映画「新聞記者」で登場する内調とは。望月衣塑子・東京新聞記者や元官僚の前川喜平氏が明かす実態【動画】

作品が6月28日に公開されるのを前に、望月、前川両氏ら4人が対談して権力とメディアについて語った。その主要部分を独占掲載する

総理大臣を補佐する内閣官房の中には、内閣情報調査室(内調)という情報機関がある。国内外の情報を収集・分析する組織だが、活動の実態は不明な点が多い。

そんな内調が登場する映画が6月28日に公開される。藤井道人監督の「新聞記者」だ。

韓国の若手女優シム・ウンギョン演じる新聞記者が政権の「闇」を暴こうとする中、内調が妨害工作を実行。それに疑問を抱く内調職員を、松坂桃李が好演している。

作品はフィクションだが、東京新聞の望月衣塑子記者の自伝「新聞記者」が原案となったり、実際に安倍政権を揺るがせた出来事に着想したと思われる内容があったりと、実話と重なる部分が多い。

作品に合わせ、望月記者と元文部科学省事務次官の前川喜平氏、新聞労連委員長で朝日新聞記者の南彰氏、元ニューヨークタイムズ東京支局長でジャーナリストのマーティン・ファクラー氏の4人が、安倍政権の実態や報道のあり方について対談した。

対談の様子は作中でも一部登場するが、対談を収録した動画について、制作側から主要部分の提供を受けたハフポストは、作品公開に先駆けて独占掲載する。

全3回で、1回目は内調がテーマだ。

安倍晋三首相の信頼が厚いとも言われる内調。一体どんな組織なのか。

(以下、敬称略)

:最近、内閣情報調査室、いわゆる内調と言われている組織が、色んなところ、政治の世界や行政の世界でうごめき回っているという指摘があります。

特に総理の動静を見ると、しょっ中、そのトップが総理と面会しているということが言われているんですけど、霞が関に長くいらっしゃった前川さんからみて、内調というのはどういう組織なんでしょうか。

前川:内調というのは、霞が関で仕事をしていても、よく見えない組織ですよね。

警察とかなり通じている組織である、ということはわかる。内調の幹部はほとんど警察官僚が送り込まれてますから。警察とほぼ一体化しているということはわかるんですけどね。

一体どういう情報をどういう形で収集しているのか、何に使っているのかというのはまったくブラックボックスの中に入っているし、本当に公益のため、国民のために活動が行われているのかどうか、そのチェックも誰もできてませんね。

警察ならばまだ、民間人が入った国家公安委員会というものがありますけど、内閣情報調査室というのはまさに総理に直結している組織であって、そこで何が行われているのか、内閣情報官が毎日のように総理の執務室に入って、何を報告しているのか、指示を得ているのか、誰もわからない。そういう組織になっていると思いますね。

ただ、私自身は官邸発と思われる情報でスキャンダル化されかけたことがあるんでね。

これは内調の活動の結果だったのかもしれないという疑いを持ってますけどね。

とにかく何をしてるのか、役所の人間でもわからない。そういう組織ですよね。

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前川喜平氏
時事通信社

:前川さんが言われたように、スキャンダル、特に政権に不都合な人のスキャンダルが出た時に、内調がまた暗躍したんじゃないかという指摘がよく出るんですけど、望月さんから見て内調というのはどんな組織ですか。

望月:例えば新聞では取り扱えないような、政治家、特に野党側の「下ネタ」話とか、そういう話を含め、色々集めた情報を週刊誌の記者を呼んで、官邸側としてリークをするということは聞いたことがありますね。

前川さんの時も、同じネタをある大きい週刊誌と、もう1つの大きい週刊誌に同じように流すと。

そのときに、1つの週刊誌はそのまま、その情報を元にまっすぐ報じると。もう1つは「これは恐らく官邸が流している。ということは、この逆の何かがあってこういうことを流してきた」と、逆側の方向から記事を書いていると。

私はわかりやすかったんですけど。新聞記者も使われているところがあると思うんですけど、やはり週刊誌の記者とかを使いこなして、まさに権力の体制を維持するために、自分たちに批判的なことを発信するような人は芽を摘もうというようなことをやっている一役を担っているのかなと。

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望月衣塑子記者
HuffPost Japan

私自身の記憶で言うとやはり、非常に「バトル」を官房長官とやっていた時に、ある内調の職員が、ある国会議員に「望月さんてどんな人」っていう電話をかけてきたんです。

この国会議員が、非常に仲がいい、ある有名なジャーナリストに「望月さんのこと、今内調が調べ始めたよ」っていう話をするんですね。

この人から私に「望月、お前調べられているから気をつけろ」って。びっくりしたんですけど、ベテランの記者に話したら、これは内調がすごくよくやる手で。

彼らとして「今お前を調べている」って言えないわけですよ。違法な捜査なので。何の容疑で、何のためにやっているのかと聞かれちゃうので。

だから直接「望月さん」って聞いてこないんだけど、まさに知っている政治家とかジャーナリストを使って「あなたを見てるんですよ。ウォッチングしてるんですよ」ということを、政権を批判的に言ったり、厳しめに突っ込んでいる私とかに対して、間接的な圧力になるようにそういうことをやると。

結構昔からやっているオーソドックスなやり方だって言われて。あ、そういうふうにも動くんだって、驚きをもったことがあるんですけどね。

前川:私も覚えていますよ。同じような日に発売されるような2つの週刊誌があってね、いずれも漢字4文字の週刊誌ですけどね。両方からアプローチあったんですよ。

ある方は、新宿のある店に出入りしている話が聞きたいと言っている。もう1つの方は、そういう話を聞いたんだけども、そっちの話じゃなくて、あっちの話を聞きたいと。

そっちは書かないけども、書かない代わりに、ある大学の獣医学部の設置にかかわる内情を聞きたいと。

そういうアプローチがあったんですよ。これも非常にわかりやすかった。出所は同じだったんだろうと思うわけで。