捨てられる運命の床材をバッグに、廃棄物問題を提起する元ミュージシャン

そこまでして、あえてバッグを作るのはなぜか。
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名古屋市の大須商店街の中にある工房兼ショップ=朝日新聞社撮影

名古屋市にあるファッションブランド「MODECO」の水野浩行さん(30)が、使われずに捨てられる木目調の塩化ビニール製の床材をバッグに仕立てた。

床材をバッグにする新しい試みのため、どこまで曲げられるか試したり、固い素材をミシンで縫うための工夫をしたり、6年もの時間がかかったという。

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工房で試作中の床材のバッグを持つ水野さん=朝日新聞社撮影

そこまでして、あえてバッグを作るのはなぜか。水野さんが代表を務めるMODECOは、品質が少しでも満たされないと新品のまま廃棄されるシートベルトや合成皮革の靴など廃棄物を素材とするバッグを作り続けている。

「大量に資源が捨てられているのを知らせ、啓発だけではなく、少しでも解決するためのアクションを起こせるものを提供したかった」からだ。

床材の端材は、一企業で月約6トン廃棄されているという。捨てられる量に比べ、バッグにできる量はほんのわずか。今は象徴的な程度にしか作れていないが、「廃棄問題の闇」に気づかせるきっかけづくりが大事だと思っている。

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名古屋市大須商店街にある工房内にあるバッグの材料=朝日新聞社撮影

◇現代の目に見えない病気

「フィリピンのスモーキーマウンテンのように目に見えるあしきものは(先進国には)ない。だが、目に見えない形で捨てられている。これは目に見えない『病気』だと思う」

水野さんは22歳ごろまで、ロックバンドを組み、作曲をして歌っていた。歌のテーマを探している中、1997年の気候変動枠組条約締約国会議で採択された京都議定書をきっかけに、廃資源とその焼却に伴う二酸化炭素の発生に関心をもった。翌98年、知人の環境コンサルの会社社長に連れられて、インテリアやアパレル、自動車産業の倉庫を回った。そこにあったのは、使われないまま廃棄物としてためられていた様々なものだった。「きれいなまま梱包(こんぽう)されているのにゴミなのか」。衝撃を受けた。

◇LAに店、海外進出も視野に

25歳の時、こうした廃材を使ったバッグを作るMODECOを立ち上げた。

海外にもブランドのメッセージを伝えるため、ハリウッドからの発信を狙って、2014年3~6月、米ロサンゼルスで試験的に店を開いた。今は国内でのブランドの浸透を図っているが、「いつか世界に」という思いは持ち続けている。

サンプル制作などをすすめて本格販売する資金の調達のため、クラウドファンディングサイトA-portで支援を求めている。

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A-portで廃床材バッグの制作資金を集めている

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名古屋市消防局の廃棄消防服を買い、リユースする。火にも水にも強い丈夫な素材でポケットも多いので多機能で味があるバッグに生まれ変わる。MODECOの売れ筋商品だ。