今年の10月、マイナンバー(社会保障・税番号)が皆さんのところに届きます。マイナンバーは、紙の通知カードに12桁の番号として記されています。運転免許証やパスポートなどの写真入りの証明書と一緒に使えば、そのままマイナンバーカードとして利用が可能になります。
その通知カードを市役所の窓口に持って行けば、無料で写真入り、住所、氏名、住所、生年月日が書かれたICチップ入りのマイナンバーカードと交換してくれます。この番号は、税金関係、年金などの社会福祉関係、住民票などと連動し、これまでやっかいだった役所での届け出手続きなどを、書類不要の簡単なものにするためのものです。
来年の1月から使用可能になります。ただし、地方自治体間の情報交換が行われるのは2017年7月からなので、本当に便利になるのはそこからです。また、17年の1月からは、「マイポータル」と言うサイトがオープンし、自分の番号をどの役所がいつ使っているかもチェックできるようになります。
とは言え、まずは、税務や年金業務からスタートです。それでも、マイナンバーが普及すれば、いわゆる「消えた年金」などの問題は発生しません。確実に社会保障の給付が受けられ、税務上の不公平も正されます。
北欧や、米国、韓国などでもごく普通に使われている個人番号ですが、日本での導入が遅れたのには訳があります。一つには、数十年前に導入が計画され、法律まで通りながら失敗した「グリーンカード」のトラウマです。貯金通帳の名寄せが可能になるグリーンカードが、自民党の反対で実施不可能になったため、政府がその後、資産の把握に役立つ制度設計をおそれるようになりました。また、プライバシーの保護を強く主張する陣営から反発を受け、その後つくられた「住民基本台帳カード」も使い勝手が悪く、利用者がほとんどいない情況です。
今から、30年近く前に、政府税制調査会に「納税者番号検討小委員会」が設けられ、そろりそろりと個人番号制の議論を再開したのです。その時の主税局の担当課長補佐が私でした。それから、国会議員としてマイナンバー法案に関わり、民主党政権で実務責任者として与野党の修正協議をさせていただいたのは、不思議な縁だとしか思えません。結局、2012年冬の解散総選挙で、法案は廃案。翌2013年、与野党逆転しましたが、さらに修正を重ね、法案を可決できました。まさに、民主党の実務責任者として感無量でした。国民が、少しくらい税金をごまかせても良いのでは、、、と思っていた30年前。ようやく、マイナンバーで税の公平を図るべきだというように、成熟してきたのかなと思います。
ぜひとも、このマイナンバーを普及したいものです。しかし、本当に使いやすいカードにするためには、健康保険証も取り入れ、医療情報を扱ったり、ICチップの空き容量で民間利用を促進する必要があります。医療情報が一元化できれば、薬の無駄だけでも2兆円程度の節約ができると言われています。会社は、所得税の源泉徴収がありますので、社員のマイナンバーを集めなければなりません。民間利用としては、まず社員証に使えます。クレジットカードも載せられますし、電気、水道、ガスなどのサービスを一緒にすれば、引っ越しの手続きがワンストップで済んでしまいます。近い将来、そのような社会が実現できます。
ただし、成りすましのリスクや番号漏出のリスクは最小限に抑える工夫が重要です。システム開発には相当な予算を使っています。もちろん、ITの世界はいたちごっこなので、常に最新の技術でアップデートしなければなりません。今国会で、個人情報保護法も強化されます。ぜひ、マイナンバー制度に関心をもって、上手に使っていただくとともに政府の動向も、しっかりとチェックしていただくようお願いします。