三島由紀夫のSF小説『美しい星』、55年を経て映画化 リリー・フランキー&亀梨和也出演で現代設定に大胆脚色
作家の三島由紀夫氏が1962年に発表した、ミシマ文学のなかでは異色のSF小説『美しい星』が実写映画化(2017年5月公開)されることが2月29日、わかった。主演のリリー・フランキーのほか、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子が出演。『桐島、部活やめるってよ』(2012年)の吉田大八監督がメガホンをとり、ミシマ小説を現代設定に大胆脚色。吉田監督は「原作の精神を尊重しつつ、人類生き残りに有り金まるごと賭けて悔いなし、そんな宇宙レベルのエンタテインメントを目指します」と意気込んでいる。
原作は、核戦争勃発の恐怖に脅える冷戦下の国際情勢を背景に、「自分たちは地球人ではない。宇宙人だ」と突然目覚めたとある家族が、人類を救う使命に燃えて奮闘するさまを風刺たっぷりに描いた寓話小説。世界に終末の匂いが色濃く漂うたびに版を重ね、2011年の東日本大震災以降も部数を伸ばし、現在54刷45万部のロングセラーになっている。
そんな原作の映画化にあたって吉田監督は、50年以上前に書かれた物語の舞台を現代の改めて大胆に脚色。ミシマが2010年代に生きていたらどんなふうにこの星を描くだろうという仮定から脚本はスタートした。
原作で「ごく短期間教鞭をとった以外は大学卒業以来働いたことのない資産家の高等遊民」だった主人公・重一郎は、映画ではヘラヘラといい加減に生きている「当たらない」ので有名なテレビのお天気キャスター(リリー・フランキー)という設定になり、情熱と使命感に燃える火星人に覚醒する。「モラトリアムを生きるシニカルな学生」だった長男・一雄は、暗い野心をたぎらせるフリーター(亀梨和也)になり、知性を司る水星人に覚醒する。
「純潔に固執する潔癖症の女学生」だった長女・暁子は、自分の美しさが最大のコンプレックスという女子大生(橋本愛)になり、美を象徴する金星人に覚醒。「大人しい献身的な専業主婦で木星人」だった母・伊余子は、退屈と倦怠をもてあまして怪しい水ビジネスにはまり込んでいくイマドキの主婦(中嶋朋子)になるが、覚醒はせず地球人のまま。そんな世界救済を大真面目に企図する勘違い家族の、地球を舞台にした愛すべき大奮闘が描かれる。
主演のリリー・フランキーは、今回の起用に「学生の頃から三島由紀夫のファンでしたが、脚本を読んでみたら原作とは異なるおもしろさが加わっていて、ワクワクしました。吉田監督がどのように映画を撮られるのか、その現場を見ることができるのが最大の楽しみです」。一方、亀梨は「30歳になったこのタイミングで、このテーマのお仕事というのは、自分はとてもついていると感じます。参加させてもらえることがとても楽しみです」。この作品と吉田監督との出会いについても「無限の可能性を感じていた10代から年を重ねていくなかで、自分の限界を広げてくれるものは自分のなかだけではなく、仕事など巡りあわせによってどこにでもあるものだと感じています。今回は一雄という役に巡り合い、役を通して自分の可能性を広げていくことができたらと思います」と熱い想いを口にする。
また、橋本は「吉田監督とは以前ご一緒させていただきましたが、今回は初めましての気持ちで臨みたいと思います」。中嶋は「三島作品の『美しい星』!!! ですよ。まさかこの作品と関わりを持てる人生になろうとは! なんでしょう、大興奮です」とコメントしている。
同作の撮影は、3月中旬から4中旬にかけて都内近郊中心に行われ、2017年5月公開予定。
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