大坂なおみさんを描く少女漫画で「肌の色に注意を払うのは当然のこと」。『なかよし』編集部が明かす

姉の大坂まりが監修を手がけた「アンライバルド NAOMI天下一」の連載が、月刊誌「なかよし」で始まります。
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大坂なおみさん(左)と、「アンライバルド NAOMI天下一」に登場するナオミ(右)
Getty - Futago Kamikita,Tama Mizuno/KODANSHA

プロテニス選手の大坂なおみさんが主人公として描かれる少女漫画の連載が、12月28日からスタートする。大坂さんの姉が監修し、肌の色についてアドバイスした。

漫画が掲載される月刊誌「なかよし」の編集部は、大坂なおみさんが「ご自分の肌の色を隠したり偽ったりすることを望みません」とした上で、「肌の色に注意を払うのは当然のこと」とハフポスト日本版の取材に答えた。

 

■「実際に印刷されたサンプルを元にご相談しました」

漫画のタイトルは「アンライバルド NAOMI天下一」。連載は12月28日発売の「なかよし」2月号から始まる。主人公のナオミが、宇宙を舞台に活躍。「天下一のスペーステニス・プレイヤーを目指して熱い戦いをくり広げる内容だ。漫画を担当するのは、人気アニメ「プリキュアシリーズ」の漫画版を16年以上手がける上北ふたごさん。

大坂さんの姉で、テニス選手でイラストレーターでもある大坂まりさんが監修した。

大坂まりさんはニューヨーク・タイムズのインタビューで、この漫画について言及。なかよし編集部が、ナオミの肌の色について「とても気をつけていた」と話していた。編集部から「肌のトーンを正確に表現しないといけません。何パーセントくらい暗くすればいいでしょうか」などと、まりさんに相談があったと明かした。

なかよし編集部も、こうしたやり取りがあったことを認めた。「カラーの場合の肌の色味や、モノクロの場合の肌のトーンの見え方について、実際に印刷されたサンプルを元にご相談しました」と振り返った。その上で、肌の色に注意した理由を以下のように説明した。

「なおみさんやまりさんは、ご自分の肌の色を隠したり偽ったりすることを望みません。私たちは彼女たちが誇りを持って行動する姿を、漫画の作品として表現したいと考えました。ですので、肌の色に注意を払うのは当然のことです」

大坂なおみさんの肌の色の描き方をめぐっては、2019年1月に騒動が起きたことがあった。スポンサーを務める日清食品ホールディングスが「カップヌードル」のPR動画の中でアニメキャラとして描いたが、「肌の色が実際よりも白い」として、国内外で議論になった。

黒人などマイノリティの肌の色を明るく修正することは「ホワイトウォッシュ」と呼ばれ、差別的な表現として知られている。日清は「当初の目的とは大きく異なる状況になった」として、公開中止していた

 

■なかよし編集部の一問一答

 

――大坂なおみ選手が登場する漫画を連載することになったのは、どんな理由からでしょうか?

編集部では2018年冬ごろ、2020年の東京オリンピック開催に合わせて大坂なおみさんを主人公にした漫画の企画を模索していました。ちょうどその頃、なおみさんサイドからも、ご本人が漫画化をご希望されているというお話を聞き、この企画をご提案しました。

――監修を大坂なおみ選手の姉の大坂まりさんにお願いした理由は?

なおみさんのことを勉強しているうちに、姉のまりさんも、大変日本の漫画がお好きで詳しく、イラストやデザインを出がけられたり…とアーティスティックな活動をされていることを知りお願いいたしました。

――ニューヨーク・タイムズのインタビューの中で、大坂まりさんが述べたような肌の色に関するやりとりは、こうしたやり取りは実際にあったのでしょうか?

カラーの場合の肌の色味や、モノクロの場合の肌のトーンの見え方について、実際に印刷されたサンプルを元にご相談しました。

――肌の色について細心の注意を払った理由はなんでしょうか?

なおみさんやまりさんは、ご自分の肌の色を隠したり偽ったりすることを望みません。私たちは彼女たちが誇りを持って行動する姿を、漫画の作品として表現したいと考えました。

ですので、肌の色に注意を払うのは当然のことです。また、まりさんがNYタイムズに話してくださった編集部とのやり取りは、打ち合わせの内容のごく一部ですので、そのことをご理解いただけましたら幸いです。

私たちは肌の色だけを気を付けたわけではありません。なおみさんの内面のかっこよさ、愛らしい性格もナオミというキャラクターに漫画らしく投影したいと思い、細心の注意を払ってキャラクターを作り上げていきました。

主人公のナオミは、まりさんとの綿密な取材を重ねて、なおみさんの生きる姿勢を通じて誕生したキャラクターです。私たちはそのキャラクターを、漫画の中で生き生きと躍動させたいと思っています。

――今回の作品が地球ではなく宇宙が舞台になっているのは、どんな理由からでしょう?

「なかよし」は小学生の少女が主な読者層です。魔法を使うヒロインや、時空を飛び越えたり、超人的な力を持つヒロインのストーリーに人気があります。

さらに、この作品の設定を考えるにあたり、なおみさんやまりさんがアクション多めの少年漫画テイストがとてもお好きだとわかり、主人公のナオミがダイナミックに、そして奇想天外に活躍するイメージが湧きました。

彼女が架空の空間で架空の派手な技を思いっきり使って戦う姿は、「なかよし」にとっても新しくて魅力的なキャラクターとストーリーになるのではないかと思い、舞台を宇宙にし、登場人物たちを宇宙人にしました。

 

――今回の漫画は宇宙を舞台にしているとのことですが、たとえば宇宙での「差別問題」などは描かれるのでしょうか?

ストーリーについては発売前ですので、詳しくはお答えできませんが、作品の舞台は宇宙です。だからこそ、私たちはそこに登場するキャラクターの多様性を自由に表現できるのではないか、と考えています。差別が絶対に許されないのはもちろんです。私たちの雑誌名「なかよし」には「みんなと仲良くする」という意味があります。主人公のナオミは「宇宙全体が”なかよし”でいられるように」スペース・テニスで戦い続けます。彼女の物語を通して、読者の少女たちがそれぞれに感じて考えてくださると嬉しいです。

(取材・執筆:ハフポスト日本版・安藤健二)