中韓は安倍首相と会うべきだ――。
安倍首相の靖国神社参拝を受けてアメリカの有力紙「ニューヨーク・タイムズ」は、これ以上、日中韓の関係を悪化させないためにも中国と韓国はこれまでの姿勢を改め、日本との対談を実現させるべきだと指摘した。両国は対談を拒否することで、軍事化を目指す安倍首相に口実を与えてしまっていると批判した。
■「安倍首相の本当の目的は日本を軍事国家にすること」
ニューヨーク・タイムズは12月26日に掲載した記事の中で、安倍首相の本当の狙いが「第二次世界大戦時代の日本の誇りを取り戻し、日本を軍事国家にすること」であることが、今回の靖国神社参拝で明らかになったと指摘。
さらに、「アメリカは日本が東アジア圏において軍事的存在感を強め、信頼できるパートナーになる」ことを望んではいたが、かえって日本は東アジアの不安定化を招く「アジアの問題」になってしまったと懸念を示した。
記事には安倍総理大臣が靖国神社参拝に先立ち、野党やメディアの反対にもかかわらず特定秘密保護法を成立させたほか、自衛隊の装備を拡充する防衛大綱をまとめるなどして、政治的なリスクを負いながら日本の戦後の平和主義からかじを切ろうとしているとしています。
また、外交的には今回の靖国神社参拝が日本と中国や韓国との関係を一層悪化させ、アメリカにとってももはや日本は、中国に対抗するうえで頼りになる存在ではなく、中国との緊張を高める「アジアの問題」になろうとしていると指摘し、アメリカの対アジア政策にも悪影響を及ぼしかねないと懸念を示しています。
(NHKニュース「米有力紙『参拝は平和主義から離脱』」より。12月28日11時56分)
■「中国と韓国は安倍首相に口実を与えてしまっている」
こうした安倍首相の強硬な態度を厳しく批判した上で、ニューヨーク・タイムズは社説の中で、領土問題や歴史問題を巡る中国や韓国の硬化した態度が日本国民に不安を与え、軍事化を目指す安倍首相に口実を与えてしまっていると指摘した。
中国と韓国の両国は2012年に安倍氏が首相に就任して以来、領土問題や慰安婦問題をはじめとする歴史問題を理由に会談を拒否しつづけている。
しかし、中国と韓国のこのような態度が逆説的に今回の安倍首相の靖国参拝につながったと考えられる。過去1年間における尖閣諸島をめぐる中国の「けんか腰」な動きは、日本国民に中国が軍事的脅威であるという印象を与え、その結果軍事国家を目指す安倍首相に口実を与えてしまったためだ。靖国神社参拝も安倍首相のそうした動きの一環である。
さらに韓国も慰安婦問題を巡って日本と対立し、朴槿恵大統領は安倍首相との会談を拒否してきた。その結果、韓国への反感を募らせつつある日本国民の信頼を取り戻す努力を怠り、今や日本人の約半数が韓国を軍事的脅威とみなしている。
(ニューヨーク・タイムズ “Risky Nationalism in Japan”より。12月26日)
「けんか腰」な態度とは、中国が一方的に尖閣諸島上空を含む東シナ海エリアに防空識別圏を制定したことなどを指していると考えられる。こうした中国と韓国の姿勢が日本国民の不安を煽り、安倍首相の言動をサポートする世論を作り上げてしまっているという指摘だ。
従って、安倍首相の軍国化を目指す動きをこれ以上加速させないためには、中国・韓国の首脳が日本との対談の場を設け、直接これらの課題を議論する必要があると述べている。
同時に安倍首相がこのような大胆な行動に出ることができるのはアメリカの軍事的バックアップがあるからこそであると指摘し、アメリカ政府は安倍首相の方針を支持しないという考えを明確に打ち出すべきと説いた。
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