MOX燃料が高浜原発に到着、プルサーマル再稼働は「予定調和」か【争点:エネルギー】

原子力発電所の使用済み核燃料を再処理して作るMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物)が、27日、関西電力の高浜原発(福井県高浜町)に到着した。MOX燃料が国内に搬入されるのは、一昨年の東京電力福島第一原発事故以来となる
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AFP時事

原子力発電所の使用済み核燃料を再処理して作るMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物)が、27日、関西電力の高浜原発(福井県高浜町)に到着した。MOX燃料が国内に搬入されるのは、一昨年の東京電力福島第一原発事故以来となる。

MOX燃料は、原発の使用済み燃料からプルトニウムを取り出し、ウランと混ぜて作られた燃料である。日本では、通常のウラン燃料の代わりに、MOX燃料を原発の燃料として使う計画を「プルサーマル計画」と呼んで、核燃料サイクルを推し進めてきた経緯がある。

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使用済み核燃料の処理には、まだ使える部分を取り出して、残った高レベル放射能廃棄物を捨てる「再処理」と、使い終えた燃料を埋める「直接処分」の2つの方法がある。

これまで政府は、すべての使用済み核燃料を再処理し、ゴミにしないという政策を取ってきた。しかし、国内には再処理工場がないため、日本はフランスなどに使用済み核燃料を送り、再処理を依頼してプルトニウムを取り出してもらっていた。

本来なら再処理されたプルトニウムは、高速増殖炉で利用される予定であったが、1995年のもんじゅナトリウム漏れ事故により見通しが立たなくなっている。そのため、高速増殖炉ではなく、一般の軽水炉でMOX燃料を使うプルサーマル路線に切り替えた経緯がある。

しかし、東日本大震災の原発事故を受けて、原発が停止。今回高浜原発に運び込まれたMOX燃料は、関西電力がフランスの会社に再処理を依頼したもので、2010年に完成し、2011年中に輸送される予定だったが、東日本大震災の影響で延期されていた。関電は、原発の深刻な事故への対策を電力会社に義務付ける新しい規制基準(新規制基準)が7月8日に施行されることにあわせ、高浜3号機、4号機の再稼働を申請する。安全審査を通過すれば、今年の冬にも運転を再会する見通しだ。

27日のMOX燃料が高浜原発に搬入に対して、高浜原発周辺では反対運動が起こった。NHKでは下記のように報じている。

高浜原発から2キロほど離れた対岸では、プルサーマルに反対する団体のメンバーらがMOX燃料の使用の中止などを訴えました。

メンバーらは午前6時半ごろ輸送船が姿を見せると、「プルサーマル中止」などと書かれたのぼり旗や横断幕を掲げ、「MOX燃料を許さない」などとシュプレヒコールをあげていました。

(NHKニュース「MOX燃料 船から降ろす作業始まる」より。 2013/06/27 12:11)

高浜原発のある地元・高浜町の野瀬豊町長は、再稼働を容認する考えだ。町民約1万1千人のうち、3千人近くが原発関連で働くため、長期停止で町民の生活に大きな影響が及んでいるとしている。しかし、地元の原発災害に対する防災計画は、まだ具体化されていないようだ。朝日新聞デジタルでは次のように報じている。

高浜町は7月にも、地域防災計画の原子力災害対策編の原案をまとめるが、県外への避難はまだ具体化していない。野瀬町長は「新基準に沿って過酷事故が起きないとなれば、県外の避難先の確定を待つ必要はない」と述べ、再稼働の判断と切り離して検討するとした。

(朝日新聞デジタル「高浜原発再稼働 地元町長は容認方針 福井」より。2013/06/13 05:04)

時事通信などは「再稼働、プルサーマルも念頭=地元の理解カギ-関西など電力3社」というように、地元の理解が得られるかどうかが、再稼働のカギとなると報じているが、どうやら「予定調和」ということにもなりそうな空気があるようだ。

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