「なんでも鑑定団」国宝級茶碗で真贋論争 テレ東に根拠を尋ねてみたら...

真贋をめぐって様々な意見が出ている。
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2016年12月20日に放送されたテレビ東京系「開運!なんでも鑑定団」で、世界に3点しかないとされる「曜変天目茶碗」が新たに見つかったとされた。この国宝級の発見は、共同通信など複数のメディアで報じられたが、その真贋をめぐり様々な意見が出ている。

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「開運!なんでも鑑定団」の番組内で「曜変天目」と鑑定された茶碗(テレビ東京の画面より)

この茶碗は、徳島県徳島市の支那そば店経営の男性が同番組に鑑定を依頼。大工だった男性の曽祖父が、戦国武将・三好長慶の子孫の武家屋敷の工事を請け負った際に譲り受けたという。

番組での評価額は2500万円で、古美術鑑定家の中島誠之助氏は以下のように語った。

「開運!なんでも鑑定団」始まって以来の発見。12世紀から13世紀、中国の南宋時代に福建省の建窯(けんよう)で焼かれた「曜変天目」に間違いございません。日本にもたらされた茶碗は数あるが、曜変はたった3点。その全てが国宝。これが出たことによって4点目が確認された。

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中島誠之助氏(「開運!なんでも鑑定団」公式サイト)

鑑定については、同番組公式サイトも「鑑定士総評」として、以下のように掲載している。

漆黒の地肌に青みを帯びた虹のような虹彩がむらむらと湧き上がっており、まるで宇宙の星雲をみるよう。鉄分をかなり多く含んだ土を焼き締めてあるので石のように硬い。それを丁寧に真ん丸に削り出した蛇の目高台。これは国宝「稲葉天目」の高台とほぼ同じ。高台の真ん中に「供御」という二文字が彫ってあるが、これはかつては天皇や上皇に差し上げる食事のための容器であったことを表した。

ところが時代が下り、室町時代になると将軍が使うものにも「供御」と彫るようになった。裂や曲げ物の容器、そして三好家の系図がついているが、これらによって室町幕府第13代将軍足利義輝を頂いて権勢を奮った三好長慶が、足利家から取得した東山御物の一碗であることは間違いない。

もしこの茶碗が信長・秀吉・家康が所有し、さらに現代に伝わったものであれば国宝になっていたかもしれない。

天目茶碗|開運!なんでも鑑定団|テレビ東京より)

コトバンクなどによると、曜変天目茶碗は南宋時代(12〜13世紀)の中国・福建省の建窯(現在の建陽市)で焼かれた天目茶碗のうち、七色に輝き変化する斑文を特徴とするもの。その定義は必ずしも一定ではないが、室町時代の書物『君臺観左右帳記(くんだいかんそうちょうき)』において「世上になき物也」と、茶碗の最高峰として位置づけられ、その製法は長年にわたって謎とされている。

中国・福建省建陽市

2009年に中国で発見されたものを含め、曜変天目茶碗は世界に4点しかないとされ、うち3つが大徳寺龍光院(京都府)、藤田美術館(大阪府)静嘉堂文庫美術館(東京都)に所蔵されており、いずれも国宝。

■本物?偽物?様々な意見

インターネット上では「これはすごい」と発見を喜ぶ声の一方、「C級レベルの贋物相当」「どう見ても模様の出方が違う」という声が出ている。

三好一族に詳しい四国大の須藤茂樹准教授(日本中近世史)は徳島新聞の取材に対し、「長慶が積極的に茶を好んだという資料はない」と指摘した上で「今回の発見は興味深い内容だ。今後精査する必要があるだろう」としている。

また、12月22日にTBSラジオ「荒川強啓デイ・キャッチ 」に出演した評論家の山田五郎氏は、「私も陶磁器は丸っきりの素人ですし、テレビの画面を通してしか見ていないので、専門家の先生が現物を見て真作と鑑定されたこと自体に異議を唱える資格も知識もなければそのつもりもない」とした上で、「素人目に見ても、まず第一にパッと見、曜変に見えない」「白いモヤがかかっているように見える。本物は深い虹色になる」「照りとか質感も違って見える」と疑問点を列挙した。

三好長慶の伝来とする由来について山田氏は、「三好長慶の直系は途切れている。傍流の子孫につながったとしても経緯が謎。それほどの大名品だったら当時から有名だったはず。信長や秀吉が欲しがったはず」と述べた。

また鑑定金額について山田氏は、「本物だったら、ゼロの数が2桁違う。大阪の藤田美術館の曜変天目を、大正時代に藤田平太郎が購入した時の値段は当時で5万3800円で今の値段だと4〜5億。それが2500万円というところに、中島誠之助先生の迷いというか良心を感じた」と評した。

■「曜変天目」とした根拠をテレビ東京に問い合わせてみた

骨董品の真贋は素人はもとより、専門家でも難解な世界。いくつかの美術館や古美術商にも問い合わせたが、いずれも「実物を見ていない以上何とも…」という回答だった。

本物であれば国宝級の発見。「開運!なんでも鑑定団」は依頼品の茶碗を、どのような根拠で「曜変天目」と断定したのだろうか。ハフィントンポストでは、鑑定の根拠などについてテレビ東京にメールで問い合わせた。質問内容は以下のとおり。

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(1)依頼品を、国宝と同様の「曜変天目」だと鑑定した理由・根拠について。

(2)番組側が考える「曜変」の定義について。

(3)今回の依頼品と、他の茶碗(油滴天目など)との差について。

(4)「三好長慶には、親族を含めて曜変天目を受け継ぐ機会があった家系はないのでは」という指摘があることについて。

(5)今後、国や専門の機関で、もしくは番組内で、検証や鑑定を実施する予定はあるか。

(6)2500万円という評価額は、国宝級にしては安価という声も出ている。なぜ2500万円なのか、その具体的な根拠について。

(7)「個人所蔵なので、億単位の価値付けると依頼主側に相続税が発生してしまうため、表向きは非課税限度の2500万円にしたのでは」という声があるが、2500万円と評価した背景と関係あるか。

(8)「曜変天目」だという鑑定結果について。あくまで中島誠之助氏の評価として放送したのか。テレビ東京として鑑定内容に責任をもって放送されたのでしょうか。

(9)今回および通常時の番組における鑑定方法について、

 (a)鑑定士の方が個人で決めるのか。

 (b)何らかの合理性で決めるのか。

 (c)番組中に鑑定士の方が、虫眼鏡のような物を使用して品物を吟味するなどの様子が流れるが、演出になるのか。また、スタジオで鑑定をしているのか。

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これに対し、テレビ東京広報部からは以下の回答が寄せられた。

鑑定結果は番組独自の見解に基づくものです。

また、番組の制作過程については従前よりお答えしておりません。

※ハフィントンポストでは、今回鑑定された「曜変天目茶碗」に関する情報を募集しています。情報をお寄せいただける方は、news@huffingtonpost.jpまでお知らせ下さい。