南海トラフ巨大地震の対策を検討していた国の有識者会議は28日、地震予知が現状では困難だとする最終報告書をまとめた…
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時事通信社

南海トラフ巨大地震の対策を検討していた国の有識者会議は28日、地震予知が現状では困難だとする最終報告書をまとめた。朝日新聞デジタルは以下のように報じている。

 南海トラフ巨大地震の対策を検討していた国の有識者会議は28日、地震予知が現状では困難だと認め、備えの重要性を指摘する最終報告書をまとめた。家庭用備蓄を「1週間分以上」とすることや巨大津波への対応を求めている。古屋圭司・防災相は今年度中に国の対策大綱をまとめる方針を示した。

南海トラフ巨大地震は、静岡県の駿河湾から九州東方沖まで続く、深さ約4千メートルの海底のくぼみ「南海トラフ」で想定される地震。トラフ沿いの太平洋沿岸を強い揺れと津波が襲い、最悪の場合、死者が約32万人に上ると見積もられている。

 地震予知の可能性について、有識者会議は地震学者6人による下部組織で議論。「現在の科学的知見からは(地震直前の)確度の高い予測(=予知)は難しい」との下部組織の見解を報告書に引く形で、限界を認めた。

(朝日新聞デジタル 「南海トラフ「予知困難」 有識者会議、備蓄の重要性強調」より。 2013/5/28 20:16)

世界的にも、地震の予知をめぐっては「不可能」「意味がない」などとする専門家は多い。地震の前兆を正確、かつ確実に予測できた例は世界を見渡してもほとんどないためだ。だが地震大国・日本では、少なくとも2011年に「3.11」が起きるまでは、東海地震に対して、国を挙げて予知を前提とした防災体制が敷かれてきた。朝日新聞デジタルによれば、東海地震対策は以下のようなものだ。

 東海地震対策は『明日起きても不思議はない』との学説を受けて、政府が1978年に大規模地震対策特別措置法を設け、予知を前提とした防災体制をつくった。東海地方に設置した観測網を気象庁が24時間態勢で監視しており、地殻の異常な動きが観測され、地震学者で構成する判定会が「予知」すると、首相が「警戒宣言」を出す。

 これを受け、大きな被害が予想される「地震防災対策強化地域(強化地域)」では、新幹線が止まり、学校は授業を中止するなど社会や経済活動を制限して発生に備える。警戒中は、鉄道や工場の停止などで1日あたり実質1700億円の経済影響があると内閣府が試算している。

朝日新聞デジタル「予知前提 見直しへ」より。 2013/5/29)

そもそも地震予知は可能なのか。朝日新聞GLOBEは、特集「地震をつかむ」の中で「地震予知」について、以下のようにまとめている。

日本も海外と同様、「予知は難しい」という流れになっている。1995年の阪神大震災は、ほとんど警戒されていなかった野島断層で起きた。「予知に力を入れても、地震の被害は抑えられない」。そんな反省から地震予知推進本部は廃止され、幅広い研究を進めようと地震本部がつくられた。地震本部は、その後、全国の活断層や海溝型の地震について、過去の地震データなどをもとに規模や確率を予測してきた。これが、国や自治体の防災計画の前提になっている。

唯一の例外として残る東海地震の予知体制にも、疑問が浮かんでいる。東日本大震災で「前兆すべり」が確認されず、東海地震で同じ現象をつかめるのか不透明感が強まっているのだ。

(中略) 数百年に1度、1000年に1度という巨大地震をどうつかむのか。日本の地震研究は大きな曲がり角を迎えている。

(朝日新聞GLOBE『巨大地震どうつかむ。世界と日本の「流儀」』より。 2012/6/1)

不確かな「予知」をあてにするより、最悪の事態を想定して備えよ――。東日本大震災は、日本人にそんな教訓を突きつけた。今回の有識者会議の最終報告書は、この点を最も強調したかったのではないか。ちなみに、東海地震の予知をするために、国内には2億円分の計器が設置されているという。