子どもに「選択肢」を示して、自分で決めてもらう。 “身長100センチのママ”の子育て

自立し、周りと助け合える優しい人になってほしいーー。子どもを持つ親ならそう願う人が多いのではないでしょうか。生まれながらに骨が折れやすい「骨形成不全症」という障害をもつ伊是名夏子さんが、子育てにおいて日々工夫していることを教えてくれました。キーワードは「選択肢を用意してあげること」です。
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伊是名夏子
自然を求めて八ヶ岳に遊びに行きました。

いつも元気いっぱい、いろいろなことに興味津々の子どもたち。電車や病院、レストランなど、静かにしてほしい場所で大きな声を出したり、時にはさわいでしまうので、ヒヤヒヤ、イライラすることありませんか? 

「静かにして!」と大きな声で怒鳴ってしまいそうになるのをぐっとこらえて、お菓子やおもちゃを渡してみたりします。そんな時、子どもに「考えて、選んでもらう時間」をつくってみませんか?「選択肢」を与えると効果的なことがあるからです。

例えば、飴の味は2種類以上用意し、「りんごとぶどう、どっちが食べたい?」と選んでもらいます。(好みではないのが残りがちなので、最後には仕方なく食べてもらいます)。おもちゃだと「おりがみといろぬり、どっちがいい?」という風に。本なら数冊、軽いものを用意します。おまけでもらったシールや、雑誌に載っている間違い探しも、ページを切り取ってカバンに入れておきます。

どれで遊ぼうかな、と選ぶのはきっと子どもも楽しいですよね。私もコンビニで新発売のチョコが出たら、「マロンとホワイト、どれにしよう」とワクワクするし、麺が食べたいランチも、「蕎麦とパスタ、どちらにしよう」とわくわく悩みます。「選択肢がある」というのは、とても楽しいことですよね。

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Jonathan Knowles via Getty Images
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「選ぶ」「決める」を繰り返すことで、自分を知り、他者を知る

こんな風に、子どもが選ぶことを大切にしている我が家。選ぶためには、自分で考え、決め、思いを伝えて、時には話し合うことが必要です。

このプロセスを繰り返すことによって、子どもは「自分の好きなものは何かな?」と考える機会がふえます。自分のやりたいことがみつかると、それを周りに伝えることによって、「自分の好きなことを大事にしてもいい」、と思えるようになるでしょう。

それから、自分と相手のやりたいことが時には違うという場合に、自分と相手を比較するだけでなく、時には話し合って、自分の好きなことを通すのか、アレンジするのか、相手を優先するのかと、いろいろな解決法をみつけることができるでしょう。

「考えて、選んで、決める。時には相手と話し合う」。そうやって「対話」の大切さを知ってもらい、自分のことを大事にして、いろいろな人と生きていることを楽しむことができるようになるのではないかな、と思っています。

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CHBD via Getty Images
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朝のおやつ、お弁当のふりかけ、着ていく洋服もぜーんぶ「選ぶ」

「選択肢」というとちょっと堅苦しく聞こえるかもしれませんが、実際にやっているのはこんなことです。

まず朝一番のおやつ選び。わが子たちは早起きで、6時前に起きることもよくあります。親は起きられないので、子どもたちだけで起きて、好きなおやつを食べるのが定番です。朝からおやつはよくない?と思うこともありますが、私の眠りを優先したいので、子どもが1歳半になった頃から、おやつを入れたタッパーを机に置いておき、自分で食べることから始めました。もちろん誤飲は心配なので、食べやすいものだけを用意し、私は布団の中から子どもを見守ります。 

朝ご飯にトッピングするものも、のりと油みそ(沖縄伝統のご飯にのせて食べるお味噌)どっちがいいか、お弁当に持っていくふりかけは、おかかとのりたまのどちらがいいか、自分で選んでもらいます。

着ていく服も自分で選びます。娘と私は好みの服が違うので、私が着てほしい服をなかなか選んでくれないこともあり残念…。時にはイライラもしますが、なるべく彼女の選んだものを優先します。(「ママの好きなのはこれなのに!着てくれないの?似合うのに!」とショックな気持ちも時には伝えますが(笑))

