9月1日に投開票される民進党の代表戦では、国会議員などに支持を広げた前原誠司元外相(55)が、対立候補の枝野幸男前幹事長(53)に対して優勢と報じられている。
前原氏はこれまでどんな主張をしてきたのか?振り返ってみたい。
景気対策:現物給付中心、ボトムアップ型の循環を
アベノミクスは「3本の矢」と言われたが、財政出動、金融緩和というカンフル剤を打って何とか景気を刺激するという策だった。特に金融緩和が効いた。金利を下げて円安を誘導し、企業の株価を上げることだった。
しかし、問題だったのは労働分配率が低下して、賃金は上がらないのに企業の内部留保だけが増えたこと。賃金が上がらないのに、円安で輸入物価が上がり、実質賃金がマイナスになり消費が落ち込んだ。GDPの6割は消費だ。アベノミクスは企業を儲けさせ、個人を細らせ、結果的に消費を落ち込ませて景気が低迷した自業自得の政策だった。
私はすべての世代の不安を解消する。教育無償化や年金・介護、職業訓練など様々な世代に対する現物給付を中心に施策を行う。ボトムアップ型の一種の公共投資。また、雇用を増やす。ボトムアップ型の循環を作るというのが基本方針。
また、インバウンドで外国からのお客さんを増やす。また、地域によっては農業・漁業が基本。北海道は観光と同時に農業・漁業大国。地場に根差して地域の活力を生み出す。また、クリーンエネルギーや、健康産業で活性化したい。
(8月21日、立候補の共同記者会見で)
消費税:上げたい、ただし対応は党としてまとめる
政府は、2019年に消費税を10%に上げる方針を掲げているが、これまで2度にわたって先送りがされてきた。最終判断は2018年中に行う見通しとなっているが、安倍首相は8月5日の読売テレビ番組出演時点で「予定通り行う」との考えを示している。
一個人の議員としては、よほどの経済の腰折れがなければ、2019年10月に消費税増税をするという考えだ。特に、民主党政権時代、(消費増税が盛り込まれた)「税と社会保障の一体改革」を、党政調会長として進めた者として、それを進めていきたい。
こうした個人の思いは変わらないが、代表になった際にはどんなサービスを充実させ、どのように国民が負担するのか議論する一環の中で、党として新たな執行部の中でとりまとめを行いたい。
(8月7日、出馬表明の記者会見で)
2段階にわけて消費税を上げ、その代わり、教育、子育て、医療、年金、介護、福祉を担保していく、ということにはしっかりと責任を持ちたい。
高齢者の不安を解消するため安定した年金、介護、教育無償化の財源が必要。財源論からは逃げない。財源論しっかりと議論していきたい。
(税の)使われ方の中身については反省が必要。5%増税したうちの4%が財政再建に使われたというのはあまりに受益感が国民になさすぎた。
(8月21日、立候補の共同記者会見で)
原発:2030年代ゼロ目標を堅持
民主党政権時代の2012年、当時の野田首相は「2030年代に原発をゼロにする」との戦略を策定、原発の新増設をしないことや、運転期間を原則40年間とすることを決めた。しかし、2014年に安倍政権下で閣議決定された「エネルギー基本計画」で、この方針は見直されている。
旧民主党にいた者として、東日本大震災・福島第一原発事故を経験した者として、私は原発のない社会を作って行くことが、私の責務だと思っている。(民主党の)野田佳彦政権の時にまとめた2030年代原発ゼロを目指して、あらゆる政策資源を投入するという考え方をベースに、原発のない社会を現実的に作っていきたい。
(8月7日、出馬表明の記者会見で)
安倍改憲案:反対、ただし自衛隊は憲法に加える
憲法9条1項、2項は残して、憲法が公布された後にできた自衛隊を憲法に書き込むべきだという加憲の考え方に変わりはない。我々は安保法制に反対した。その理由は憲法違反という根本的なもの。安倍総理の言う、憲法違反の安保法制を前提として自衛隊を描くということは憲法違反を正当化させることになる。安保法制の前の憲法解釈で私が申し上げていることは理解してほしい。
野党第一党として憲法の議論は堂々とすべきだ。しかし、憲法は9条だけではない。国民的議論には年単位が必要。今年中に草案をまとめて来年発議するという安倍首相の拙速なタイムスケジュールには与しない。
憲法改正が最重要の課題ではない。今の生活に困っている、将来に希望が持てない人に手を差し伸べる生活保障が国政の最重要課題。
(8月7日、出馬表明の記者会見で)
野党共闘:見直す
「自民一強」体制に風穴を開ける目的で、民進党はこれまで、共産党など野党4党で選挙協力を進め、候補者を一本化して与党と闘う戦略をとってきた。2016年の参院選では接戦となった全国32カ所の1人区で野党統一候補が11勝を挙げるなど、一定の効果があったとみられている。
しかし、前原氏はこうした方針について、次期衆院選では見直すことを表明した。
政治家、政党にとって「理念」「政策」は命であり、特に、衆議院選挙は政権選択の選挙。政権選択の選挙で理念、政策の合わないところと協力するということはおかしいと思う。4党合意の是非についても見直しをさせていただきたい。
(8月21日、立候補の共同記者会見で)