「工場で働く」と聞くと、皆さんはどのようなイメージをお持ちになるでしょうか?
「床には雑多にモノが置かれていて、汚そう」
「労働条件がキツそう」
と思う方もいるのではないでしょうか?
しかし、私は400を超える工場を訪れるうちに、これらのイメージとは異なる工場も多々あることを、そしてそれらのイメージは偏った考えであることをはっきりと認識しました。
そう感じるキッカケとなった工場のうちの一つが東北にある岩手モリヤ株式会社です。
こちらでは、工場に足を踏み入れた瞬間に、その整理の行き届いた様子に驚嘆します。
モノを整理し、床に無駄な荷物を置かないようにすることで仕事の効率化を実現しており、工場内では改善した様子が目に見えてわかるようにBefore→Afterの写真が掲示されて皆が意識して整理整頓できるような工夫がなされています。
定器が置いてあり、消費電力を常に管理。震災前の50%以上も電力カットに成功されているそうです。従業員が見える場所に置く、いわゆる「見える化」ですね。
また、使い終わった糸もきれいに巻き直して再利用しています。
驚いたのが、床でした。従業員のほとんどは女性、ということで、床は塩化ビニールではなく2cmの無垢(むく)を敷き詰めているそうです。無垢であればクッション性もあり、長時間立っていても足が疲れないとのこと。さらに、食堂にある畳のスペースでは、座るとスカートの中が見えてしまう恐れがあるので、1.5mほどの壁を作るという細やかな配慮も欠かしません。
女性スタッフへの細やかな配慮の結果が、床に無垢を使う理由です。
さらに、こうした配慮のみならず、人材の育成を考えるなかで、革新的な取り組みも行っています。
工場で洋裁の仕事をするというと、熟練の職人の技や勘がすべて、というイメージもあるかと思います。しかし、岩手モリヤさんでは、IT化、最新機器の導入により、標準化と均質化・スピード化を図り、不要であれば勘やテクニックを排除しています。
たとえば、仕様書はすべてiPadに登録され運用しています。すると、各工程・各チームに設置されたiPadにより、多くの紙の仕様書が不要となりました。
海外のハンガーシステムもフル活用し、機械が人のところまで運ぶ、という体制が整っています。
「勘や経験に頼らないものづくり」
まさに今後の日本の縫製業のお手本だと思います。
このように、従業員の皆さんをこれほど愛している工場だからこそ、働きやすい環境づくりを実践し、人の手作業の素晴らしい部分を生かしながら効率化すべきところは人の手からITへ移管していく...。そしてまた人が働きやすい環境が整えられていくので、毎年新卒が入り、100名の規模を維持できるのだろうなと感じました。
私も今一度、働きやすい環境とは何か考えてみようと思います。