ゴールデンでも大健闘! “ナスD”が示したテレビの可能性【記者コラム】
ゴールデンタイムでも“ナスD”は面白かった。ひょんなことから顔が黒紫色になった“ナスD”こと友寄隆英ディレクターの活躍が熱狂的な支持を集めている深夜番組『陸海空こんな時間に地球征服するなんて』(毎週火曜 後11:15)の特番が、2日の午後6時30分から2時間半にわたって放送された。特番前のレギュラー放送では、気絶した状態のナスDが映し出されたところで終了。やきもきする視聴者の心を特番でスカッと晴らしてくれた。
地球上に100以上あるという、文明と接触がない部族のもとに潜入する同番組の人気コーナー「部族アース」。現地の部族から勧められたものは何でも試す友寄Dは、美容効果があると言われた「ウィト」という果実を全身に塗ると、じわじわと顔や肌がナスのように青紫に変色。入れ墨用に使うものだと知らされるも、あとの祭り。以降は、やることなすことすべてが面白い友寄Dは一気に同番組の目玉となり「破天荒ナスD」の愛称で親しまれるようになる。
この日の放送では、ジャングルの密集船でアマゾン川へと向かう最中、4日間不眠不休で働いていたナスDが到着するなり気絶。現地ガイドが「笑い事じゃないからね。命を懸けて助ける」と必死に看病を続ける中、画面は翌朝へと切り替わると…そこには絶好調のナスDの姿が。気絶していた時のことを全く覚えていないナスDが、当時の映像を眺めると「カットすればいい」と親指を立てながらきっぱり。その潔さに大笑いしながら「この勢いが番組の面白さにつながっているのだ」と妙に納得させられた。
ここまで書いてきたが「部族アース」の本来の主役は、お笑いコンビ・U字工事(福田薫、益子卓郎)の2人。番組が始まって約30分後、初めて2人の冒険の様子が映し出されると「やっとU字工事の出番w」というネット上でも愛あるイジりが。それでも、戦闘民族のカンドシ部族に密着し、その暮らしぶりを視聴者目線でしっかりと伝えていった。その一方、ナスDは“対観光者”向けの側面が強いボラ部族に潜入し、その光と影が生々しく放映された。
他局のラインナップを眺めてみると日本テレビの『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』、NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』というレギュラー番組に加えて、TBSは特番『KUNOICHI2017夏』を放送。さらに、この日は任期満了に伴う東京都議会議員選挙の投開票日。フジテレビは『Mr.サンデー』の特番、テレビ東京は毎回話題を呼ぶ選挙特番『池上彰の都議選ライブ』という強力な布陣が並んだ。そんな中、同番組の視聴率は平均9.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と堂々たる結果だった。
なぜ“ナスD”はここまで熱い人気を獲得できたのだろうか。ここで、昨年放送40周年を迎えた同局の人気トーク番組『徹子の部屋』のメイン司会者である黒柳徹子の自伝的エッセイを原作としたドラマ『トットてれび』(NHK総合)で“テレビ”について語られた一場面を紹介したい。昨年5月7日放送の第2話、NHKに入局したての黒柳が、アメリカから日本にテレビの魅力を伝えにやってきた人物の講義を聞いていた時のワンシーンである。
「テレビジョンのテレとは遠い距離、ビジョンとは見ること。これからは世界の果てで行われる結婚式や戦争、何もかもがテレビジョンによって見ることができるようになるでしょう。テレビは一番大きなメディアになります。世の中を良くするのも悪くするのもテレビにかかっています。テレビが永久的な平和をもたらしてくれると信じています。そんなテレビの無限大の可能性を引き出すのは放送に携わる皆さんです」。
テレビの“原点”に立ち返って「世界の果てで行われること」を意図的な編集を加えずにしっかりと伝える。彗星のごとく現れた“ナスD”とU字工事の勇姿を眺めながら、テレビの可能性を思う。11日深夜放送のレギュラー回では「閲覧注意 大アマゾンSP 本当はここまでやっていた」編と題して、ゴールデンは泣く泣くカットした衝撃映像の数々を一挙公開。まだまだ、ナスD(とU字工事)の快進撃は続く。