戦後70年 悲劇の記憶を語り継ぐ ~長崎~

戦後70年、今、次世代に何を継承していかなければならないのか。長崎の「語り部」和田耕一さんのお話と、連合長崎から寄せられた平和への思いについてメッセージを紹介。
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3弾:長崎からのメッセージ

連合は毎年6月から9月を「平和行動月間」と位置づけて、沖縄・広島・長崎・北海道(根室)にて「平和4行動」を展開し、日本全国からの参加を呼び掛けている。

戦後70年を迎え、今、次世代に何を継承していかなければならないのか。

第1弾の沖縄第2弾の広島に続き、長崎の「語り部」和田耕一さんのお話と、連合長崎から寄せられた平和への思いについてメッセージをご紹介します。

原爆投下のその時 〜長崎〜

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和田耕一さん 17歳の時、「学生班」として長崎の市内電車に勤務。8月9日電車を運転中、爆心地から2㎞の所で被爆。

「学生班」の仲間たちが犠牲に

私は商業を学ぶ学生でしたが、あの当時は学生も勤労動員されたんです。私は最初は造船所で働いていたんですが、後に市内電車の勤務へ移りました。市内電車は当時唯一の交通手段でしたが、戦争が激しくなると運転手が兵役にとられて人手が足りなくなっていき、それをカバーするために、当時17歳だった私を含めて男女60人の学生が長崎の市内電車の勤務に移ることになったんです。運転手になった学生で、一番若い方は14歳でした。

運転手の仕事は、かなり過酷でした。ほとんど立ったまま、始発5時30分から夜中12時30分まで、19時間勤務もこなしました。「班長、お前やってみろ」と言われ、子ども心に悲壮な覚悟を決めました。

8月9日、平常運転をしていたら爆心地から1㎞以内を運転していたことが後でわかりました。でも、その日は、8時ごろ、市内の中心部で脱線事故が起きて電車が遅れていた。だから私は助かったんです。11時少し前、終点の蛍茶屋営業所に戻り、同僚たちと話をしていた時、強烈な閃光と爆風を感じました。私は崩れた建物の下敷きとなりましたが、同僚たちに引き出されました。外傷はなかったので、救援救護活動に取り組み、多くの人びとを救護所に運びました。その中でも、亡くなった同僚の「僕は何もしとらん」という最後の言葉が忘れられません。

戦後、被爆したホームの縁石で、追悼電鐵原爆殉難者の碑を建立しました。少し色が変わっているのは、放射能を受けたからです。

このあたりには他にも慰霊碑がありますが、被爆した石を使った慰霊碑は、これが唯一のものなんです。

多くの人びとの痛恨の魂をしっかり受けとめ、戦争と核兵器を廃絶し、ゆるぎない平和を実現しなければなりません。そして、この思いを子どもたちや孫たちの世代へと、しっかりとつなげていってほしい。心からそう願っています。

~「平和4行動」連合長崎からのメッセージ~

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宮崎辰弥 連合長崎 事務局長

同じ過ちを繰り返さないために

 連合長崎は「核兵器廃絶」の声を国内外に発信していくことを強く意識して取り組んできた。具体的には、長崎に原子爆弾が投下された8月9日を中心とした「平和行動in長崎」と、地協による街宣行動、職場での黙祷、「平和の鐘(サイレンなど)」を鳴らす取り組みなどだ。また、戦後70年が経過する中、「次世代への継承」と「新たな平和運動の構築」も運動の柱に置いている。 私たちの日常生活の中で平和を意識することは多くない。若い世代の中には、日本が戦争をしていたことや、広島・長崎に原爆が投下されたことを知らない人もいると聞くが、戦争の記憶を風化させてはいけない。平和行動に参加することで「二度と同じ過ちを繰り返さない」という思いを再認識し、将来にわたって平和な社会を守るために、私たち一人ひとりにできることをお互いに考えるきっかけづくりにつなげていきたい。

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多くの市民を巻き込んだ運動へ

恐れているのは、戦争と被爆の記憶が時の経過とともに薄れ、「戦争は絶対にしない」「核兵器を廃絶する」という国民感情が後退していくことだ。そうしたことを背景にして、安倍政権が平和を後退させる動きを見せている。とても危険な兆候だ。

被爆70年の節目を迎えた。「平和運動」は労働組合の重要な取り組みの柱である。より踏み込んだ議論を通じて「一致点」を見いだし、それを積み上げながら具体的な行動を展開していくことが重要だ。そのためにも平和運動を労働組合だけの取り組みに終わらせることなく、より多くの市民を巻き込んだ運動とすることが重要だ。労働組合には、そのリード役としての役割を担うことが求められていると思う。連合に集うすべての組合員が一歩を踏み出せば、必ずや大きな力が生まれると信じている。

※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年6月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。「月刊連合」の定期購読や電子書籍での購読についてはこちらをご覧ください。