東京の地上波テレビ局「TOKYO MX」が1月2日に放送した「ニュース女子」の沖縄報道について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は2月10日、全会一致で審議入りすることを決めた。
この日、非公開で行われた委員会終了後、報道陣の取材に応じた川端和治委員長が明らかにした。今後、MX関係者への聞き取りなどを経て、委員会としての見解を「意見」にまとめる。
「ニュース女子」については、事実と異なる報道がされていると批判されたことを受け、BPOがMXに報告を求めていた。
「ニュース女子」は、「DHCシアター」と「ボーイズ」が制作し、MXにはDHCシアターがスポンサーとして持ち込んで放送されている。MXからは、制作会社の番組制作過程や、持ち込まれた番組の内容を放送局内でどう判断(考査)したのかについて、経緯を説明した報告書が提出された。
川端委員長によると、報告書には「表現の点、裏取り、取材の突っ込み方について、適切ではなかったという趣旨」の記述があり、「今後、多様な観点からさらに取材を続ける」といった結論になっていたという。
川端委員長は今後の審議について、「すでに明らかに事実の間違いが報じられていることから考えて、考査の段階でまったく見逃されているというのは一つ問題になりうるのではないか」として、当面は考査担当者へのヒアリングをしていくとの見通しを示した。
また「MXが認める、認めないに関係なく、事実でないところはどこにあるのか、それを事実であるかのように放送したことに合理的な理由があると言えるのか、普通の裏取りをちゃんとしたのか」を見ていくとも話し、「必要ならば、さらに制作会社の協力も求める可能性はあるということは前提」と述べた。
委員会は今後の「審議」を通じて、見解を「意見」にまとめる。一方でより強い「勧告」や「見解」を出すことができる「審理」入りは見送られた。川端委員長は「あれが捏造放送ということになれば審理ですが、そう言えるという議論はなかった」と説明している。
■「ニュース女子」問題とは
番組では、反基地運動について「暴力行為により近寄れない」「足止めを食っている」として「ロケ断念」を発表した場所が、実際には現場から約25キロ離れていて、誰でも普通に近づける場所だったり、普天間飛行場の周辺で「2万」と書かれた茶封筒が見つかったとして「反対派は日当をもらってる?」「反対派の人たちは何らかの組織に雇われている?」などのテロップやナレーションを流したりしたことが「事実ではない情報」(沖縄タイムス社説)と批判されていた。
これとは別に、沖縄の基地反対運動に関わる人を「テロリスト」「犯罪者」「無法地帯」などと表現し「のりこえねっと"辛淑玉"とは何者?」「反対運動を扇動する黒幕の正体は?」「韓国人はなぜ反対運動に参加する?」などのテロップを流したことについて、反ヘイトスピーチ団体「のりこえねっと」共同代表を務める辛淑玉さんが「テロ行為、犯罪行為の『黒幕』であるとの誤った情報を視聴者に故意に提示した」として、BPOの放送人権委員会に人権侵害を申し立てている。
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