ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツらが中心となり、世界の富裕層がその資産の大半を慈善団体へ寄付することを奨励したおかげで、"Giving Pledge(寄付誓約)"キャンペーンは多くの寄付金が集まりました。
当然のように賞賛が集まっていますし、私自身もそれを心から賞賛します。しかし、あまり知られていませんが、他の慈善活動も、同じく独創的で、効果的で、創造的なかたちで進められています。私たちは世界中に、より新しく、より活発に、効果的な寄付のアプローチを促進していくために、このような取り組みをもっと推進していかなくてはなりません。そこで、私は革新的な社会貢献に捧げるモナコ公国王子賞を制定するイニシアチブをとりました。今月初めて授与される予定です。
慈善活動は目新しいものではありません。民間の寄贈者は常に、広い地域社会の持続可能な発展のため、社会的そして環境的な課題に取り組んできました。しかし今日、経済成長が鈍化し、莫大な債務を抱えたため政府の支出を削減しているなかで、慈善活動の役割がより重要なものとなっています。私たちは今個人の寄付の時代に生きています。
それが人目を引くものか引かないものかに関わらず、こうした貢献によって、感染症撲滅への取り組みに大きな変化をもたらしました。2006年に私が創設した財団は、環境保全と持続可能な発展に焦点を当てており、その継続的な成果は私が最も誇りに思っている成果のひとつです。
そして、こちらもあまり知られていませんが、デジタルツールと新しい概念が慈善活動そのものの性質を再形成しているのです。こうした進歩によって、携帯電話や電子端末を利用して寄付が強力に推し進められています。デジタルツールは全く新しい価値観を生み出し、私たちが寄付金の影響を測定・評価し、またより良く認識できるようにしました。ウェブ・プラットフォームは、遠方で行われている貴重な取り組みを促進するために新しい手段をもたらしました。
我々はまた、最大規模の持続可能性のため、ビジネスプランニングの専門知識を援助するベンチャー慈善活動をなど、新しい概念の慈善活動にアプローチしています。新しい金融システムによって、社会変革を促進するため財団が普段補助金として支出する資産の5%でなく、全般的な寄付が可能になりました。
"Donor-advised funds(寄贈者助言資金)"は、慈善活動へ定期的に、手軽に寄付できるよう個人の投資ポートフォリオを設定できます。ソーシャルメディアに関連した新しいネットワーク技術は、慈善家とプロジェクトをサポートする人々、寄付に興味を持つ慈善家同士、また、ボランティアにお金と時間を費やす同士たちなどの間で、今まで以上にスムーズで有効な交流を生み出します。
慈善家の新世代は、新しい特性を持っています。彼らは自身のキャリアが頂点に達し、成功したビジネス界の人々です。独創的で、革新的で、要求レベルの高い彼らは、寄付をする方法にビジネス的な発想を取り入れ、差別化をはかっています。
今までにない彼らの効果的で戦略的な慈善活動へのコミットメントと、デジタルメカニズムに対する豊富な知識は、我々慈善活動のコミュニティによりスマートで、より透明性の高いシステムを作り出す一助となりました。
これを個人の宣伝と関係なく行ってきた多くの先駆者に、今、拍手を送る時です。世界が直面する主要な課題に立ち向かうこの人たちは、有識者で、熟練しており、思いやりが深く、また時間とお金に寛容です。革新的な社会貢献に捧げるモナコ公国王子賞は、今月末にとりわけ創造的で印象深い個人に授与されます。それは、私にとって名誉でもあります。そして、寄付の効果を増幅させ、素晴らしい活動にスポットライトが当てられるようにと私は願います。
私は2011年以降、毎年1月にモナコで行われる寄贈者の年次総会である、モナコ公国王子の慈善活動に対する円卓会議メンバーの助言や知識を得られることに、とても感謝しています。メンバーの多くは、自分たちの活動が目立たないことを望んでおり、私はその謙虚さに拍手を送ります。
私はまた、私の財団とトクヴィル財団がこのイベントでパートナーとなることをとても喜ばしく思っています。トクヴィル財団は、アレクシス・ド・トクヴィルのユニークな民主主義のビジョンや、社会の全ての人員の権利と責任について、フランス学士院の枠組みの中で促進します。
しかし何よりも、私は世界で日常的に自分の時間を「善を行う」ことに自発的になる、何百人もの人々の素晴らしい感動的な行動を讃えたいと思います。また、重要な課題を自分の携帯からクリックすることで支援している人々、自分たちのソーシャルメディアのページのメッセージで意識を広めている人々も含みます。
公平でより持続可能な世界を確立するために、私たちの共通の課題に対処するため共に働くことは、公平で従事した市民社会の基盤です。思いやりのある寄付を通して社会の課題の解決に取り組むことは、人類に投資しているということであり、それは最高のお金の使い方と言えるでしょう。
モナコ公国 アルベール二世