異色の新ニューヨーク市長・デブラシオ氏が体現する「これからのアメリカ」とは?

ヒスパニック系など有色人種はマイノリティと書いたが、その状況は刻々と変わりつつある。すでに人口の約半数がヒスパニック系、黒人、アジア系といった有色人種であり、これらをすべて足し合わせるともはやマイノリティとはいえなくなっている。
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NEW YORK, NY - NOVEMBER 05: Newly elected New York City Mayor Bill de Blasio (R) hugs his son Dante de Blasio (L) and daughter Chiara de Blasio at his election night party on November 5, 2013 in New York City. De Blasio beat out Republican candidate Joe Lhota and will succeed Michael Bloomberg as the 109th mayor of New York City. He is the first Democratic mayor in 20 years. (Photo by Andrew Burton/Getty Images)
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異人種家族を持つ元左翼活動家がNY市長選に圧勝。アメリカはどこに向かっているのか?

ブルームバーグ現市長の任期満了に伴うニューヨーク市長選挙が11月5日に実施され、格差是正を前面に掲げた民主党のビル・デブラシオ候補が当選した。同じく5日に行われたニュージャージー州知事選では、共和党の現職であるクリス・クリスティー氏が圧倒的な大差で再選された。

全米で注目された二つの選挙は、民主党と共和党がそれぞれ勝利するという正反対の結果となったが、両者には大きな共通項がある。それは人種の多様化である。このキーワードは今後、長期にわたって米国の政治や経済に大きな影響を与えることになる可能性が高い。

デブラシオ氏は、20万戸の福祉住宅の建設、年収50万ドル以上の富裕層への増税、警察官の強引な職務質問の禁止などリベラルな政策を掲げ、73%もの得票率を得て当選した。だが何と言ってもデブラシオ氏を圧倒的な勝利に導いたのは、左翼活動家出身という本人の経歴と家族構成だといわれている。

デブラシオ氏は現在はニューヨーク市の市政監督官(オンブズマン)をしているが、以前は南米ニカラグアの武装革命組織サンディニスタ民族解放戦線の支援活動をしてたゴリゴリの左翼活動家である。しかも夫人は黒人で、巨大なアフロヘアをトレードマークにしている息子のダンテ君が前面に出るという選挙戦を展開した。一家はブルックリンに居を構えており、ダンテ君と妹のキアラさんは公立学校に通う。家族写真が選挙CMに使われてから支持率が急増したという。

ニューヨークは全米でもっともリベラルな街といわれている。ブルームバーグ現市長は、共和党の大富豪だが、ウォール街出身のユダヤ教徒であり、さらにその前のジュリアーニ市長はカトリック教徒であるにも関わらず離婚歴が2回、しかも選挙期間中に不倫スキャンダルが浮上したという強者である。その点からすれば、デブラシオ氏も突出したキャラクターというわけではないかもしれない。

だが人種の多様性が大きな影響を与えたという意味ではニュージャージー州のクリスティ知事も同じだ。クリスティ知事自身は白人だが、彼の勝因のひとつは、ヒスパニック系などマイノリティからの支持率が高い点にあるといわれている。100キロを軽く超えると思われる巨漢で、デブの自虐ネタを披露するキャラクターは従来のエリート白人とは異なったイメージといえるだろう。共和党で強硬な財政再建論者であるにもかかわらず、超保守派であるティーパーティからは嫌われている点も興味深い。

ヒスパニック系など有色人種はマイノリティと書いたが、その状況は刻々と変わりつつある。すでに人口の約半数がヒスパニック系、黒人、アジア系といった有色人種であり、これらをすべて足し合わせるともはやマイノリティとはいえなくなっている。特にヒスパニック系移民は急増しており、共和党にとっても民主党にとっても、非常に重要な票田となっている。クリスティ知事は次の大統領選の有力候補の一人といわれているが、もう一人の有力候補で若手上院議員のルビオ氏はなんとキューバ移民2世だ。

デブラシオ氏が掲げるような反資本家、反自由競争といったリベラル路線が今後の流れになるのかは不透明だ。だが、人種や家族構成といった基本的な価値観が多様化の方向に進んでいることだけは間違いない。しかも、これは保守系、リベラル系に共通したテーマである。

このような動きは経済やビジネスにも大きな影響を与えることになる。日本も米国ほどドラスティックではないが、こうした変化とは無縁ではない。家族や人種に対する考え方は着実に変わりつつあることを理解しておくべきだろう。

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