日本各地で「若者会議」と呼ばれる地域を共通項にした場づくりが行われています。8月29日(土)には、名古屋で「第4回名古屋わかもの会議」が行われました。
既に地域へ課題意識を持ち活動を行う人もいれば、友達に偶然誘われてきた人もいる場。熱量や知識、モチベーションの異なる者たちが出会い、地域の魅力を探し求めていく場は非常に魅力的です。
こういった取り組みが、1回きりではなく、半年、1年の定期的なペースで継続して催されることで、活動に対する熱量は持続され、過去と現在の間におきた自身の変化にも気づくことができます。
8月29日(土)には、名古屋で「第4回名古屋わかもの会議」が行われました。
中部地方の中枢、名古屋市
東京23区を除くと、横浜・大阪に次ぐ人口を有する都市である「名古屋」は、中部地方の政治・経済・文化・交通の中枢となっており、食文化や歴史など古くから残る地域資源も、地元住民と観光客の両方から楽しまれています。
愛知万博やCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)といった世界的会議やイベントの開催実績から、受け入れのノウハウや、国内外からのアクセスも優れています。
しかし、大きな都市特有の課題として、名古屋の魅力を他者に対して端的に説明することは難しく、外部への発信力は名古屋の課題になっています。
その名古屋・愛知を舞台に地域や社会問題について考え、発信するための場づくりが行われているのです。
「若者会議」の走り、「名古屋わかもの会議」
「名古屋わかもの会議」は、「愛知・名古屋をわかものから盛り上げる」をコンセプトに愛知県を中心に高校生から大学生約20人で構成され、「愛知・名古屋」という地域性を重視しながら、社会問題、地域のことを考える場を構成することで、次世代を担う若者に当事者意識を持つきっかけを提供しています。
毎回、全国から約100人が参加し、「愛知・名古屋のこれからの可能性」をもとに「防災」、「観光」、「環境」、「ビジネス」などの分科会に分かれてディスカッションが行われ、その内容を政治家や行政の方に発信し、若者の意見や想いを反映させようとしています。
第3回は名古屋港、第4回は航空自衛隊小牧基地で開催され、名古屋が持つ地域の魅力を学ぶフィールドスタディーや様々なテーマに分かれたディスカッションなど、回が進行するたびに軌道修正を加えながら、参加者の多様な興味に合わせて場づくりが行われているようです。
「名古屋わかもの会議」を起因とする東海地方の盛り上がり
これまで2年に渡り継続して行われてきた「名古屋わかもの会議」は東海圏内の学生の受け皿として重要な役割を果たしており、多様な活動を行う学生と学生とを結び付け、新たな行動を起こす契機となっています。
岐阜で行われている「岐阜わかもの会議」も「名古屋わかもの会議」の影響を受けて行われており、その他にも学生と社会人、学生と行政が結びついて活動が生まれている事例もあるようです。
岐阜県美濃加茂市でも「名古屋わかもの会議」と連携した新たな動きが広がっています。
継続して人と人を繋いでいく重要性、岐阜県美濃加茂市・藤井浩人市長インタビュー
―藤井市長自身は「名古屋わかもの会議」にどういったことを期待されていますか?
藤井市長:「大人が期待する以上のものを出してもらいたいですね。学生の若い発想にしか出ないものを、僕たちもしっかりと受け止めて行きたいなと思います。」
―美濃加茂市でもこういった動きはあるのでしょうか。
藤井市長:「美濃加茂市も、私が就任してから若い職員を中心に、高校生に興味をもってもらい、政策提言をしてほしいという話はしていて、実際に取り組みを行っています。
美濃加茂には、高校が3つあるのですが、高校生を対象とした、若い職員と高校生が社会のことや自分の招来について一緒になって考える会も毎月開催しています。」
―これから「地域」で求められていくことは何でしょうか。
藤井市長:「地方の弱点は、若い人たちの視野を広げるきっかけが少ないことだと思うので、ネットワークを生かしながら、若い人たちの視野を広げていきたいですね。『地方』に焦点を当てられることも増えましたが、どの『地域』も「人」があって、さまざまな動きが生まれていく。人と人を繋げ、小さくともしっかりとしたものを継続して残していければと思います。」
現場と若者の化学反応、第4回名古屋わかもの会議
「第4回名古屋わかもの会議」では、まず参加者が希望する分野のフィールドワーク。各テーマのフロントランナーによるトークが行われ、興味を持ったテーマに対する視野を広めていきました。
その後の分科会では、テーマに合わせて名古屋という場所で何ができるのか話し合い、「名古屋わかもの会議」運営メンバーの引き出しのもと、まとめていったようです。
「観光」について考えるグループでは、名古屋の食文化や名古屋おもてなし武将隊など現在人気を集める資源を重ね合わせ、放任外国人向けに「体験」をメインにしたプログラムを提供する案が出されるなど、グループによってさまざまなアイデアが提案されました。
