成人の日が、やってきました。毎年、この時期になると何故かソワソワして、何かいい言葉を新成人に伝えたいと思うのはきっと、僕だけではないでしょう。多くの著名人や名物市長のスピーチがメディアやSNS上に多数流れている中で、でも敢えて僕が伝えたいのは、「その瞬間、瞬間を真っ直ぐにしぶとく生きること」の大切さです。
僕がアメリカに留学後、あのワールドトレードセンターで大切な友人を亡くしてから気づいたのは、「何もできない自分に対する怒りととてつもない無力感」でした。その後、多くの経験をさせていただき、大事な局面では必ずキーとなる人との出会いがあり、いくつかの転機を乗り越えることができました。広告会社の博報堂に就職し、その後はNPOの代表に、そして港区議会議員になったという経緯は先日、「日経カレッジカフェ」での連載に記しました。
●『僕ら流・社会の変え方 第2回』
●『僕ら流・社会の変え方 第2回』
記事を読んでくれた人からは、「横尾さんはすごく計画的に人生を生きてきたんですね」とか、「その行動力はすごい」とか言われました。でも本当は、僕が好きなミスチルの曲『PADDLE』にあるように、「虎視眈々と準備をしてきた僕だから、きっとうまくやれる」、なんて思って一々行動してきたわけではありません。人生の岐路に迷った時は必ず一人になって心の声に耳を傾け、「人からほめられる」ではなく「人に誇れる」、あるいは「この道なら後で失敗しても後悔しない」方を選んできました。もちろん、限られた時間の中で優先順位はつけますが、心がちょっとでも動いたことはとりあえず「全部」やってみて、その後に行き先を決めました。
僕が苦手なのは、「10年後、20年後まで計画を立て、それに沿って生きること」です。なぜなら、そんな先の世の中がどうなっているのかなんてちっとも想像つかないし、それまで自分の夢の実現をとっておき、そのために生きていたのでは下積みが長過ぎて、「今」が少しも楽しくないからです。それよりも、たとえ何となくの方向性はあったとしても、面白そうなことはどんどんやってみて、その度に「これは自分に合っている」「向いていない」を決めた方がいい。そうすれば後で決して後悔しないし、そうして選んだ人生はきっと常に満足のいくものになっていると思うからです。
「今がとても楽しい」僕自身の経験から、新成人の皆さんにこれだけは自信を持って言えます。これから、たくさんの素敵な経験をするのと同じくらいに、辛いこともたくさんおきます。自分のできることの「小ささ」に絶望的な気持ちになることもあるでしょう。でも、たくさんの選択肢の中で自分が選びとり、努力してきた道ならば、それはきっと自分の責任で乗り越えられます。だからぜひ、いい本に出会い、あるいは「これは」と思えるメンターを見つけては、その人の声を真っ直ぐに聞き、いろんなことを全力で試して欲しい。「自分が人生をかけて取り組みたいこと」はその積み重ねから自然と生まれてくるし、そこからだんだん自信も湧いてきます。
テロの悲しみを味わい、「国際平和に貢献できる人材になりたい」とスタートした僕のキャリアでしたが、今はすごくドメスティックに、地域で働いています。でも、すごく楽しい。自分のまちでの一つ一つの行動が、まちを良くすることにつながる。もしくは自分の小さな行動が時に、自分の近くの大切な人の人生の局面で、支えになる。そんな小さなことが結果的に、世の中のポジティブな流れをつくれているのだとしたら、こんなに嬉しいことはないと思います。そう。僕の好きなミスチルのもう一つの曲、『彩り』の歌詞のように。
努力しても報われない状況もある。だとしたら、それは気づいた人が変えればいい。でも、世界は結局、僕らの行動の積み重ねでしか変えられないんです。