第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は3月15日、2次リーグE組の日本対イスラエルの試合が東京ドームで行われた。
そんなに似ているのか?実際に聴いて確かめてみてほしい。
■イスラエル国歌「ハティクヴァ(希望)」
■交響詩「モルダウ」(連作交響詩「我が祖国」より)
イスラエル国歌「ハティクヴァ」は「希望」の意。歌詞では、ローマ帝国による弾圧で離散したユダヤの民が、再び「シオンの地」と「エルサレムの地」に住むという「2000年来の希望」、すなわちイスラエル建国の精神「シオニズム」を歌う。
確かに、切ないメロディが「モルダウ」と似ている。現地紙タイムズ・オブ・イスラエルによると、イスラエル国歌と「モルダウ」は、17世紀イタリアの曲「ラ・マントヴァーナ」をベースにしているという。
■チェコの国民的音楽「モルダウ」に込められた思いとは
「モルダウ」は19世紀ボヘミア(ベーメン[現在のチェコ西部])音楽の父・スメタナが作曲。1875年4月に初演された交響詩「わが祖国(Má vlast)」の中の一曲だ。日本では「モルダウ」の名で知られるが、これはドイツ語名。チェコでは「ヴルタヴァ」の名で親しまれている。
1859年、オーストリア帝国がイタリア独立戦争に敗北すると、ロシアやオーストリアなどの支配下にあった東欧・北欧の諸民族を中心に、独立を目指す民族運動が盛り上がった。
こうした運動を後押しすべく、19世紀から20世紀初頭にかけて、各地では民族主義的な音楽を表現した「国民楽派」の作曲家が活躍。チェコのスメタナ、ノルウェーのグリーグ、ロシアのグリンカなどがその代表だ。
スメタナは数々の愛国的なオペラを発表し、チェコのナショナリズムの高揚に一役買った。また、連作交響詩「我が祖国」では、プラハを南北に貫くヴルタヴァ川の流れを表現した交響詩「モルダウ(ヴルタヴァ)」に、民族独立の思いを込めたと言われる。
第一次世界大戦を経て、オーストリア帝国は崩壊。チェコスロヴァキアも独立を果たすが、それはつかの間の自由だった。1938年9月のミュンヘン会談を経て国土は解体され、ヒトラー率いるナチス・ドイツの実質的な支配下に。そして第二次世界大戦へと、苦難の歴史はさらに続いた。