ナノスケールのチャネルや細孔を通る気体の透過は、至る所で見られ、通常は、気体分子が細孔壁でランダムな方向に散乱されると仮定するクヌーセン理論によって記述される。
今回A Geimたちは、オングストロームスケールのチャネルを通る気体輸送を測定し、気体分子の散乱がチャネル材料の性質に依存することを明らかにしている。
グラフェンや窒化ホウ素でできたチャネルの表面は原子レベルで滑らかであり、衝突分子を鏡のように反射するため、クヌーセン理論で予想されるより数桁速い摩擦のない気体流が生じる。
これに対して、壁面が二硫化モリブデンでできたチャネルを通る輸送は、クヌーセン理論によってうまく記述される。
この違いは、二硫化モリブデン表面では原子の凹凸が大きく、凹凸の高さが輸送される原子のサイズやド・ブロイ波長と同程度であるため、気体輸送に対してランダムな散乱と予期せぬ量子効果が生じることに起因している。
Nature558, 7710
原著論文:
doi: 10.1038/s41586-018-0203-2
doi: 10.1038/d41586-018-05403-7
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