平日も通常通り開店するところがほとんどだ。
みずほ銀行広報室は、「金融機関の使命として、資金決済業務や企業の資金繰りの支援などの業務についても引き続きお客様に寄り添った対応を継続していきます」としている。
三菱UFJ銀行広報部は、ビジネスの継続性の観点から政府方針を参考にして、開店時間などの検討をするとしている。基本的には、客に迷惑をかけない形で行うという。
三井住友銀行広報部は、対策本部を設け、対応方針を検討中だという。
スーパーマーケットもライフラインとして、ほぼ通常通り開店する。生鮮食料品の流通は変わらないため、各スーパーは「落ち着いて買い物をして欲しい」としている。
イオン・コーポレートコミュニケーション部によると、都内のイオンスーパーは通常通り開店する。生鮮食料品などの流通も通常通りだ。全国各地のイオンもそれぞれの知事の要請内容を見て対応をする。
スーパーのいなげや社長室広報によると、基本的に営業時間も変わらず通常通り開店する。客で混み合う場合は、入店制限をする場合もあるという。
スーパーのサミット広報室は、現時点では開店時間は9時のまま変わらないが、多くの店が30分から3時間程度閉店時間を早めている。パートやアルアバイトが働けない事態も今後想定されるが、「ライフラインに関することなので営業は続けていく」と話す。
日本の緊急事態宣言に近い措置をとっている他国の事例
先行して外出制限措置が取られている欧米はどうか。各国ごと制限される内容は異なるが、日本に近いイギリスやアメリカ・ニューヨークの場合を見てみると、ニューヨークやロンドンも、スーパー、銀行、ガソリンスタンド、薬局など必需品へのアクセスはできる。ニューヨークでは、飲食店は一部開いており、店内での飲食はできないがテイクアウト(持ち帰り)はできる。
2、3週間経つと、慣れてきて身近な幸せを見つけている、という投稿もTwitterなどSNSには流れている。
【ロンドンやニューヨークの参考事例(6日取材時点。その後変更している可能性もある)】
■スーパー 入店制限をする可能性。品数はパニック買いが生じた数日間は品薄状態の時もあったが、流通は途絶えていないため、 三密を避け、入店する人を一定数に限定。
■銀行 事業の継続性から多くの支店は通常通り開いているが、入店する人を一定数に限定。
■運動 公園や屋外での散歩やランニングはできる。ジムやスタジオは閉鎖される。イギリスでは「1日1回1時間の運動」は良いとし、具体的には、同居人とのランニングはいいが、友人と待ち合わせてのランニングはしないように呼びかけている。
■薬局 開いている。外で待ってもらい、必要な薬を屋外で手渡す薬局もあるという。
■ガソリンスタンド アメリカでは開いている。
■公園 市民の憩いの場であるニューヨークのセントラルパークやロンドンのハイドパークは少なくとも開いており、市民は距離をあけてランニングや散歩をしたりできる。
■コーヒーショップ ニューヨークではスターバックスは営業しているといい、店内は椅子などを撤去して滞在できないようになっているが、持ち帰りだけできる。
■酒店 ニューヨークもロンドンも開いている
■ガス会社、電力会社、通信会社 サービス対応する人は減るが、業務継続
ロンドンに住む国際問題戦略研究所(IISS)リサーチ・フェローの越野結花さんは約2週間の外出制限を経た今「危機感を持ちつつパニックにならないようにしている」と話す。「昨日までは普通の生活だったのに、突然感染者数の爆発(オーバーシュート)になり、ロックダウンになった。やはり人なので直後はパニックになると思うが、今、ロンドンでは、人々は医療機関の最前線で働いている人を応援しようと『STAYHOME』(在宅)を徹底する意識が増し、医療維持に協力できるボランテイアには人が殺到している」と話す。越野さん自身も、公園の散歩で感じる自然に癒されるなどして、身近な幸せを楽しむことができていると話す。
「最近は、お絵描きゲームや〇〇チャレンジというのが回ってきたり、お料理のレシピを交換し合ったり、友人や知人の子供の可愛い動画を見て癒されたり、いつもよりも友人たちの自然な姿が見られて結構ほっこりします。
このような質素でとにかく静かな生活、そんなに悪くないです。
人が集まるようなところにさえいかなければ、自分を守ることも、周りの人も守ることができる。本当に、それだけです」とFacebookで現状を前向きに伝えている。
(井上未雪)