水俣病伝え30年、歴史考証館改修へ ネットで資金募る

チッソの工場廃水を与えたネコが発病した「実験小屋」などが並ぶ。
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石牟礼道子さんの「苦海浄土」の直筆原稿=2018年6月5日、熊本県水俣市の水俣病歴史考証館、奥正光撮影
朝日新聞社

水俣病伝え30年、歴史考証館改修へ ネットで資金募る

 水俣病を世に知らせた、石牟礼道子さんの「苦海浄土」の直筆原稿を展示している水俣病歴史考証館(熊本県水俣市)が、改修の準備を進めている。開館30年の節目に老朽化した施設をリニューアルし、貴重な資料の展示・保存環境を向上させる。一般財団法人水俣病センター相思社が6月からインターネットで寄付を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。

 考証館の建物は鉄骨平屋で広さ約230平方メートル。患者や支援者が働いていたキノコ栽培工場を改修し、国が「水俣病の原因はチッソの排水に含まれたメチル水銀」と断定した公害認定から20年後の1988年に開館した。デザインにはJR九州の寝台列車「ななつ星」を手がけた水戸岡鋭治さんも関わっている。

 水俣病関係の所蔵資料は約22万点で国内最多とされる。2月に亡くなった石牟礼道子さんから寄贈された「苦海浄土」の直筆原稿や、石牟礼さんが考案し患者運動の場に翻った「怨」の黒旗、かつての漁民の暮らしを伝える木造船や漁具、チッソの工場廃水を与えたネコが発病した「実験小屋」などが並ぶ。

 老朽化で天井や壁にさびが目立つ。73年に患者側とチッソが結んだ補償協定書は今も患者補償の根拠となっているが、実物だとカビや劣化の恐れがあるためコピーを展示している。湿度調節できる展示ケースは、石牟礼さんの原稿を展示する1個しかないという。

 改修では内壁を塗り直し、古くなった展示パネルを作り直す。新たに展示ケースも6個購入する。石牟礼さんゆかりの品や第1次訴訟の勝訴を伝える新聞記事など、実物展示を増やしたいという。

 寄付の返礼品には、水戸岡さんのデザイン画をプリントしたTシャツや缶バッジなどを用意した。

 相思社職員の葛西伸夫さん(48)は「(水俣病事件史の)リアリティーを伝える資料は『モノの語り部』。展示によって生かしながら保存していきたい」と協力を呼びかけている。

 CFの当初目標額は245万円だったが、7月12日に達成。古い資料の劣化防止などの費用を上乗せし、新たな目標の350万円をめざしている。7月末までCFのサイト(https://readyfor.jp/projects/koshokan)から寄付できる。直接振り込みも受け付けており、問い合わせは相思社(0966・63・5800)へ。(奥正光)

(朝日新聞デジタル 2018年07月22日 10時08分)

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