衆参の「ねじれ」を解消した安倍晋三首相は秋以降、官邸主導で外交・安保政策を立案する「国家安全保障会議」(日本版NSC)の来春の創設に向けて、さらに駒を進めるとみられる。
自民党の政権公約でも、「『国家安全保障会議』の設置、『国家安全保障基本法』『国際平和協力一般法』の制定など、日本の平和と地域の安定を守る法整備を進めるとともに、統合的な運用と防衛力整備を主とした防衛省改革を実行する」と表明。沖縄の基地問題については、党県連の主張とは食い違うが、「『日米合意』に基づく普天間飛行場の名護市辺野古への移設を推進する」とはっきり明記している。
MSN産経ニュースの報道によると、安倍首相はこの日本版NSCの創設に連動し、「国家安全保障戦略」を策定する方針。外交・防衛・経済の3分野を軸に包括戦略を示し、政府一体で国益を守るための指針を打ち出す「戦略文書」となる模様だ。
また、防衛政策の基本方針「防衛計画大綱」を今年末に改定する方針も固めている。ポイントは2つで、米国や友好国と連携した外交・安保指針と、危機管理での対処だ。中国や韓国など近隣諸国との間で高まる緊張関係も背景にある。
具体策では、(1)海洋(2)宇宙(3)サイバー-という米国の優位性が揺らぎつつある分野での日本の対処方針を示す。資源・エネルギーや食糧、人権といった課題に世界各国と取り組む姿勢も鮮明にすることで、これらの分野で対立することの多い中国を牽制(けんせい)する。政府を挙げた対応では、有事や緊急事態での「隙間なき対処」を念頭に置く。
(MSN産経ニュース 「国家安保戦略策定へ NSC、来春にも 中国にらみ一体対応」 13/07/08)
これまで、安全保障をめぐる大きな争点となってきた「集団的自衛権」について、自民の石破茂幹事長は、選挙期間中の14日にNHKの番組に出演し、「集団的自衛権が使えなければ、日米同盟も破綻だという議論があり、一方で集団的自衛権を行使したら侵略戦争だという議論もあって、それがずっと交わらないままきた。これに終止符を打つために法律を出している」として、「国家安全保障基本法」の成立をめざすことを表明している。
自民党は、昨年の衆議院選挙でも「基本法」の成立を争点に掲げている。「国家安全保障基本法案」の骨子によると、「国連憲章に定められた集団的自衛権の行使を一部可能にする」ことや、「自衛隊に対する文民統制を確保するため、自衛隊の行動に国会が関与する法律を別途定める」などが盛り込まれている。
ただ、「集団的自衛権」をめぐっては、同じ与党でも公明党はスタンスを異にする。同じNHKの番組で、公明党の井上義久幹事長は、「行使は認めないというのが政府の一貫した憲法解釈。連立政権の中でそこを変えなければならないようなことがあれば、それはそれで真摯に議論したい」と述べた。安全保障をめぐっては、これから与党内での調整が本格化するだろう。