性教育と聞くと、恥ずかしい、どうやっていいかわからない、わが子には早い、と思うことがありますよね。でも、性教育が趣味の私は、子どもが0歳の時から、はじめています。性教育というと、セックスを教えること、と思ってしまうことがあるかもしれませんが、そうではないのです。自分を大事にして、相手も大事にすること。そしてパートナーシップを学んで、自分らしく生きることを伝えることです。
プライベートゾーンは「自分で」洗わせる
まずは体をキレイにして、大事にしようね、ということから始めます。
息子が8か月の時に、おちんちん講座を受けたので、ペニスの皮をむいて洗うことを始めました。「大事なからだだね。きれいきれいしようね」と声を掛けながら洗うだけ。2歳くらいなったら、自分でも洗えるようになります。プライベートゾーンなので、たとえ小さい子であっても、なるべく自分で洗うことをうながします。(包皮は剥いた方がいい、剥かなくてもいい、といろいろな考えがあります。自分がいいと思ったことを選ぶといいでしょう。大切なのは体をきれいに洗う、ということです)
「あそこ」「おまた」と呼ぶのではなく、「ペニス」「クリトリス」「ワギナ」という正式な名前も覚えます。お風呂に入りながら「頭をさわって!」「おなかをさわって」「ワギナをさわって」というふうに、楽しく覚えます。大事な場所だね、プライベートゾーンだね、というふうに、説明を付け加えることもあります。
おなかをさわったときは「おなかいっぱい、ぽこぽこだね、何が入っているのかな?今日は何食べた?」、ワギナのときは「プライベートゾーン、あかちゃんがうまれるところだね」と子どもとのおしゃべりを楽しむようにしています。
私は帝王切開で出産したので、「あなたたちはワギナはとおらずに、おなかを切って生まれてきたんだよ」と付け加えます。すると「7匹の子やぎと同じだね」と子どもに言われました。
「やめて」と言う練習を何回もする。
性教育で大事なことの一つが、「やめて!」を言うことを教えることです。3歳の娘は、おじいちゃんと一緒にお風呂に入った時、おじいちゃんが体を洗ってあげようとしたときに「プライベートゾーンだからやめて!」と言いました。性被害に遭うのは、知らない人からよりも、普段から知っている家族や近所の人、先生から遭うことが多いのです。性被害に遭わないために、知らない人についていかない、と伝えるだけでなく、「知っている人でも、嫌なことをされたら断る」というのが大事です。「やめて!」を言う練習を何回もしています。また嫌なことをされたとき、信頼している大人に話すことも大事だし、逃げることもカッコいいと話します。
大事なのは、「オープン」に話すことではない
常々思っているのは、性教育は、オープンに話すことが必要なわけではない、ということ。その逆で、本当はとてもプライベートなことなので、信頼関係があるからこそできる話なんだよと伝えます。自分の子どもであっても、相手のプライベートゾーンにさわったり、パンツを下げて遊ぶのは許されません。また子どもの誕生の話をするとき、「セックスをして受精した」、「セックスをしたからあなたは生まれてきた」というのは伝えますが、「パパとママはいつセックスするの?」「どこでやるの?」と聞かれても、それはママとパパのプライベートな話なので、伝えられないよ、と私は話します。親自身がプライベートを大切にしていることを伝えることで、将来、子どもがいいパートナーシップを築くことに繋がるでしょう。
自分の経験で、子どもの未来を狭めないで
もしパートナーがいるのなら、その人も一緒に、性教育を伝えられるといいですね。でも「自分が小さい時は教わらなかったけど、大丈夫だったよ。自然と分かるようになるよ」というパートナーもいるでしょう。我が家でも、夫が息子とお風呂に入るときに、私が「皮をむいて、ペニスをきちんと洗ってね」とお願いした時、夫は「僕が小さい時はしなかったから大丈夫だよ」と言いました。
自分の経験の物差しは大事です。でも子どもは、自分と全く違う人間で、生きていく環境も、時代も違います。自分の経験だけを考えていたら、未来の可能性を狭めるし、より生きづらくなってしまうかもしれません。子どもには自分らしく生きられるように、性教育を通して、いろいろな選択肢を与えたいのです。大人も一緒に試行錯誤しながら、そして大人であっても自分らしい生き方を見つけるために、性教育を学んでいきましょう。
オススメの性教育の本
5歳ごろから子どもと一緒に読むのがオススメ。
体をキレイにすること、一人一人すきなことがちがってもいいこと、など絵本で分かりやすいです。
小学校高学年ころから。男女のそれぞれの体と心の成長を、マンガで読みやすく伝えてくれます。好きな気持ちや、変化する体について不安が出てくるこの時期、おすすめです。
子どもに性教育を始めたいけど、どうしたらいいかわからない。まずは大人が学ぼうって人におすすめ。イラストもオシャレで手に取りやすい一冊です。
(文:伊是名夏子/編集:南 麻理江)
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