新国立競技場、やっぱりアーチは維持 工費は900億円アップ

新国立競技場の建設費について、文部科学省は当初1625億円としていた予算より約900億円高い、2500億円程度で調整していることがわかった。
Open Image Modal
時事通信社

2020年東京オリンピック・パラリンピックのメーン会場となる新国立競技場の建設費について、文部科学省は当初1625億円としていた予算より約900億円高い、2500億円程度で調整していることがわかった。開閉式屋根の設置は、東京オリンピック開催後に先送りし、常設8万席の予定だったスタジアムの観客席は6万5000席に減らして1万5000席は仮設とする。NHKニュースなどが報じた。

焦点となっていたデザインについては、流線形の屋根を支える2本の巨大な「キールアーチ」を残すなどの現行デザインのまま、今月末にも大手ゼネコン2社と契約を結ぶ方針。朝日新聞デジタルによると、競技場のデザインがコンペで選ばれたことや、デザインを見直すと工期が間に合わないことなどからから、巨大アーチの維持を決めたという。

文科省や、同省管轄でプロジェクトを推進する日本スポーツ振興センター(JSC)は、29日に開かれる東京オリンピック・パラリンピック調整会議組織委員会の調整会議でこの件を報告する。今後、東京都の負担を含めて、必要な財源をどのように確保していくかが課題となる。

新国立競技場をめぐっては、2012年11月のコンペで、イラクの建築家ザハ・ハディドさんの案が選ばれた。しかし、そのまま建設すると当初の予算の倍となる3000億円がかかることがわかり断念。プロジェクトを推進するJSCが、2014年、大幅に規模を縮小した修正案を作成した。しかしこの案でも、資材高騰や円安で予算オーバーと工期の遅れが確実視され、下村博文文科相は5月、さらに内容を見直す方針を明らかにしていた。

建築家の槇文彦さんらは5月、キールアーチの構造が工期の長さとコスト増大につながっていると問題視。全面を屋根で覆う設計をやめ、客席だけ覆う形にすることなどで、工事期間を大幅に短縮でき、工費も抑えられると提案した

下村文科相は槇さんらのデザイン見直し案には「耳を傾ける」としながらも、「それを採用するかしないかは別問題」とコメント。ザハ・ハディドさんのデザインを完全に破棄して白紙に戻すことは否定していた

【関連記事】