どのグループも、既に名古屋にある資源に新たな活用法を加えて発信させていこうと考えているのが印象的だったように思います。
若者の発表に名古屋が代表する社会人が講評、ポスターセッション
グループでのディスカッション終了後は、短く時間を区切ったプレゼン発表が行われました。
審査員には、名古屋を代表する企業や行政の人々が集まり、学生たちのプレゼンに対して、それぞれの立場から実践的な意見が出され、学生たちは社会で求められるサービスや視点を学ぶことが出来たようです。
プレゼン終了後には、審査員を務めた企業や行政の方々がそれぞれ選ぶ表彰式も行われ、選ばれたグループのメンバーには、景品としてインターンシップ体験の権利や、海外旅行券など、学生の今後を支える賞品が授与されました。
「名古屋わかもの会議」を主導する創設者と代表の想い
これまで第1回から第3回まで、「名古屋わかもの会議」の代表を務めてきたのは法政大学3年の水野翔太さんでしたが、第3回終了後に高校生のときから実行委員を務めてきた仲井達哉さんに受け継がれました。
創設者、そして新代表として新たな立ち位置から「名古屋わかもの会議」を主導していった2人。どんな想いをもって活動されてきたのでしょうか。
託されたバトンの重み、「名古屋わかもの会議」現代表仲井達哉さん
―「第4回名古屋わかもの会議」の開催をするにあたり、これまでとは違う点はありますか?
仲井:「ディスカッションの時間を増やし、より自由な発想が出るように心掛けました。分科会ごとの中間発表を取り入れることで、プレゼンする内容に到った過程であったり、審査員や参加者からの質疑応答であったり、具体的なアイデアに深めていけるような構成にしました。」
―実際、場の反応はいかがですか?
仲井:「1度グループのなかで方向性が決まったとしても、白紙に戻して対話し直すグループも多く見られました。長く時間を取ったことで、より柔軟に名古屋について考えられる場になったと思います。」
―第3回終了後から、「名古屋わかもの会議」の代表を受け継ぎましたが、第4回を開催するまで、どういった気持ちで臨まれましたか?
仲井:「運営メンバーと代表では、責任の大きさが全く異なっていました。メンバーに仕事の割り振りを行い、チームプレーを意識してやってきましたが、責任をひしひしと感じながらのここまで、本当にあっという間でしたね。」
世代交代を通して次世代の存在を示す、「名古屋わかもの会議」創設者水野翔太さん
水野:「これまでの名古屋近辺での参加とは異なり、名古屋から1時間ほどかかる「小牧」での開催でしたが、70人ほどの学生が参加して頂きました。
前回は午前中フィールドワークを通した学びを入れていましたが、今回は各フィールドのフロントランナーの方々に各テーマに基づいたお話をしてもらって、その後ディスカッションとポスターセッションを行うという流れで進んでいます。」
―水野さん自身の役割も変わり、これまでとは違う動きが求められているかと思うのですが、いかがですか?
水野:「審査員や社会人の方々への対応を行っていますが、基本自由に動いていますね。歯がゆさを感じる場面や、運営に関して伝えたいこともあるのですが、そこは現在代表を務めている仲井に任せています。
運営メンバーも変わりながら、継続して『名古屋わかもの会議』が行われることで、名古屋に次の世代が揃っているという証明になればと思います。」
―「名古屋わかもの会議」の参加を通して、参加者のどういった動きに繋げていきたいですか?
水野:「各個人が成長していくことですね。それは参加者、実行委員関係なく『名古屋わかもの会議』に関わっていただいた方々が参加を通して、成長するきっかけを生み出していけたらと思います。継続して3回開催し、今回で4回目の開催になりましたが、今後も継続してそんな場を作っていきたいですね。」
異なる価値観を持つ人々が混ざり合って生まれる地域の魅力
「名古屋わかもの会議」のように、若者に対して好奇心の種を提供し、視野を広げるきっかけとなる場を構成することは、非常に有意義なものだと感じます。
場が継続して開かれることで、以前は単なる参加者だった人が、イベントの進展とともに、実行委員となり新たな参加者をサポートする側に回ったり、成長した自分の姿に気づいたりすることもできるはずです。
日頃、1つの物事に関心を持ち、活動を積極的に行う人たちにとっても、異なる領域での活動を行う人々と、同じ共通項に対して価値観を共有することは、これまでにない発想を生み出し、活動の幅を広がるきっかけとなると思います。
都市が持つさまざまな地域資源のなかで、自分自身が深めていきたいものは何なのか。同じように地域で暮らす人たちと対話を重ねるなかで、考えてみるのはいかがでしょうか。
(2015年9月3日の「マチノコト」より転載)