女性専門脱毛サロン最大手の「ミュゼプラチナム」(以下「ミュゼ」)の経営危機について、フォーサイトはこれまで何度も報じてきた。
「『医師法違反』の声もある『脱毛エステ』疑惑の商法」(2015年5月21日)
「『脱毛エステ最大手』に浮上した『経営危機説』『健康被害隠蔽』」(2015年6月19日)
「『脱毛エステ最大手』ついに『経営破たん』:刑事事件に発展も」(2015年8月25日)
その運営会社である株式会社ジンコーポレーション(以下「ジン社」)の髙橋仁社長が本日(10月6日)、都内で記者会見し、任意整理に入ったことを明らかにした。事実上の倒産であり、フォーサイトのこれまでの指摘がすべて正しかったことを証明した形になった。
解約金も返金できず
ミュゼは創業からわずか10年あまりで急成長し、会員数270万人、店舗数約190、年商約380億円。名実ともに業界最大手に君臨していたが、その内実は火の車だった。
「全身脱毛100円という激安商法で会員を増やしたが、まったく予約が取れないという苦情が殺到。施術方法も医師法違反の疑いが濃厚で、火傷などの被害も相次いでいました」(ジン社幹部)
すでに今春あたりから資金繰りが悪化、社員の夏の賞与も見送り、社員旅行も中止。それでも、髙橋社長は社員向けに「(フォーサイトなどの)記事は事実無根。賞与も冬には出すし、社員旅行も年明けにはやる」と説明。ミュゼの公式HPでも顧客向けに「心配ない」との説明を掲載していたが、逆にそれらはすべて「事実無根」だったことになる(6日、さらに「インターネット記事について」と題する告知をアップし弁明に努めている)。
会見で明らかにした「任意整理」とは、銀行団など債権者と借金の返済方法について協議に入るということ。
「銀行団との協議自体はすでに夏前から入っており、返済を強く求められていた。財務調査のためにコンサルタント会社も常駐し、9月末までに調査結果をまとめて銀行団に報告することになっていた。会見では事業を継続すると説明していたが、このままの規模で継続しても状況は変わらない。早晩、会社更生法などの倒産処理を進めざるを得なくなるでしょう」(同)
解約する場合には当然ながら予め収めた金額を返金するシステムがあるが、当初は翌月の返金だったのが、今夏から2カ月先に繰り延べ。ところが、9月30日に返金しなければならなかった分について、10月1日になっても返金できない事態まで出来していた。
現時点での正確な負債額は判明していないが、テレビCMや電車の中吊り広告など巨額の広告費で大手広告代理店・電通に20億円あまりの未払い金があるなど、総額では500億円以上ともみられている。今回の会見でさらに解約が殺到した場合、いよいよ資金繰りに窮することになるだろう。まだしばらくは注視が必要だ。
いまも大量の広告を出しているが......
内木場重人
フォーサイト副編集長
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(2015年10月6日フォーサイトより転載)