映画『スノーデン』公開前に復習しておきたいこと5つ

スノーデン事件とはなんだったのか復習ポイントをおさらいします。

今月27日、いよいよ映画『スノーデン』が公開されます。

メディアでは騒がれているけど、いまいちピンとこないあなたに向けて、スノーデン事件とはなんだったのか復習ポイントをおさらいします。僕自身もスノーデンの事件を発端にヨーロッパの動向などを追っていたときがありましたので、今一度振り返ってみたいと思います。

どんな映画?

映画『スノーデン』は、監督オリバー・ストーン、脚本キーラン・フィッツジェラルドとストーンによるポリティカル・スリラー映画です。アメリカでは2016年に公開されました。これまでもスノーデンの暴露を描いた映画作品「シチズンフォー」などが公開されてきましたが、今回ここまで注目されているのは、オリバー・ストーンが監督をしているからでしょう。オリバー・ストーンは、ベトナム戦争帰還兵としてその経験の後生への影響を描いた『プラトーン』にはじまり、『JFK』『ニクソン』『ブッシュ』などアメリカ政治に対して批判的な映画をこれまで制作してきました。

脚本は、アメリカの国家安全保障局(以下、NSA) の膨大な諜報活動を元職員が暴露した2013年6月の事件がもとになっています。その様子をドキュメンタリーにおさめた映画が「シチズンフォー (Citizenfour)」で、87回のアカデミー賞も受賞しています。今回の映画は、このドキュメンタリーや暴露報道、暴露本、本人への直接インタビューを重ねて作り上げた作品ということです。

ところでスノーデン事件って?

2013年6月、米英主要メディアが、NSAによる市民の通話記録やインターネット情報の収集をおこなっていたことを報じました。これまでもこれに似た「陰謀論」が蔓延っていましたが、今回の暴露は職員からの内部告発だったので、確かな証拠を伴った「事件」となり、今世紀最大級のショッキングニュースとなったのでした。NSAは、アメリカの「国防総省」の中の局なのでいってみれば、日本の防衛省の局の職員が国の機密情報を漏らしたということになります。その後、欧米諸国における外交政策にすら大きな影響を与える事件となったのでした。

なぜ暴露したの?

暴露者が元職員のエドワード・スノーデンであることが発覚したのは、暴露報道から3日後でした。スノーデンは「政府がプライバシーやインターネットの自由を破壊するのを許せなかった」として暴露に踏み切ったのでした。その暴露した内容には、NSAが特殊なプログラムを使ってネットユーザー(外国人に限るとの報道もあり)のあらゆる情報をGoogleやFacebook、Yahooなどの大手ネット企業から入手していたことなどが含まれます。つまり、Facebookの写真や個人情報、投稿などが税金を払っている行政機関に筒抜けの状態になっていたということです。それを身を切って世に知らしめたスノーデンは、まさにインターネット社会の「ヒーロー」として、賞賛されることになったのでした。

どうやって暴露したの?

スノーデンは、直接メディアに暴露情報をリークしたわけではありません。アメリカ人ジャーナリストであり弁護士であるグレン・グリーンウォルドと、映画監督ローラ・ポイトラスの2人に働きかけたのでした。。スノーデンが2人に働きかけたのは、政府の機密情報を慎重に扱う必要があったこと、そしてそれを最も効果的に世に知らしめる必要があったからです。暗号化装置を使用し2人とメールのやり取りをした後、香港で直接会ってインタビューをしてもらい、英紙「ガーディアン」にて最初の報道をすることになったのでした。

このインタビューの様子は、「シチズンフォー」で公開されいます。

緊迫した空気に包まれたなかで淡々と政府の機密情報に説明しています。その後も次々と、英米のメディアで政府の諜報活動を暴露していくことになります。

暴露してスノーデンはどうなった?

この暴露報道に対して、NSAの言い訳は「テロ犯罪等の防止のため」でした。香港に身を映して暴露に踏み切ったのは、自身がアメリカ政府を「裏切る」ことになることを知っていたからでした。その後、香港からモスクワ渡航後、エクアドルをはじめ18カ国に対して亡命申請をするも紆余曲折を経て、最終的には2014年7月、3年間の期限付き居住権を得てロシアで生活を送ることになります。(ちなみにこのときに彼の亡命を助け、付添人を務めた一人が英国人記者が、サラ・ハリソン

今回の映画はこの一連の事件を描いています。ドキュメンタリーである「シチズンフォー」では描ききれなかった部分も映像で観られるようになるのは、今から楽しみです。

浮かび上がるいくつかの疑問

以下には、この映画を観て浮かんでくるであろう疑問と、それに対する回答を関連記事とともにシェアします。

A: 「私たちはインターネットには嘘をつかない。検索エンジンを使うとき、私たちは完全に正直であり、自分たちが考えていることをそのまま機械に伝える」(ミッコ)

A: 「NSAのメタデータ大量招集による分析が実際にテロ攻撃を阻止したと言う成功例を、政府は一件も提示できていない」(2013年12月、連邦裁判所判事リチャード・レオン)

A:「不正を働いている政府のために自分の行動を変えるべきではありません」「怖いからといって自分の価値を犠牲にしたら、あなたはその価値についてたいして気にしていないということなのです」(スノーデン)

A: 第一に(それは)権利を放棄しているということです。『その権利が必要になることはないだろうし信用してるから、別にいらないよ。連中は、正しいことをやるだろうから別に問題ない』というわけです。権利が大切なのはいつ必要になるか分からないからです。 さらに、この権利はアメリカだけでなく西欧社会や世界の民主主義社会における、文化的アイデンティティの一部をなすものです。(以下TEDよりスノーデンの発言)

A: 監視システムは、抗議活動などの抑圧や制限を進めるだけでなく、人々の意識下における「反対意見」すらも殺してしまうことにつながる (グリーンウォルドより) 「観られている」という意識を人々に埋め込むことで、人々に同調的な行動を求め、反対運動を起こさせないようにし、社会の「異端」を排除し、多様性を否定した社会へ導くことになる。