MRJを初公開 「国産旅客機の復活は日本の夢」【画像集】

国産初のジェット旅客機「MRJ」の飛行用初号機が完成したことを記念して、10月18日にロールアウト式典が開かれた。MRJの完成機がメディアに公開されるのは初めて。MRJの初飛行は、2015年4〜6月を予定している。
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安藤健二

国産初のジェット旅客機「MRJ」の飛行試験用の初号機が完成したことを記念して、10月18日にロールアウト式典が開かれた。MRJの完成機がメディアに公開されるのは初めて。MRJの初飛行は、2015年4〜6月を予定している。

式典は、機体の最終組立てをした三菱重工業の小牧南工場(愛知県豊山町)内にある格納庫で開催。西村明宏・国土交通副大臣や、機体の初搬入をする予定のANAホールディングスの伊東信一郎社長ら約500人が出席した。

和太鼓の演奏が鳴り響く中、シャッターが開き全長35メートルの飛行試験用の初号機が登場すると、会場からは大きな拍手が沸き起こった。

■MRJとは?

MRJの正式名称は三菱リージョナルジェット。その名の通り、三菱重工業のバックアップの元、子会社の三菱航空機が開発している。採算が取れず1973年に製造中止となったプロペラ機「YS-11」以来、約40年ぶりに製造された国産旅客機だ。全長は約35m。旅客機としては小ぶりだが、78〜92人の乗客を乗せることができる。最大巡航速度はマッハ0.78(時速830km)だ。

航続距離は最大3300kmで、東京からはグアム、台北、上海、北京をカバーできる。ヨーロッパやアメリカ合衆国では全域を飛行できる計算で、世界各国の大都市のハブ空港と地方空港を結ぶ「リージョナルジェット」の分野への参入となる。

当初の計画では2011年にMRJが初飛行、航空会社への納入されるのは2013年となるはずだった。しかし、3度にわたり開発スケジュールを延期したことで受注が伸び悩んだ。

2014年7月には約1年半ぶりに、アメリカとミャンマーの航空会社から合計で50機の新規受注を獲得。総受注数は国内外5社から375機となった。8月には、JALから新たに32機の受注を受けたことで、採算ラインとして設定していた400機を超えることになった。

小型機市場ではブラジルのエンブラエル社、カナダのボンバルディア社の2強が圧倒的なシェアを持っている。国家プロジェクトとして、日本政府も500億円の開発予算をつぎ込んだ「日の丸ジェット」が、どこまで世界市場に食い込めるか注目されている。

■「世界に誇れるメイド・イン・ジャパンを」

ロールアウト式典では主催者を代表して、三菱重工業の大宮英明会長が以下のようにあいさつした。

「今日の日本は戦後の貧しい時代から経済発展したことで、世界中にメイド・イン・ジャパンの製品があふれていますが、旅客機に関してはYS-11の生産終了後、約40年間も途絶えていました。国産旅客機の復活は私の長年の夢であり、三菱重工の夢であり、まさに日本の夢でもあると思います。

しかしながら夢を実現することと事業として成功することは、同じではありません。夢だけでは事業はできません。国産旅客機を開発・製造・販売するためには克服しなければならない膨大な数の障壁があります。

事業として決心した当時は会社の屋台骨を揺るがしかねないリスクを背負う覚悟が必要でした。2008年春に三菱航空機株式会社を設立し、MRJを正式にローンチして、開発・販売活動をしてからは、さまざまな困難に直面してきました。これらを乗り越え、皆さんにお披露目する日を迎えることができました。

まさに高い技術力で品質・安全性を追求するという日本のものづくりの英知の結晶と、国産旅客機事業の復活を実現したいという多くの人々の情熱が見事に融合したことにより、最高レベルの経済性と客室快適性を兼ね備えた世界に誇れるメイド・イン・ジャパンの製品がようやく夢から現実へと姿を変えようとしています。

MRJは世界最先端の空力設計技術、騒音解析技術などの適用と最新鋭エンジンの採用により大幅に燃費低減しつつ、騒音や排出ガスも低減します。また、これらの圧倒的な経済性と環境適合性で、エアラインの競争力と収益力の向上に大きく貢献します。

半世紀ぶりに日本が手がけたこの素晴らしい旅客機は、今後世界中のさまざまな国・地域で人々に受け入れられ、多くのお客様の夢と希望を乗せて飛び回ることでしょう。

私は自信を持って、このMRJを世界に送り出せることを大変誇りに思っています」

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