「モーニングパーソン」(朝型人間)と「鎖を切るな」

早朝に起きてもっとも重要な事をする習慣をつけるのが、成功の鍵であるという話はよく聞く。
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 早朝に起きてもっとも重要な事をする習慣をつけるのが、成功の鍵であるという話はよく聞く。

 英語ではMorning Person(モーニングパーソン)というのだが、あちらでもライフハック記事としてよくあがってくる。

 一方、夜型でも成功している人はいっぱいいるよ、それはモーニングパーソンの決めつけだよという人もいて、これまた人気記事としてよくあがってくる。

 ちなみに、僕がこれから書くこと(「モーニングパーソンであることよりも重要なことがあるよ」)も、すでに言いつくされていることで、とくにオリジナリティがあるわけではないので、モーニングパーソンについて食傷気味の人には、意味のない記事であることを先にお断りしておく。

 さて、僕はモーニングパーソンである。

 ここ13年ぐらいは。

 なぜそうなったかというと、海外のお客様にモノを売ってきた関係で、4時半起きが習慣になったのである。

 ライフハック記事を読んで、モーニングパーソンになろうとしたわけではない。

 僕が13年の間に達成したことは、世間的に見るとたいしたことはないだろう。

 だから、やっぱりモーニングパーソンであることは成功に直結しないじゃないか、その良い例だと言う人もいる。

 まったくそのとおりだと思う。

 だけど、56才で残り時間が少なくなってきた今、13年を振り返って痛切に思うことがある。

 それはなにかを繰り返す、毎日毎日繰り返す、上達していないように思えても、とにかく繰り返すことの重要性だ。

 この記事を書いてその印象的な話を紹介した時、もちろん、僕が伝えたかったのはそのことだ。

 その話では、たったひとつの良い物を作ろうとした人がつくったひとつのものと、同じ時間をかけて品質よりも数をつくろうとした人がつくったものを比べると、結果的に多くを作った人のものの方が、品質でも勝っていた。

 また、この記事で紹介した「鎖を切るな」という話。

 アメリカの有名な俳優・コメディアン・脚本家サインフィールドさんが若い人へのアドバイスとして、「内容は問わない。とにかく、毎日、かならずいくつかのジョークを書け。書いたらカレンダーにバツをつけよ。やがて、そのバツ印は鎖のように伸びていくだろう。その鎖を絶対に切らすな」とおっしゃっている。

 僕の最近の13年間は、自営業者であったので、ある意味、自分の習慣を自分で決めることができた。

 そして、たとえば、ブログを毎日書くと決めたのだが、3年続けるうちに、商業出版に至った。*1

 また、たとえば、アンティーク着物の仕事では、ちょっとずつ、知識や扱い商品が増えてきた。僕だけでなく、スタッフの間にも、そういう知識が少しづつ蓄積して、ある一定レベルで出品できる品数が徐々に増えてきて、ありがたいことにお客様も増えてきた。

 毎日続けることの大きな効果は驚くべきものがある。

 毎日の結果が、昨日とほとんど変わっていないように思えて、無力感を感じることがあったとしてもである。

 ちょっと残念なことは、そんなことを、50才になってから痛感するなよ。

 もっと若い頃に、その効果を知っていたら、30年の間に、僕がいる場所はぜんぜん違う場所になってたんじゃないのか。

 いや、それも運命だ。

 などと思っている。

 さて、そこでモーニングパーソンの話に戻る。

 モーニングパーソンであることの利点のひとつに、習慣とすれば、時間を確保しやすいということがある。

 たとえば、毎日文章を書くということを習慣にしようとする時、早朝にそれを設定すれば、宴会やさまざまなお誘い、疲れ、誘惑などに惑わされることなく、それを続けることができる可能性が高い。(ただし、人生の楽しみの大切な部分をある程度諦めなければならない。)

 自営業者になってからの僕はたまたま、そういう習慣がついたので、システムを改善して早起きの必要がなくなってからもそれを自然と続けることができた。

 そうして、結果的に、僕は遅れてきたモーニングパーソンになった。

 会社に勤めていた頃、また、若い頃は、なにが難しかったと言って、「目に見える結果のでないことを習慣として続ける」ことである。

 もしタイムマシンに乗って若い僕にアドバイスに戻るとしたら、「モーニングパーソンになれ」とは言わないだろう。でも、「鎖を切るな」ということは、諄々と説いただろう。

「鎖を切らない」ための習慣、ライフスタイルの方法のひとつにモーニングパーソンになる方法がある。

 会社勤めをしていると、なにかを続けるための習慣をつくることが難しいが、早朝ならそれがしやすい、という話である。

 しかし、「鎖を切らない」習慣をつくる方法はほかにもあるだろう。

 たとえば、長距離通勤の人は、その時間を利用することだってできる。人それぞれがその生活を工夫すればよいことだ。

 「鎖を切るな」

 この言葉こそ、僕は多くの人に知ってほしいと思っている。

photo by Barbara Willi

*1:毎日ブログを書くのはやめた。書けないときはパスすることにしたけど、毎日書くことそのものは続けている

(2015年8月10日「ICHIROYAのブログ」より転載)