みずほ銀行・佐藤康博頭取が電撃辞任 グループCEOを辞めない理由とは

みずほフィナンシャルグループは23日、みずほ銀行の佐藤康博頭取が辞任し、後任に林信秀副頭取が昇格するトップ人事を発表した。佐藤氏は、持ち株会社社長としてグループCEOの役割は続けるとしたが、佐藤氏がこだわってきた「ワントップ体制」からの路線変更は、みずほの経営を迷走させるリスクもはらんでいる。
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時事通信社

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みずほフィナンシャルグループは23日、みずほ銀行の佐藤康博頭取が辞任し、後任に林信秀副頭取が昇格するトップ人事を発表した。

佐藤氏は、持ち株会社社長としてグループCEOの役割は続けるとしたが、佐藤氏がこだわってきた「ワントップ体制」からの路線変更は、みずほの経営を迷走させるリスクもはらんでいる。

<電撃辞任に行内も衝撃>

「頭取辞任の噂が流れたのは3時過ぎ。3時半に銀行のホームページで確認した」――。本店のある部長はこう打ち明けた。

昨年からの複数の会見で、佐藤氏は持ち株会社社長と傘下銀行頭取を兼務する「ワントップ体制」の堅持を度々表明。辞任の憶測を否定し続けてきただけに、今回の人事は金融界はもちろん行内でも驚きを持って受け止められている。記者会見で佐藤氏は「誰にも相談せずに1人で決めた」と述べた。

金融庁からの2度の行政処分で、みずほは「組織の縦割り意識」や「取締役会の機能不全」などの問題点を厳しく指摘された。佐藤氏は会見で「(みずほ統合以来)13年の苦難のなかで、『えもいわれぬもの』を切り離さなければならない。委員会設置会社は、1つの解決策だが、グループCEOが中心に取り組まなければならない」とし、みずほの抱える経営問題の解決に尽力する姿勢を強調した。外部の視線を入れることで経営の透明性を高めるとされる委員会設置会社への移行や、持ち株会社の機能強化、企業文化の改革に尽力するために、持ち株会社の社長に専念する必要があるとの考えを示した。

しかし、強力なリーダーシップで旧3行の確執を押さえ込んできたとの評価もある佐藤氏の頭取辞任は、組織の空洞化や流動化を招きかねず、佐藤氏が払拭させようとしてきた「古い体質」に逆戻りさせるリスクもある。

<委員会設置会社、劇薬との指摘も>

「みずほは、どこに行くのか。重大な決断をしたと思う」。ライバル銀行のある役員は、みずほの委員会設置会社への移行をこう評する。

特に、役員人事を決める「指名委員会」のメンバーをすべて社外取締役で構成する方針は「劇薬」とさえ指摘する。指名委員会は、役員の選任はもちろん解任権さえ手にする。不祥事や業績不振の際には、経営陣を『辞めさせないことの責任』も問われかない。「人事の透明性が増すことは間違いないが、経営方針がぶれるリスクもある」と言う。

新頭取に就任する林氏は、主に国際業務部門で実績を積んできた。国内業務は大企業取引が中心で、中堅中小企業や個人向けなどのリテール業務には精通していないとの指摘もあり、国内業務部門を担う行員からは不安の声も漏れる。

佐藤社長と林頭取の「二人三脚」(林氏)の体制で、経営改革はどのように進むのか。みずほは大きな試練に直面することになる。

[東京 23日 ロイター]

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