学校法人「森友学園」が大阪府豊中市の国有地を鑑定価格よりも低く購入したことをめぐり、値引きの根拠となった地下のゴミの位置などを国側が確認していなかったと、国交省が明らかにした。23日、衆院予算委員会第3分科会で国交省の平垣内久隆・航空局次長が認めた。
森友学園が購入した国有地の価格は、鑑定価格の9億5600万円から「ゴミ撤去費」として見積もった約8億円などを差し引いた1億3400万円だった。朝日新聞デジタルによると、近隣国有地の10分の1の価格だという。
平垣内次長は「森友学園から、9.9メートルまでの深さの杭打ち工事を行った過程で新たな地下埋設物が発見されたと連絡があった」「杭打ち工事を行った過程で発見された地下埋設物であると、工事関係者から説明を受けた」と説明。
そのため国は、最大で地下9.9メートルまでごみがあるという前提で「ごみ撤去費」を約8億円と見積もっていた。
民進党の玉木雄一郎議員は「航空局も財務局も自ら確認したのではなく、工事事業者がそう言ってるからそうだと。これが8億円の根拠か」と批判した。
民進党の今井雅人議員も「9.9メートルのどの部分でごみが出たかというのは確認はしたか」と質問。これに対し、平河内次長は「実際に9.9メートルの深さに埋設物があったということまでは確認していない」と、地下のごみの位置などを確認していなかったことを認めた。
今井議員は「9.9メートルより上のところまでしかごみがなかった可能性も否定できない」と、差し引いた金額が過大である可能性を指摘した。
国有地の売却価格を、鑑定価格から8億円を差し引いたことについて、財務省の佐川理財局長は「今後の工事でどんなゴミがさらに深いところで出てくるのかわからないので、隠れたものも含めて国の責任をいっさい免除するということを考慮して撤去費用を見積もった」と説明した。
また佐川理財局長は、国有地売買の背景には小学校の開校が迫っていたとし、「工事を早く進めなければいけないという話があった」と述べた。
■野党「広告塔に使われている」と追求
森友学園をめぐっては、「安倍晋三記念小学校」の名で学校建設の寄付金を募っていたことでも物議を醸している。
23日の衆院予算委員会で今井雅人議員は、「瑞穂の国記念小学院」の公式サイトで安倍首相や昭恵氏の名前が使われていたことについて、「(安倍首相や昭恵氏が)広告塔に使われていると言っても仕方ありません。ですから、ここで問題が起きたら、やっぱり連帯責任にいきますよ。昭恵夫人だけじゃなくて、内閣総理大臣にいきかねない」と追及した。
会計検査院の河戸光彦院長は、民進党の福島伸享氏への答弁で、ゴミの撤去費用の見積もりが適正だったのか「事実関係の確認をした上で、国会での議論も踏まえ、正確性や経済性など多角的な観点から検査を実施したい」と、一連の経緯を調査する意向を示した。
一方で、麻生太郎財務相は「地下埋設物は、売却相手方において適切に撤去したものだと聞いており、この土地は地下埋設物を考慮して評価され、すでに売却済みであり、実際に撤去されたかどうか契約上も確認を行う必要はないと考えている」と述べ、ごみが実際に撤去されたかどうかなど、契約内容について再調査しない姿勢を示した。
■民進党・蓮舫代表「取り引きを適正だと言うなら、参考人招致を妨げる理由はない」
民進党の蓮舫代表は23日の記者会見で「国民に説明のつかない売買契約があってはならない」と強調した。
「国有地は国民の財産であり、売買で不明朗なやり取りがあったことを説明しないで終わらせてしまおうというのは全く間違いだ。道を挟んだ、ほぼ同じ土地の売買金額が、一桁違うのでは説得力を持たない」とした上で、「われわれは、学園の理事長の国会への参考人招致を求めているが、与党から前向きな対応が出てきていない。国が取り引きを適正だと言うなら、参考人招致を妨げる理由はない」と述べ、森友学園の籠池泰典理事長の参考人招致を求める構えを見せた。
■共産党・志位委員長「政治家の関与なしに起こりえない」
共産党の志位和夫委員長も23日の記者会見で、「評価額で9億5600万円もの土地を、ゴミ処理費用や除染費用を差し引いて約200万円で手に入れた」と指摘。「異常で奇怪な取引であり、政治家の関与なしにこういうことは起こりえない」と述べ、国有地売却について今後の国会審議でさらに追及する姿勢を見せた。
また志位氏は、「国民の財産が損なわれていることは明らかだ」と述べ、蓮舫氏と同様に、事実関係の解明に向けて籠池理事長をはじめ関係者の参考人招致を求めた。