息子の「失礼な態度」はわざとではありません。自閉症のある子どもの親が知ってほしいこと

客室乗務員は私を睨みつけて「なんて失礼な態度なんでしょう」と言った
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CAVAN IMAGES VIA GETTY IMAGES

その日私たちは、ロンドン・ヒースロー空港からジョン・F・ケネディ国際空港に向かう、アメリカン航空の飛行機に乗っていた。

パックされた機内食がフリスビーのように次々と配られた後、客室乗務員が息子のランに、飲み物のおかわりは要らないか尋ねた。機内のゲーム機でテトリスに夢中になっていたランは、客室乗務員に目を向けず、返事もしなかった。

私は二人のやり取りをほとんど見ていなかったが、客室乗務員は私を睨みつけて「なんて失礼な態度なんでしょう」と言った。

そこで私は、息子が不注意で誰かを不愉快にさせた時に使うお決まりの文句で彼女に説明した。

「息子は自閉症なんです。私たちは彼を、できる限り理解するようにしています」

息子はアスペルガー症候群を持っている。彼の自閉症の症状は比較的軽いが、周りの人とのコミュニケーションが難しい場合がある。例えばこの時のように、ゲームやiPhoneのアプリに集中していると返事に時間がかかる。

それ以外の時は、強迫性障害やチックの症状が他の人を不快な気持ちにさせたり、他人に対してぶっきらぼうな態度をとってしまうこともある。人間というのは、色々な方法で他人を怒らせられるんだと私は学んだ。

見た目や特徴で、ランに自閉症があるとわかりにくい。そのため、息子に気分を害された人たちは、私が説明するまでランを「しつけのなってない子供」と考える。

そこで私は、お決まりの文句で説明するのだ。しかしアメリカン航空の客室乗務員は、私の説明で納得してくれなかった。

「それならなぜ、あなたが彼の代わりに返事をしなかったんですか」と彼女は説明を求めた。それで私は「あなたに気がつかなかった」と答えた。

すると今度は息子の隣に座っていた夫をにらみつけて「なぜお父さんは、何も言わなかったんでしょう」と聞いた。

私は「私たちは、できる限りのことをやっているんです」と答えた。

さらに私たちを非難する客室乗務員に、私は「私たちはできる限りのことをやっています」と繰り返した。

自分の何が悪かったのかわからないまま、ランはなんどもなんども謝った。何か一つが、相手に届いて欲しいと願いながら。「ごめんなさい、間違ったことを言ってしまいました!あーーーーごめんなさい、自閉症をコントロールできるようにします!」

客室乗務員が飛行機の後方に去った後、私は顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。夫と上の子に挟まれた席で動けなかったので、トイレまで行って心を鎮めることができなかった。

どんな親も、自分の子育てを公の場で非難されたり、自分の子供を馬鹿にされたくはない。だけど私が涙をこらえきれなかったのは単に非難されたからではなく、息子がそこまで責められるほど、ひどいことをしたと思えなかったからだ。

あの日は、客室乗務員にとってたまたま機嫌が悪い日だったのかもしれない。航空会社が社員を働かせすぎて、社員の接客トレーニングをきちんとできていないのかもしれない。つい最近も、アメリカン航空に乗ったテキサス州の医者が、服装を原因に搭乗拒否されることがあって問題になった

しかしこれは私たちにとって、珍しいことではない。

私が息子の自閉症についてお決まりの文句を準備しているのには、理由がある。絶えず知らない人たちから、息子の強迫性障害やチック、そして言葉使いを批判されるからだ。

自閉症の障害のほとんどは、目に見えにくい。自閉症の症状の中には、わかりやすいものもある。手を叩いていたり、大人からの手助けが常に必要な自閉症の子どももいる。

しかし息子の場合は、ソーシャルスキルが問題で、はっきりものを言いすぎたり、落ち着かなかったり、こだわりが強かったりする。それは外からは見えにくい。

息子は何年もセラピーに通い続け、私が見守り続けているが、コミュニケーションの失敗は尽きない。自分がどんな障害を持っているのかを紙に書いて掲げて生きているわけではないので、彼のことを知らない人は思い込みで彼を判断し、彼と私たちの親を批判する。

それは、教会でも同じだ。

何年か前、まだランが6歳か7歳の頃、神父がお香を持って席の横を通ったことがある。その時ランは鼻を覆って、「キリストって臭い!」と叫んだ。周りの人たちは、眉をひそめた。

いろいろな分野の多様性が、世の中で理解されるようになっていると思う。しかし、神経系の障害の多様性は、まだまだ理解されていない。

神経メカニズムの違いに対する理解を深め、家族をサポートしていくためには、自閉症についてしっかり教育することが必要だ。

私たち一人一人の神経メカニズムには違いがあることを、学校の保健の授業で教えて欲しい。アメリカでは、40人の子どものうち1人が自閉症だと言われている。そのほとんどが認知面での問題がなく、公立学校の一般クラスで授業を受けている。

教師にも自閉症について学んで欲しいし、教育の場が地域や職場にも広がって欲しいと思う。

航空会社などのように、一般の人と接触が多い企業は、職員へのトレーニングの場を設けて欲しい。自閉症にもいろいろなタイプがあること、多くの人に自閉的特性があること、そして自閉症の人たちと良い関係を築けることを、たくさんの人に理解して欲しい。

自閉症だけじゃない。赤ちゃんが飛行機の後方で泣いている時や、10代の子どもが「ありがとう」を言うのを忘れた時、両親のしつけがなっていないと批判するのをやめよう。

私たちが出会った客室乗務員のように何も知らない人たちは、自閉症の子どもを「悪い親」に育てられた「悪い子」だと決めつける。それは、そういった偏見が社会の中に存在しているからだ。

もしかしたら、その子どもはとても疲れていたのかもしれない。とてもお腹が空いていた、もしくはすごく嫌なことがあって腹を立てていたのかもしれない。両親は、仕事や子育てで忙しく、余裕がなかったのかもしれない。もしかしたら、彼らは自閉症なのかもしれない。

もし社会が寛容になって、どんな家族も認め合えるようになったら、私たちのような少し風変わりな家族は生きやすくなる。

言い争いから30分後、客室乗務員は私たちの席に戻ってきた。彼女は私に謝り、彼女にとって「今回のことで学んだ」と話してくれた。私は彼女の言葉に頷いた。

客室乗務員が自分の行動を振り返り、反省してくれて私は嬉しかった。だけど全ての人を、私一人で教育することはできない。

学校、ビジネス、コミュニティ、そして教会。それぞれの場所で学ぶ機会を設けて欲しい。

そして、子育てへの批判をやめてほしい。私たち親のほとんどは、できる限りのことをやっている。社会全体で理解を深め、批判をやめない限り、私たちのような家族は攻撃され、嘲笑される。そして自閉症を持った人は社会の端に追いやられて、仕事や旅行の機会を奪われる。

アメリカン航空での出来事があった翌週、私は息子をコンピューターキャンプの初日に連れていった。彼をピクニックテーブルに座らせた後、私はキャンプのディレクターを脇に呼んで、「息子にはアスペルガーがあります。少しとっぴな行動を取ることがあります。問題がないといいのですが」と説明した。

彼女は笑って答えた。「キャンプでははどんな子どもも大歓迎ですよ」。

世界は少しずつ変わっているのかもしれない。キャンプのディレクター一人から、変化は起きているのかもしれない。

ハフポストUS版の記事を翻訳しました。

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