ミャンマー人の「働き方」3つの特徴;貧困地域の女性経営者に学ぶ

「仕事観」や「働き方」に特徴はあるだろうか。

ミャンマー人の国民性として、一般的にどのように言われているだろうか。

勤勉? 温厚? シャイ?

もちろん全ての人を一括りにすることはできないが、日頃ミャンマーの人々と接する中で、以上の傾向には納得できるものがある。

では、「仕事観」や「働き方」に特徴はあるだろうか。

これまでに、ミャンマーの貧困地域で小規模ビジネスを行う女性たちを30件以上訪問し、仕事や生活についての話を訊いてきた。

年齢層や生活環境、職種も様々な彼女たちへのインタビューから分かった、貧困地域に住むミャンマー人の「働き方」に関する3つの特徴をご紹介したい。

訪問先のお母さんの紹介

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インタビューをさせて頂いたのは、ミャンマー最大都市・ヤンゴンの郊外で小さな八百屋を営むお母さん。

建設現場で働く旦那さんと、飲料工場に勤める17歳の息子さんと3人で暮らしている。

現在の八百屋を開く前にも、いくつか違う仕事をしていたというお母さん。

お母さんの仕事に関するこれまでのエピソードを基に、ミャンマー人の「働き方」の特徴を探っていこう。

特徴①:溢れ出る起業家精神? 強い自営業志向

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お母さんにとって最初の職場は、まだ独身だった頃に、たまたま求人票で見つけた菓子工場。

元々工場で働きたかったの?と聞くと、お母さんは「とんでもない!」と強く首を横に振った。

「明確な夢があった訳じゃないけど、いつかは自分の店を持ちたいと思っていたわ。でも店を始めるための資金も無かったし、まずはお金を貯めるために就職したのよ。」

貧困地域に限らず、お母さんのように自営業を希望するミャンマー人は多い。

ヤンゴンの人材・コンサルティング会社J-SATが実施したオンライン調査(2015)によると、回答者の40%が自営業を希望していたという。

お母さんに理由を聞いてみると、「自営業の方が稼げるから。人の下で働くと、売上が全て自分のものにならないじゃない。」とのこと。

他の家庭では、「ボスに命令されるのが嫌だったから」「働く時間を自由に決められないから」などの返答があった。

自営業は「より自分のライフスタイルに合った仕事」「より早く利益が得られる仕事」と見なされているようだ。

▶︎ コラム:ミャンマーにおける就職情報の入手方法

ハローワークのような就労に関する行政サービスが不足しているミャンマー。人々はどのようにして就職情報を得ているのだろうか。

①人材紹介サービス

ローカル・外資系共に存在するが、展開しているのはほぼヤンゴンのみ。サービスの利用者は大卒以上が中心。

②就職情報誌・新聞の求職欄

いろいろな募集人材情報が掲載されている。挙げられる条件には、資格や語学力の他に、「噛みタバコをやらない人」といったミャンマーならではのものまである。

③Facebook

就職情報を共有・紹介するためのグループやページがあり、特に人気のあるグループには80万人以上のメンバーがいる。都市部の若者の利用者が多い。

④ビラ・掲示板

街中の電柱や木には、不定期に求人票が貼られている。塾や専門学校のコース紹介などの広告が貼られていることもある。

⑤口コミ・個人的な紹介

取材したお母さんの息子さんは、友人からの紹介で現在の就職先を知ったそうだ。地縁関係、血縁関係の強いミャンマーらしい方法で、郊外だけでなく都市部でも一般的。

特徴②:家族が第一!キャリアプラン×子どもの成長

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お母さんが働いていたダニエゴン市場。 息子さんの登下校に合わせて仕事の開始・終了時間を調整していたそうだ。 (ミャンマー、特にヤンゴン周辺では、子どもの登下校に付き添う親が多い。)

