デング熱の脅威がアメリカにも? 病気を広める蚊やダニが温暖化で北上中

ワシントンD.C.に住む9歳のルイサ・マリア・バスケス・クルスちゃんは2013年、かかりつけの小児科医から、一風変わった処方箋を受け取った。そこには「外でもっと長い時間遊ぶように」と書かれていたのだ。
Open Image Modal
Ghislain & Marie David de Lossy via Getty Images

ワシントンD.C.に住む9歳のルイサ・マリア・バスケス・クルスちゃんは2013年、かかりつけの小児科医から、一風変わった処方箋を受け取った。そこには「外でもっと長い時間遊ぶように」と書かれていたのだ。

彼女を診断したのは、「ユニティ・ヘルスケア」(低所得層や保険に加入していない家庭に医療サービスを提供している)の小児科医、ロバート・ザール医師だ。同医師によれば、彼女の治療プログラムは「大成功」を収めたそうだ。彼女の肥満問題は克服され、持病のぜんそくも十分にコントロールできるようになったという。

ザール医師は、公園での外遊びを推奨するこのプログラムを2013年7月に始めて以来、自然の中で時間を過ごすよう指示する処方箋を600枚以上書いている。肥満から来る糖尿病などの病気のほか、うつ病や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などの精神的な問題も含めて、さまざまな健康問題を予防・治療するためだ。

一部の研究者によれば、屋外で時間を過ごさせることは、ADHDの症状を、メチルフェニデートを含む薬を飲んだ場合と同じ程度にまで和らげるという。特に、公園など自然環境の中での散歩は、町なかや家の近所を歩くよりもはるかに高い効果が得られるという。また、自然の中で時間を過ごすことは、視力や骨密度の向上につながるという報告もある。

つまり、自然の中で過ごすことは健康に良い。しかし、ある要因がこの「療法」の障害になりつつある。温暖化に伴う害虫の増加だ。

ワシントンD.C.は、気温の上昇などのために蚊の増加に見舞われているアメリカ国内の地域のひとつだ。特に増えているヒトスジシマカ(ヤブカ)は、デング熱西ナイル熱、そして近年流行しているチクングニア熱など30種類を超える感染症を媒介する生物として知られている。

さらに、気候変動に伴い、ダニたちも北上していると報道もされている。このやっかいな生き物は、ライム病ツツガムシ病などの感染症を引き起こすことがあり、森や、低木が多い場所や、草で覆われた場所に生息していることが多い。町中の公園にも生息しているようだ。

ほかにも、毒をもつファイアーアント(Fire Ant。カミアリ/ヒアリ)や、攻撃的なクレイジーアント(日本語版記事)、あるいはカメムシも増加していると報告されているが、温暖化が影響するのは昆虫だけではない。アレルギーや喘息の原因となる花粉の数も増えているという。また、かぶれの原因となるポイズン・アイビー(ウルシ科の一種)も急増し、その毒性が高くなっていると報道されている。ポイズン・アイビーは、アラスカ州とハワイ州を除く米本土48州では、カリフォルニア州以外のすべての州で勢力を拡大している。

ほかにも、クラゲアオコも増殖が問題になっている。

ザール医師は、虫除けスプレーなどの手段を推奨することによって「外遊びという治療」を勧め続けるというが、温暖化は、アウトドアで過ごしたい人たちにとってもやっかいな問題になりつつあるようだ。

[Lynne Peeples(English) 日本語版:佐藤卓、合原弘子/ガリレオ]

ハフィントンポスト日本版はFacebook ページでも情報発信しています