財務省の周到なレトリックが満載の財政再建とバラマキプランとは

経済財政諮問会議で議論された中期財政計画の骨子と、2014年度予算の概算要求基準には、財務省が周到に用意した霞ヶ関的レトリックがふんだんに盛り込まれている。その内容とは…

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財政再建とバラマキ予算をいとも簡単に両立させてしまう、財務省のレトリックとは?

政府は8月2日、経済財政諮問会議を開催し、財政健全化の道筋となる中期財政計画の骨子と、2014年度予算の概算要求基準について議論した。

現在、日本の財政をめぐっては、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の改善と、予算拡大要求(景気対策や利益団体対策)との間でせめぎ合いとなっている。会議では、財政再建を進めながら、優先度の高い施策の重点化を図るという半ば矛盾した結論となっているが、そこには財務省が周到に用意した霞ヶ関的レトリックがふんだんに盛り込まれている。

政府は国と地方をあわせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を2015年度までにGDP比において2010年度の半分にするという目標を掲げている。このため、来年度予算では歳入、歳出の両面から最大限の努力を行うとしている。

だが一方で、景気対策や業界団体対策として、各方面から予算拡大の要求が相次いでいるのも事実だ。財務省のホンネは、消費税の増税と緊縮財政の両方だが、現実には最優先事項である消費税増税を実現する代わりに、来年度もある程度のバラマキ予算を容認する方向性と考えられる。これは景気の急激な失速によって10%への消費税増税がなくなってしまうことを防ぐとともに、アベノミクスの効果を持続させ、現政権に貸しを作るという効果もある。

財務省が示したプランには、財政再建とバラマキ予算という矛盾した内容を実現するためのレトリックが満載だ。概算要求とは別に、各省からは優先的な政策課題の実現を前提とした「要望」を提出させ、予算編成過程において検討するとしている。現時点では消費税の増税が最終決定していないことを逆手に取った戦術といえる。「要求」と「要望」は言葉が似ているので、うっかりしていると聞き逃してしまうが、両者はまったく異なるものだ。

閣議決定が必要となる概算要求については、現時点(消費税増税は最終決定していない)での税収と財政計画を前提とした数字をベースに実施する必要がある。だが要望はこれとは別枠なので、いくらでも積み増すことができる(実際には一定の上限を設定)。しかも「予算編成過程」においてこれを検討するとあるが、具体的にどのタイミングなのか現時点でははっきりしていない。財務原案内示後、政府案決定直前の期間も「編成課程」と定義するなら、ギリギリで滑り込ませることも可能となり、政治的裁量余地を大きく残したことになる。

財務省は最強官庁であり、日本の政治を支配しているとよくいわれる。だが財務省は、権力を振りかざし、強権的、独裁的に物事を進めているわけではない。今回のプランを例にあげれば、増税という自らの目標と各利益団体の要求、さらには世論を気にする官邸など、各方面が満足するような解決策を上手に提示することで、少しずつ恩を売り、自らの主導権を確保している。財務省支配は知らず知らずのうちに進んでいるのだ。

本来であれば、経済財政諮問会議やマスコミなどにはこうした部分にメスを入れる役割が期待されているはずである。だが今回の会議でもこの点について異論が出た形跡はない。増税によって財源を確保しつつ、当面の景気腰折れを防ぐために、一定程度の財政支出を許容するという方向性は、教科書的にはおそらく正解なのだろう。だが一連の決定が、オープンな議論のもとで決められたのかという観点で考えれば、それは首をかしげざるを得ない。

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