さて、自分の店を持つことを夢みつつ、資金を貯めるために工場に就職したお母さん。結婚し子宝に恵まれてからも、日々せっせと工場で働いていた。

そんな仕事熱心なお母さんが工場を退職したのは、息子さんが5歳の時。

学校に通い始めた息子さんの送り迎えをするため、時間の融通がきく、市場で野菜を売る仕事に切り替えた。

このように、ミャンマーの人々は家族を大事にする気持ちが強く、子どもの成長段階など家族の事情に合わせて簡単に仕事を変える傾向にある。

ちなみにお母さんの身の回りに専業主婦は少なく、多くの女性は働き方を工夫しながら、仕事と家事や育児を両立させているそうだ。

勤勉で働き者といわれるミャンマー人女性らしい傾向ではないだろうか。

特徴③:戦わずして勝つ!競合店との関係とは?

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お母さんが再び転職したのは、今から4年前。

マイクロファイナンスの少額融資を利用して、遂に夢だった自分の店を開いたのだ。

市場で働いていた経験を活かしてフルーツを売る店を始めたのかと思いきや、

「はじめはレストランを開こうとしたんだけどね、近くに同じような店があるから辞めちゃったの。」

とお母さんは笑いながら言った。

自営業者が多い地域には似たような店が増えてしまいがちだが、それぞれの店が経営を成り立たせているのは、お母さんのように周囲の店を観察しつつ、自分の店の商品を変更・調整しているからである。

つまり、こういうこと。

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「雑貨屋」を例に考えてみよう。

お菓子や飲み物から洗剤などの日用品まで何でも販売している雑貨屋は、ミャンマーの街中でよく見かける店のひとつ。同じ通りに似たような雑貨屋が数店舗並んでいることもざらにある。

しかし、同じ「雑貨屋」同士でも、ある店は菓子類を、他の店はそれぞれソフトドリンクや調味料を中心に売るなど、品揃えの特色が異なるのだ。

店によって品揃えが異なれば、顧客は買うものによって店を変える。

つまり、各店舗間で顧客の取り合いをする必要が無くなるのだ。

地縁関係が殊更に強い貧困地域では、店主と顧客の信頼関係が強く、一度固定された常連客はなかなか離れない。

だからこそ、お母さんはレストランを開いて他店と顧客獲得争いするのではなく、近隣にないようなフルーツを売る店を始めたのだった。

まとめ:ミャンマー人の働き方に関する3つの特徴

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改めて、お母さんの職歴と、そこから読み取れる働き方に関する3つの特徴を振り返ってみよう。

1. 自営業志向が強い。

2. 家族を大事に想う気持ちが強く、家族の事情に合わせて働き方・仕事を変える。

3. 競合店を観察することで品揃えを調整し、差別化を図る。

いずれの特徴も、貧困地域の働く女性たちに多く見られる傾向である。

しかし都市部では、近年の経済発展と並行して雇用環境や生活スタイルが変化しつつあり、仕事観や家族観も変わり始めている可能性がある。

生活環境がめまぐるしく変化するミャンマーで、今後人々の「働き方」はどのような影響を受けるのだろうか。

【おわりに】お母さんの今後のプランとは?

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最後にお母さんの今後の目標を聞いてみると、たくさんの答えが返ってきた。

「お店をもっと広くしたい」

「サトウキビのジュースを売る店を開きたい」

「より質の良い、色々な種類のフルーツを置きたい」

子育てが一段落した今、お母さんは店の拡大に意欲的だ。

「身体が動く限り働き続けたいわ。だって家にいたってつまらないじゃない!」

と明るく笑うお母さんの、今後のますますの活躍を願っている。

【参考】

Ambassadorのプロフィール

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私たちはミャンマーでマイクロファイナンスによる貧困削減をITで支援しています。農村やスラムに暮らす人々が、どのような生活をおくり、何を感じているのか。どのようなビジネスをしているのか。ニュースや統計データからは感じることができない、ミャンマーに生きる人々のリアルな姿をお届けします。