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伊是名夏子さん提供
朝の準備を手伝うふたり。私より子どもが背が高く、私は届きません(笑)

どんなに頑張ってもできないことがあるから…。

子どもが自分で決めることに加えて、うまくいかない時には周りとトコトン話し合うことを大事にしています。

例えば、子どもに頼んでいる家のお手伝い。

我が家ではお弁当箱を洗うのと、食事の前後に机を拭くのを子どもたちにお願いしています。率先してやってくれる時もあれば、やりたくないと言ってぐずる時も多いです。そんな時は、「選択肢」を提示しながら、どうしたらできるのかを話し合います。

私が傍で見ていたらできるのか、半分だけ手伝ったらできるのか、音楽をかけたらできるのか、どうしてもその日はやりたくないのか、などなど。

その話し合う手間や時間のかかること!「それくらい自分でやってよ」と言ってしまいたい時もあります。

それでもどうしてそこまで話し合うのかというと、人は誰でも、どんなに頑張ってもできないことがあるからです。特に私のように障害があると、できないことだらけ。やりたくない時、できない時はどうしたらいいかを考え、誰かに手伝ってもらうのも良い方法です。

大事なことは、できない理由や、やりたくないという自分の思いを言葉にして話し合うこと。それを繰り返すことで、自分でできることだけがいいことなのではなく、できない時には周りに助けを求めることも賢い方法の一つだと学んでほしいのです。そして逆に、できない人に「一緒にやろう」「一緒に考えるよ」と子どもたちが言えるようになったら嬉しいです。

子どもはもともとお手伝いが大好き。自分の持ち物の準備はしないのに、「ママ、カバンをもってきてあげるね」「ママの服はこれがいいんじゃない?」と手も口も出してきます(笑)。時にはおせっかいにも思えるし、「人のことよりもまずは自分のことをしてよ」なんて思ってしまいますが、ぐっと我慢。子どもが感じている、人とつながる楽しさ、助け合う素晴らしさを大切にしたいです。

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伊是名夏子さん提供
コロナ禍の1日。友だちとオンラインで手巻きパーティ、乾杯!

 

決めたことに固執しすぎなくてもいい

また、子どもが何かを決めた時に気を付けたいのが、一度決めたことにとらわれ過ぎないようにすることです。大人でも「予定の時間を過ぎたけどあと少しやりたい」、「予想とは違って失敗した」、と後悔したり、思い直したりしますよね。

子どもが失敗したり、時間を守らなかった時に「自分で決めたんでしょ」と冷たく、時には強引に、自己責任を押し付けそうになりますが、それでは自分で決めることが楽しくなくなってしまいます。「失敗して残念だったね、じゃあ次はどうしようか?」と声をかけられるといいですね。

と言いつつも、私も現実は理想とほど遠く、「もうやめて!」と怒ってしまうこともあるのですが…。本当は大人にだって、「やりたくない!」と駄々をこねる相手や、一緒に考えてくれる人、一緒にやってくれる人が必要なんだと思います。

 *

コロナ禍で、人と距離をとって道を歩いたり、お気に入りの遊び場に行けなかったりと、子どもとの生活はさらに大変になりました。考えることが増えて、工夫をし過ぎて疲れたり、イライラしたり、うまくいかないことが多くて、自分を責めてしまうこともあります。世界中の人たちがこのコロナに恐怖を感じ、疲れています。

でも「うまくいかないことが当たり前」。

それを心にとめて、安心できる人には「疲れた」「もういやだ!」と話してみませんか。そして自分に少し余裕ができたら、子どもの不安、困りごとも聞きつつ、一緒に考えて、乗り切っていけたらいいですね。

まだまだ続くコロナとの生活。頑張り過ぎずに、でもやりたいことは大事にして、乗り切っていきましょう。

(文:伊是名夏子/ 編集:南 麻理江)

 

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