3月に90歳で死去した森山栄治氏から関西電力の幹部ら20人が計3億2000万円の金品を受け取っていた問題で、同社は10月2日、社内調査報告書を公表した。
■お菓子の袋の底に金品、拒否すると激昂
森山氏は、関西電力の高浜原発が立地する福井県高浜町で1977年から10年間に渡って助役を務め、原発関連の仕事を調整。地元に絶大な影響力を持っていたとみられる。報告書は、森山氏が存命中の2018年9月にまとめられた。
調査対象者のうち20人が森山氏らから現金、商品券、金貨、小判などの金品を渡されていた。お菓子などの土産物の袋の底に、見えないようにして金品を渡されるケースが多かったという。拒否すると「お前、誰に向かって言うてんねん」「無礼者。ワシを軽く見るなよ」と激昂されるため、諦めざるを得なかったと記述されている。
金品の受け渡しの際以外にも、森山氏は少しでも意に沿わないことがあると急に激昂し、「無礼者!」「おまえは何様だ!」などと長時間にわたり叱責・罵倒することが多くあったと報告書は記述している。その中には「お前の家にダンプを突っ込ませる」「お前にも娘があるだろう。娘がかわいくないのか?」などの台詞があった。また、激しい恫喝の影響もあって身体を悪くし半身不随となった担当者がいたという。
■関西電力社長「森山氏の影に怯えてしまった」と弁明
関西電力の岩根茂樹社長は2日の記者会見で、森山氏の恫喝を警察に通報しなかった理由を聞かれて以下のように答えた。
「他の事例でありましたら通報していましたが、森山氏の影に怯えてしまったことがあるかと思います」
関西電力は今後、原子力以外の部門やグループ会社も含め、より徹底した再調査を実施するという。
2018年の報告書に書かれた、森山氏の普段の「恫喝」の詳しい内容は以下の通り。○○○と書かれている部分は伏せ字になっていた。
■発電所を運営できなくしてやる
発電所運営の妨害を示唆する恫喝として、「お前とも関電とも関係を断ち切る。 ○○○○発電所を運営できなくしてやる。」といった発言があった。
また、高浜3・4号機増設時に関電経営トップと何度も面談し、増設に関して依頼を受けたと話していた。
森山氏は、その際、当社の経営トップから受け取ったという手紙やはがき等を保管しており、「発電所立地当時の書類は、今でも自宅に残っており、これを世間に明らかにしたら、大変なことになる。」などといった発言があった。
■お前なんかいつでも飛ばせる
人事異動や解雇に影響を及ぼすことを示唆する恫喝として、「お前のいい加減な仕事ぶりを社長に言ってやる。今すぐ、この電話を社長につなげ。ぐずぐずするな。早くつながんかい。」「お前なんかいつでも飛ばせるし、何なら首も飛ばすぞ」などといった発言があった。
また、社内では過去の伝開情報として、森山氏からの圧カに耐えかねて、対応者の中には、うつ病になった人、辞表を出した人、すぐに左遷された人などがいる、などの話が伝えられることがあった。
■お前の家にダンプを突っ込ませる
自身やその家族の身体に危険を及ぼすことを示唆する恫喝として、「お前の家にダンプを突っ込ませる」などといった発言があった。
また、社内では過去の伝聞情報として、対応者が森山氏から「お前にも娘があるだろう。娘がかわいくないのか?」とすごまれた。
別の対応者は森山氏のあまりに激しい恫喝の影響もあって身体を悪くし半身不随となった。その対応者は身の危険もあることから経緯を書いた遺書を作って貸金庫に預けていた、などの話が伝えられることがあった。