ダルビッシュ&田中将大、日本の両エースが綴る極上のストーリー

現地9日、レッドソックス戦に先発したレンジャーズのダルビッシュ有が、あと一人のところでノーヒットノーランを“またしても”逃す快投をみせた。ダルビッシュは昨シーズン、4月のアストロズ戦で9回2死まで完全試合だったが、そこからヒットを打たれて大記録達成を逃している。ブルワーズ戦に先発したヤンキースの田中将大は“またしても”無敗のまま今季5勝目を挙げた。田中はこれで2012年夏以来のシーズン連勝記録を「33」に更新した。
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現地9日、レッドソックス戦に先発したレンジャーズのダルビッシュ有が、あと一人のところでノーヒットノーランを“またしても”逃す快投をみせた。ダルビッシュは昨シーズン、4月のアストロズ戦で9回2死まで完全試合だったが、そこからヒットを打たれて大記録達成を逃している。

ブルワーズ戦に先発したヤンキースの田中将大は“またしても”無敗のまま今季5勝目を挙げた。田中はこれで2012年夏以来のシーズン連勝記録を「33」に更新した。米国でも田中の続く“0敗”の軌跡を暗示するかのように、この日の試合後は「5-0(5勝0敗)」「また勝った」「なおも完璧(負けなし)」という小見出しが多く踊った。(参照:米Newsday、USA Today、米ウォール・ストリート・ジャーナル

現地ではシーズン開幕前、鳴物入りでヤンキース入りした田中には“過大評価だ”との声もあった。そのたびに擁護派は、「なにせ24勝0敗だぞ!?」と昨シーズンのプロ野球での大記録を盾に反論した。一部の「メジャーでの成績ではない」との反発を受けながらも、圧巻の「24-0」という成績は、田中の修飾語として春先からしばしば繰り返し使用されている。

だが、開幕から1カ月以上が経った今、田中は「メジャーでの成績」も着実にあらわしている。ここまでの5勝、58奪三振はいずれもリーグ2位。先発投手の評価基準であるクオリティ・スタート(6回以上を投げて自責点3以内)は、7戦連続で100%の達成率となり、メジャートップだ。

今日のダルビッシュの快投を称えた田中。それに関してESPNのタイトルは“HIRO says Yu the best”(ヒーローはユーが最高だと語った)と小粋に綴っている。まさひろのHIROとHERO(英雄)のヒーローをかけ、ダルビッシュ有のYuとYou(あなた)をかけ、対等に扱っているのだ。

レンジャーズのエースで昨季サイ・ヤング賞投票2位だった、ダルビッシュの人気は言うまでもないが、ここまでチームのエース級の活躍をみせている田中のファンも、ますます増えている。ヤンキースの所属するア・リーグと違って、代打(DH)制のないナ・リーグ本拠地で戦うインターリーグ(交流戦)では、先発投手も9番目の打者として打席に立つ。今日、田中がそのメジャー初打席を迎えた時、お馴染みの「#TanakaTime」のハッシュタグは瞬く間に600以上もツイートされた。

今日もピンチはあったが7回途中2失点とゲームを作り、ヤンキースは5-3で勝利した。前回2登板では思うような変化球が投げられない事態にも陥ったが、立て直して負けなかった。そんな田中は“Mr.Adjustment”(修正男)とも呼ばれる。ジョー・ジラルディ監督も、「田中の凄いところは、どんな時も打開策を見出すところにある」と絶賛する。

試合後、「(ダルビッシュのような)圧倒的な投球は自分には無理。これからも泥臭く抑えていくだけ」と語った田中だが、その姿に大勢のファンが魅了されている。心身ともに逞しく向かっていき、紆余曲折の末に“負けない”のだ。田中の試合には、ドラマチックな“主人公”と“物語”という人々が惹かれる要素が奇跡のように詰まっている。

これ以上ないほど劇的だったダルビッシュは今日、最後の最後に昨季ワールドシリーズMVPのデイビッド・オルティスにヒットを打たれて、大記録達成はならなかった。比較されることの多い日本の若き両エースが綴る極上のストーリーに、これからも目が離せなくなりそうだ。

スポカルラボ

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(2014年5月11日「MLBコラム」より転載)